会社設立の費用はいくらか|登録免許税と定款の実費を積み上げる

会社設立の費用はいくらか|登録免許税と定款の実費を積み上げる

6万円と25万円が、どちらも正しい答えになる

会社をつくるのにいくらかかるかを調べると、6万円という数字と25万円という数字が同じくらいの頻度で出てくる。4倍の開きがあるのに、どちらも嘘ではない。

差が生まれる理由は三つある。会社の種類をどちらにするか、定款を紙でつくるか電子でつくるか、そして専門家に頼むかどうか。この三つの組み合わせで、総額は下から上まで動く。

逆に言えば、法律で決まっていて動かせない部分と、選び方で変わる部分を分けて積み上げれば、自分の場合の金額は先に計算できる。見積もりを取る前に、相場の内訳を自分で持っておくほうが交渉もしやすい。

以下では国税庁、法務省、日本公証人連合会の資料から、設立のときに出ていく実費を項目ごとに積み上げ、そのあとで毎年かかるものに移る。

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動かせない実費を、項目ごとに積む

最初に、誰がやっても同じ額になるものを並べる。ここが総額の土台になる。

柱は登録免許税である。国税庁の登録免許税の税額表によれば、株式会社の設立は資本金の額の1,000分の7で、計算額が15万円に満たないときは申請1件につき15万円。合同会社も税率は同じで、下限は6万円になる。

次が定款の認証にかかる手数料で、これは株式会社だけに生じる。日本公証人連合会の定款認証に要する費用の案内では、資本金の額が100万円未満なら3万円、100万円以上300万円未満なら4万円、それ以外は5万円。定款の謄本は1枚250円である。

会社の定款手数料の改定によると、令和6年12月1日からは軽減が加わった。発起人が3人以内の自然人だけで全株式を引き受け、取締役会を置かない場合に限り、100万円未満の区分が1万5,000円になる。小さく始める会社の多くがこの条件に当てはまる。

登記が終わったあとに取る証明書も、実費として見込んでおきたい。法務省の登記手数料の一覧では、令和7年4月1日の改定後、登記事項証明書が書面請求で600円、オンライン請求の送付で520円、オンライン請求の窓口交付で490円。印鑑証明書は順に500円、450円、420円である。銀行口座の開設や許認可の申請で複数通必要になるので、通数分を足す。

項目 株式会社 合同会社
登録免許税(資本金100万円の場合) 15万円 6万円
定款の認証手数料 3万円(要件を満たせば1万5,000円) かからない
定款の印紙税(紙の場合) 4万円 4万円
定款の印紙税(電子の場合) かからない かからない
登記事項証明書(オンライン請求・送付) 1通520円 1通520円
印鑑証明書(オンライン請求・送付) 1通450円 1通450円
電子定款で進めた場合の小計 約18万1,000円 約6万1,000円

表の小計は、資本金100万円・証明書を各1通という前提で足したものである。軽減の条件に当てはまる株式会社なら16万6,000円ほどまで下がる。

資本金の額が、どこから税額を動かすか

登録免許税は定額ではなく率で決まるので、資本金をいくらにするかで額が変わる。ただし変わり始める位置は、思っているより上にある。

税率は1,000分の7、つまり0.7%である。資本金100万円なら計算額は7,000円だが、下限があるので株式会社は15万円、合同会社は6万円を納める。資本金500万円でも計算額は3万5,000円で、やはり下限のままになる。

計算額が下限を上回るのは、株式会社なら資本金がおよそ2,143万円を超えたあたり、合同会社ならおよそ857万円を超えたあたりからである。そこまでは資本金をいくらに置いても登録免許税は動かない。

一方で、資本金は別の税を動かす。国税庁の基準期間がない法人の納税義務の免除の特例では、事業年度の開始の日における資本金等の額が1,000万円以上の法人は、基準期間がない事業年度でも消費税の納税義務を免除されない。1,000万円に届かなければ、設立当初は免税事業者になり得る。

総務省の法人住民税の説明でも区分が分かれる。法人住民税の均等割は、資本金等の額が1,000万円以下で従業者数50人以下の場合、標準税率が道府県民税2万円と市町村民税5万円の合計で年7万円。1,000万円を超えると区分が上がる。

つまり設立費用を抑える目的で資本金を下げても登録免許税は変わらず、資本金を1,000万円で切るかどうかは毎年の税負担の話になる。資金をどう入れるかという問題でもあり、出資以外の経路を含めた整理は融資・ファンド・株式で登録が違うことを整理した記事にまとめている。

紙でやるか電子でやるかで4万円変わる

内訳のなかで、選び方だけで消せる金額がひとつある。定款の印紙税である。国税庁の印紙税額の一覧表では、定款は第6号文書として4万円だが、課税されるのは株式会社、合名会社、合資会社、合同会社または相互会社の設立のときに作成される定款の原本に限られる。

印紙税は文書に課される税で、電磁的記録は印紙税法上の文書に当たらない。そのため定款を電子ファイルで作成して電子署名を付ければ、この4万円は生じない。株式会社でも合同会社でも同じである。

電子で進める利点は金額だけではない。法務省の完全オンライン申請による法人設立登記の24時間以内処理では、役員等が5人以内、添付書面情報がすべて電磁的記録で作成された完全オンライン申請、登録免許税が収入印紙ではなく電子納付、補正がないことという条件を満たす申請について、受付から原則として24時間以内に登記を完了するとされている。登記申請件数の多い時期は対象外になる。

ただし電子定款には準備が要る。電子証明書を用意し、作成したPDFに電子署名を付ける環境を整える必要があり、そこで対応ソフトの費用が発生することもある。年に一度の作業のために環境をそろえるのが重荷なら、代理で電子定款を作る専門家に頼んだほうが安く済む場合もある。

専門家への報酬は法定の額ではないので、相場として押さえるしかない。依頼範囲も事務所ごとに違う。見積もりを比べるときは、商業・法人登記の申請書様式に出ている添付書類のうちどれを作ってもらえるのかまで確かめたい。

設立のあと、毎年出ていくもの

初期費用を抑えても、維持費は毎年かかる。事業が黒字になる前から出ていくものがあるので、資金計画では初年度と翌年度の両方を見ておきたい。

先に挙げた法人住民税の均等割は、赤字でも納める。資本金等1,000万円以下で従業者50人以下の標準税率なら年7万円で、これは会社の種類にかかわらず発生する。売上がゼロでも消えない固定費だと考えるのが正しい。

会計と申告の負担も続く。法人の決算は個人の確定申告より様式が多く、税理士に頼むなら顧問料と決算料が毎年乗る。自分でやるなら時間が費用になる。どちらを選ぶかは、月々の取引の本数で判断するのが現実的である。

株式会社には、数年おきの登記も残る。法務省の役員の変更の登記についての案内では、取締役の任期は選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までで、公開会社でない株式会社は定款で10年以内まで伸ばせる。同じ人が続投する場合でも重任の登記が必要で、その登録免許税は資本金1億円以下の会社で1件1万円である。

この登記を忘れると高くつく。登記の事由が発生した時から2週間以内に申請せず放置した場合は100万円以下の過料に処される可能性があり、最後に登記をした時から12年を経過した株式会社は、休眠会社の整理作業の対象として職権で解散の登記がされる。

創業期の資金については、自治体や国の支援が使える場面もある。要件と使いどころの例は補助金と任期後の独立を整理した記事で触れた。資金の出どころを広く見ておくという話はFLASPOでも扱っている。

よくある質問

資本金1円でも会社はつくれますか

つくれる。ただし登録免許税には下限があるので、資本金を1円にしても株式会社なら15万円、合同会社なら6万円を納めることになる。資本金を下げても設立費用は下がらないと考えてよい。むしろ当面の運転資金を資本金に入れておかないと、設立直後に会社の口座が空のまま動き出すことになる。

合同会社だと設立費用はどれだけ安くなりますか

資本金100万円で電子定款という前提なら、登録免許税の差が9万円、定款認証の手数料の差が3万円で、合わせて12万円ほど軽くなる。認証の軽減に当てはまる株式会社と比べるなら、差は10万5,000円になる。ただし毎年の均等割や消費税の扱いは変わらないので、安さが続くわけではない。

専門家に頼むといくら上乗せになりますか

報酬は法律で決まっていないため、官公庁の資料から相場を示すことはできない。確かめられるのは、実費の部分が上の表のとおり固定されているという点である。見積もりを受け取ったら総額から実費を引き、残りが報酬だと把握してから比べるとよい。電子定款の代理作成だけを頼む形なら、印紙税の4万円が消える分で報酬が相殺されることもある。

設立費用は経費にできますか

会社の設立のために支出した費用は創立費として扱われ、設立後に開業までにかかった費用は開業費になる。どちらも繰延資産として計上し、償却して費用に落とす扱いが認められている。領収書を個人の支払いとして散らさず、設立前のものも分けて保管しておきたい。

資本金はいくらにするのが無難ですか

税の線で言えば1,000万円未満にしておくと、設立当初の消費税の納税義務と均等割の区分の両方で有利になる。そのうえで、当面の仕入れと人件費を何か月分まかなえるかで額を決めるのが実務的である。許認可の要件に資本金の下限が付いている業種もあるので、始める事業の条件は先に確認したい。小さく始めるときの進め方は学生起業の始め方をまとめた記事も参考になる。


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