推し活と心理|生活満足度を上回ったのは支えられている感覚だけ

推し活と心理|生活満足度を上回ったのは支えられている感覚だけ

応援して何が満たされているのかを、点数で聞く

公演の帰り道に、疲れているのに機嫌がよいという状態になる。何が満たされたのかを言葉にしようとすると、楽しかったという一語で止まる。その先を分けて見るには、聞き方を変えるしかない。満足しているかを0点から10点で答えてもらう方式がそれに当たる。

内閣府は2019年から満足度・生活の質に関する調査を続けている。2025年3月に行われた第7回は1万633人へのインターネット調査で、報告書は同年9月に公表された。生活に満足しているかを自己申告してもらう「生活満足度」は5.79で、前年から0.10ポイント下がっている。

年齢階層別に見ると、65歳以上が6.51で最も高く、39歳以下が5.78、40〜64歳が5.50で最も低い。働いて子を育てる時期に数値が沈み、その前後で上がるという形は、調査を始めてからほぼ変わっていない。推し活をしている人だけを切り出した公的な統計はないため、以下はこの全体像の中から関係する部分を読む作業になる。

応援する行為の側に何が残るかは推し活のメリットに三つに分けて書いた。ここでは測り方の側から入る。

点数で聞く方式の弱みも先に書いておく。同じ5点が人によって別の状態を指すため、個人の間で比べる使い方には向かない。使えるのは、同じ質問を続けて経年で追うことと、項目どうしの高低を見ることである。以下はこの二つの範囲で読む。

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五つの指標のうち、一つだけが高く出た

第7回の調査では、人生の充実感と、周囲との関係の感じ方を尋ねる質問が初めて設けられた。どれも0点から10点の自己申告で、生活満足度と同じ尺度に乗っている。並べてみると、高く出る項目と低く出る項目がはっきり分かれる。

質問(0〜10点) 男性 女性 生活満足度との関係
生活に満足している 5.68 5.91 基準
自分は充実した人生を送れていると思う 5.41 5.68 下回る
周囲の人々に認められていると感じる 5.08 5.26 下回る
周囲の人々や社会の役に立っていると思う 5.03 4.99 下回る
人と違うことを言っても受け止めてもらえる 5.01 4.99 下回る
自分の人生が様々な人々に支えられていると感じる 5.88 6.27 上回る

上回ったのは最後の一つだけである。支えられていると感じる度合いは生活満足度より高く、認められている、役に立っている、違っていても受け止められる、という三つはいずれも低い。自分から外へ向かう評価は低く、外から自分へ向かってくるものの実感は高いという非対称が出ている。

男女の差の出方も項目ごとに違う。支えられている感覚は女性が6.27で男性より0.39ポイント高いが、役に立っていると違っていても受け止められるの二つは、男性のほうがわずかに高い。評価されたい方向と支えられたい方向で、効いている相手が違うのだと読める。

認められるより先に、支えられる経験が積まれる

この非対称は、応援という行為の構造とよく合う。推し活で得られるものは、相手から名前を覚えてもらうことではない。同じ相手を好きな人が確かにいると分かること、席に座ればその時間が成立すること、話が通じる相手に会えること。外から自分へ向かってくる側ばかりである。

調査は、社会とのつながりの満足度に大きく影響する項目も尋ねている。どの世代でも上位に来たのは「困ったときに頼りになる友人・知人がいるか」と「一緒に楽しめる仲間がいるか」だった。応援を介した関係は、このうち後者から入って前者に届くことがある。順番が逆になることは少ない。

その頼りになる相手の数は、思ったより細い。同居の家族と親族を除いて数えると、全体で0人が21%、1人が14%、2人が24%である。男性の40〜64歳では0人が30%に達する。2人いれば平均に届くという水準で、増やすのは簡単ではない。

孤独をどう測るかによって数字が動くことは人間関係と心理学にまとめてある。尺度の違いで結果が変わる領域なので、一つの調査で断定しないほうがよい。

通う場所がある人と、ない人の差

第7回の調査で新しく尋ねられた項目に、サードプレイスの有無がある。家庭でも職場・学校でもない、自由に交流してくつろげる場所のことで、選択肢には喫茶店や図書館、公園と並んで「ライブ会場・観戦場」や「部活・サークル」が挙げられている。推し活で通う先は、ここに該当する。

持っていると答えた人は半数近くだった。差が出るのは、生活満足度ではなく「生活の楽しさ・面白さ」の満足度である。39歳以下では、ある人が男性6.14、ない人が5.14。女性ではある人が6.21、ない人が5.35。40〜64歳の男性ではある人5.73に対しない人4.86で、どの層でも1点前後の開きがある。

ここから言えるのは、場所の有無が楽しさの実感と並んで動いているということだけで、場所を作れば満足度が上がるという因果まで示されたわけではない。ただ、通う先が一つもない状態から一つ作るときに、応援という理由が使えるのは確かである。理由がないと人は出かけない。

交流サイトの使用頻度については、使っている人のほうがつながりの満足度は高い一方、頻度と満足度の間に明確な関係はなかったと報告されている。画面の中で済ませる形と、出かける形は、同じようには効かないらしい。メンタルとSNSに時間の側から見た数字がある。

効き方が反転する三つの場面

同じ行為が負担に変わる場面もある。推し活の相談として挙がりやすいのは三つで、どれも最初の効き目とつながっている。支えられている感覚が強いほど、失ったときの穴も大きくなるという関係にある。

一つ目は、応援の濃さが人の序列になるときだ。払った金額や通った回数で順位が付き始めると、仲間がいるという感覚は比べられる相手がいるという感覚に変わる。調査で低く出ていた「認められていると感じる」の側に、評価の軸が移ってしまう。

二つ目は、支出が測れなくなるときである。日程に合わせて山ができる支出なので、月をまたぐと総額が分からなくなる。三つ目は、応援していた相手が活動をやめるときだ。通う場所と話す相手が同時に消えるため、失うものが一つではなくなる。

対処は地味なところにしかない。通う先を二つ以上持っておくこと、金額を月ごとに締めること、相手を比べる場から距離を取ること。応援する対象が人ではなく町や催しという形もある。FLASPOが集めている活動事例は、その作り方を見るのに向いている。

よくある質問

推し活をしている人の幸福度は高いのか。公的な調査でそれを測ったものはない。言えるのは、通う場所を持っている人の「生活の楽しさ・面白さ」の満足度が1点前後高いという関係が、全世代で出ているということである。

推しがいないことは問題か。問題ではない。生活満足度に効く経路はほかにもあり、調査で最も高く出たのは支えられていると感じる度合いだった。これは応援以外の関係でも積み上がる。

複数の相手を応援したほうが安定するか。相手の数ではなく、通う先の数で見るほうがよい。一つしかない状態で活動の終了に当たると、場所と相手を同時に失う。候補を二つ持っておくのは保険になる。

応援の規模を人と比べてしまうときはどうするか。比べる尺度を金額から回数に変えると落ち着きやすい。調査で低く出ていたのは認められている感覚で、高く出ていたのは支えられている感覚だった。後者は人数も金額も要らない。

年齢が上がると効かなくなるか。そうは出ていない。65歳以上で場所がある人の「生活の楽しさ・面白さ」の満足度は男性6.52、女性6.74で、どの世代より高い。生活満足度そのものも65歳以上が6.51で最も高かった。

この調査はどこで確かめられるか。内閣府の政策統括官が公表している報告書の概要版に、ここで挙げた数値はすべて載っている。第7回までの経年の値も同じ資料で追える。

応援する相手との距離が近いほうが効くのか。調査にその項目はない。関連して読めるのは、頼りになる相手の数が0人の人が全体で21%いるという値で、距離の近さより、関係の本数が少ないことのほうが効いていると見るほうが筋が通る。


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