サークル代表の役割|辞任できない業務執行者という立場を条文で読む

サークル代表の役割|辞任できない業務執行者という立場を条文で読む

雑用係と呼ばれているが、条文には別の名前が載っている

代表を引き受けた学生に仕事の内容を聞くと、出てくるのは会場の予約、名簿の更新、会計の催促、下級生との連絡といった並びである。雑用の集合体のように語られるし、実際に時間を食うのはその通りなのだが、法律の側はこの立場に別の名前を与えている。

日本学生支援機構の令和6年度学生生活調査では、大学昼間部で部活動やサークル活動に週11時間以上を使う学生が合わせて11.0%いた。週に二桁の時間を預けている集団があり、その金と安全を一人が束ねているという構図になる。名前と権限が曖昧なまま運用されているのは、そこを見ないまま代が替わっていくからである。

以下では、代表が同時に立っている四つの立場を条文から並べる。学生団体を法人の形で組んだ場合の代表権については学生団体の代表の役割|代表権と業務執行の線を法律から引き直すで扱ったので、ここでは法人格を持たないサークルの代表に絞る。

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任されるのは、決めることと動かすことの両方である

法人格のないサークルには、代表という役職を定めた法律がない。代わりに当てはまるのが組合の規定である。民法第670条第1項は、組合の業務は、組合員の過半数をもって決定し、各組合員がこれを執行すると定める。これが初期設定で、代表を置かなければ何を決めるにも頭数が要る。

同条第2項は、組合の業務の決定及び執行は、組合契約の定めるところにより、一人又は数人の組合員又は第三者に委任することができるとする。第3項は、その委任を受けた者を業務執行者と呼び、業務執行者は組合の業務を決定し、これを執行すると置いた。規約に代表の権限を書くという作業は、条文の上ではこの委任をどこまで広げるかという作業にあたる。

決定と執行が並べて書かれているところが要点である。会場を押さえるという執行だけを任されたのではなく、どの会場にするかを決める権限まで渡されている。だから代表が独断で決めたという非難は、規約に委任が書かれているかぎり筋が通らない。書かれていなければ、逆に代表が決めたことは有効に成立していない。

第5項には抜け道が置かれている。組合の常務は、前各項の規定にかかわらず、各組合員又は各業務執行者が単独で行うことができる。ただし、その完了前に他の組合員又は業務執行者が異議を述べたときは、この限りでないという条文で、日常の細かい処理は一人で進めてよいが、誰かが声を上げた時点で止まるという構えになっている。

引き受けたあとは、好きなときに降りられない

代表の相談で最も多いのが、辞めたいが辞められないという話である。感情の問題として扱われがちだが、条文の裏づけがある。

民法第672条第1項は、組合契約の定めるところにより一人又は数人の組合員に業務の決定及び執行を委任したときは、その組合員は、正当な事由がなければ、辞任することができないと定める。第2項は、その組合員は、正当な事由がある場合に限り、他の組合員の一致によって解任することができるとした。辞めるにも降ろすにも正当な事由が要り、解任のほうには全員一致まで要る。

比べてみると、普通の構成員の側はずっと軽い。第678条第1項は、存続期間を定めなかったときは各組合員はいつでも脱退することができるとしている。つまり規約で代表に権限を委ねた瞬間、その一人だけが抜けにくい立場に移る。権限と拘束が同じ条文の束から出てくるという構造になっている。

実務に落とすなら、任期を規約に書いておくことが効く。存続期間や任期の定めがあれば、満了という形で正当な事由を待たずに外れられる。学年の区切りで交代するのが慣例になっている団体は多いが、慣例と条文は別物なので、文字にしておかないと春に揉める。

契約の名義は、十八歳の個人に乗る

会場の使用契約、機材のレンタル、業者への発注。これらの書類に署名するのはたいてい代表である。相手方から見れば法人格のない団体は契約の当事者になりにくいので、個人名が前に出てくる。

ここで民法第4条が効いてくる。年齢十八歳をもって、成年とするという一文で、大学一年の春から多くの学生は成年である。第5条第1項の、未成年者が法律行為をするにはその法定代理人の同意を得なければならないという規定と、同条第2項の取消しは、もう使えない。保護者の同意なく契約が成立し、成立した以上は取り消せない。

取り消せない契約の代金はどこへ行くか。第675条第2項は、組合の債権者は、その選択に従い、各組合員に対して損失分担の割合又は等しい割合でその権利を行使することができるとする。代表が署名した未払いは、相手の選択次第で構成員全員に頭割りで請求され得る。代表一人に閉じないという意味では救いだが、名簿に載っている全員が巻き込まれるという意味では重い。

だから発注の前に過半数の同意を取るという手順は、形式ではなく自衛になる。第670条第1項の決定要件を踏んでおけば、支払の負担を全員で引き受ける根拠がはっきりする。委任の範囲を超えて代表が単独で発注していた場合に、その根拠が消える。

届出と精算は、代表の署名でしか動かない

残る二つの立場は、年度の始まりと終わりに現れる。春は届出、終わりは精算である。

学生教育研究災害傷害保険普通保険約款の第2条第1項は、保険金を支払う範囲のひとつとして、学校施設外で大学に届け出た課外活動を行っている間を挙げている。学外の合宿や公演を補償の内側に置けるかどうかは、届出が出ているかどうかで決まる。その書類に名前を書くのは代表であり、出し忘れは補償の穴として構成員全員に跳ね返る。届出先の窓口が必ず置かれている根拠は大学設置基準第7条第3項の厚生補導の規定にある。

終わりの側は清算である。民法第688条第1項は、清算人の職務を、現務の結了、債権の取立て及び債務の弁済、残余財産の引渡しの三つと定める。同条第3項は、残余財産は、各組合員の出資の価額に応じて分割するとした。脱退者が出たときの計算は第681条で、脱退の時における組合財産の状況に従ってしなければならないとされ、持分は金銭で払い戻すことができる。

代表が立っている立場 根拠 放っておくと起きること
業務執行者 民法第670条第2項・第3項 決定が有効に成立せず、過半数を集め直すところまで戻る
契約の名義人 民法第4条、第675条第2項 成年なので取消しが使えず、請求が構成員の頭数に割られる
届出の責任者 学研災普通保険約款第2条第1項 学外活動中の傷害が補償の対象から外れる
清算人 民法第688条第1項 債務を残して散会し、後から全員に請求が向かう

四つの立場を一人が兼ねているので、代表の仕事は雑務の総量ではなく、権限の束として見たほうが正確である。引き継ぎのときに渡すのは鍵と通帳ではなく、この束のほうになる。組織の形から権限を割り振り直す考え方は学生団体の組織図|NPO法の機関設計を任意団体に当てて描くにまとめた。

よくある質問

Q. 代表を途中で交代することはできますか。

A. できますが、規約に任期や交代の手続が書かれていない場合は第672条が効き、辞任には正当な事由、解任には他の構成員の一致が必要になります。留学や病気は事由として説明しやすいので、記録を残して総会で確認を取ってください。

Q. 副代表を置けば責任は分散しますか。

A. 権限の面では分散します。第670条第3項は業務執行者が数人あるときの決定を業務執行者の過半数によるとしているので、二人以上で置くなら奇数にしておくほうが動きます。ただし契約に署名した個人の支払義務は、役職名では分かれません。

Q. 代表の個人口座で会費を管理していますが、問題になりますか。

A. 会費は第668条により構成員の共有です。個人名義の口座に置くと共有という性質と名義がずれ、代表自身の債務の差押えに巻き込まれる危険も出ます。団体名と代表者名を併記した口座が作れる金融機関があるので、設立届の控えを持って相談してください。

Q. 顧問教員がいれば代表の責任は軽くなりますか。

A. 制度としては別物です。顧問は大学に対する窓口であって、契約の名義人でも業務執行者でもありません。安全管理の助言を受けておく価値は大きいものの、署名した契約の支払義務が顧問へ移ることはありません。

Q. 代表の経験は就職活動でどう語ればよいですか。

A. 人数や肩書ではなく、どの権限を自分が握り、何を規約に書き足したかで語ると通ります。届出の締切を前倒しにした、発注前の決議を手順に組み込んだといった変更は、小さく見えて説明しやすい材料です。学生時代の活動を仕事の側からどう見るかという話はFLASPOでも扱っています。


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