サークル運営のコツ|半分が週0時間という前提から仕組みを組み直す

サークル運営のコツ|半分が週0時間という前提から仕組みを組み直す

六月に八人しか来ないのは、人が減ったからではない

新歓で名簿が四十人になり、六月の活動日に顔を出したのが八人だった。運営している側からは人が逃げたように見える。ところが国の調査を開いてみると、順番が逆だったことがわかる。日本学生支援機構が隔年で行っている令和6年度学生生活調査によれば、大学学部の昼間部に在籍する学生が一週間に部活動・サークル活動へ充てた時間は、「0時間」が53.7%、「1〜5時間」が25.2%である。週に六時間以上を割いている層は、合わせても二割に届かない。

この調査は全国の269万人余りを母集団として8万2千人余りに依頼し、1万2千人余りから有効回答を得たものだ。回収率は15.3%と書かれているので一軒一軒の実感とは差が出るが、分布の形はそれなりに信用できる。前回の令和4年度では「0時間」が55.7%だったから、二年で二ポイントほど動いた。増えたとはいえ、名簿の半分が週に一度も動かない前提は変わっていない。

1週間の活動時間 令和6年度 令和4年度
0時間 53.7% 55.7%
1〜5時間 25.2% 25.1%
6〜10時間 9.6% 8.6%
11〜15時間 4.7% 4.3%
16〜20時間 2.9% 2.5%
21時間以上 3.4% 3.5%
日本学生支援機構「令和6年度学生生活調査結果」大学学部(昼間部)より。無回答0.4%・0.5%を除いて表示。21時間以上は3区分の合計

運営のコツとして語られるものの多くは、この分布を「全員が週十時間動く」側へ引き戻そうとして力尽きている。週五時間の人を責めるのではなく、週五時間でも成り立つ作りに替える。そこから先の話は、お金と決め方と名簿と引き継ぎの四つに分かれる。

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会費は代表の財布に入った瞬間、全員のものになっている

年会費三千円を四十人から集めれば十二万円になる。これを代表の個人口座で預かっている団体は珍しくない。法律の側はこの十二万円をどう見るか。大学の公認を受けていない任意のサークルは、ふつう民法の組合契約として扱われる。第668条は「各組合員の出資その他の組合財産は、総組合員の共有に属する」と定める。預かっている人の名義がどこであろうと、帰属先は全員である。

この一文からいくつかのことが自動的に決まってくる。第676条第3項により、組合員は清算の前に組合財産の分割を求めることができない。やめる人が「払った分を返して」と言っても、途中では通らないという意味だ。逆に第677条は、組合員にお金を貸した人がその組合財産へ手を伸ばすことを禁じている。個人の借金の取り立てが部費まで届かない仕組みになっている。

会費を滞納されたときの扱いも条文にある。第669条は、金銭を出資の目的とした場合に組合員がそれを怠ったときは、利息の支払いに加えて損害の賠償をしなければならないとする。実際に学生同士で利息を請求する場面は想像しにくいが、「払わない人がいても仕方ない」という空気が法律の初期設定ではないことは知っておいてよい。

運用としては、会計を代表と別の人に置き、通帳の記録を学期ごとに全員へ見せる形が無理がない。残高の報告を「見たい人が言えば見せる」にしておくと、たいてい誰も言わないまま年度が終わる。共有財産なのだから、請求されなくても開く番が回ってくると考えたほうが筋が通る。立ち上げの段階から口座と名義を整えたい場合は、サークルの作り方の側で順番を追っておくと手戻りが少ない。

決め方を決めてあると、もめたときに戻る場所ができる

合宿先を温泉にするか離島にするかで二時間もめた、という話の本当の問題は行き先ではない。誰が決めるのかが決まっていないことだ。民法第670条第1項は「組合の業務は、組合員の過半数をもって決定し、各組合員がこれを執行する」と置いている。何も取り決めていないサークルは、この条文のとおり全件が過半数決定になる。四十人いれば二十一人の意思表示を集めるまで何も動かない。

そこで同条第2項が用意されている。組合契約の定めによって、業務の決定と執行を一人または数人に委任できる。会則にその一行を入れておけば、委任を受けた人が決めて動かせるようになる。委任された人を条文は業務執行者と呼び、数人いる場合は業務執行者の過半数で決めると第3項が続く。役職を置くという行為は、この委任を書面にする作業にあたる。

毎回の細かい判断については第670条第5項が逃げ道を作っている。組合の常務は各組合員または各業務執行者が単独で行うことができる。部室の消耗品を買う、練習場を押さえるといった日常の処理は、相談を待たずに動かしてよいという趣旨だ。ただし但し書きがあり、完了前に他の人が異議を述べたときは単独では続けられない。

合わない人を外す場面も条文に書かれている。第680条は、組合員の除名は正当な事由がある場合に限り、他の組合員の一致によってすることができると定める。全員一致で、しかも理由が必要という高い壁が立っている。感情で追い出せる設計にはなっていないし、本人に通知しなければ対抗できないとも書かれている。役職ごとの権限の線を引き直すなら、サークル代表の役割のほうで業務執行者の立場を詳しく追っている。

名簿を作った時点で、サークルは法律上の事業者に入る

新歓で配った紙に氏名と学部と携帯番号とLINEのIDを書かせ、表計算ソフトに打ち込んで共有フォルダに置く。この作業で何が起きるかというと、個人情報の保護に関する法律の適用範囲に入る。第16条第1項は、特定の個人情報を電子計算機で検索できるように体系的に構成したものを個人情報データベース等と呼び、同条第2項は、それを事業の用に供している者を個人情報取扱事業者と定義する。

学生のサークルが事業者と呼ばれるのは違和感があるかもしれない。個人情報保護委員会は公開しているFAQで、この法律における事業とは一定の目的をもって反復継続して遂行される同種の行為であって社会通念上事業と認められるものをいい、営利・非営利の別は問わないと説明している。そのうえで、サークルやマンション管理組合なども該当し得ると明記している。件数の下限はすでに撤廃されているので、四十人の名簿でも対象になる。

当てはまると決まれば、やることは条文を順に拾えば出てくる。第17条は利用目的をできる限り特定せよと求め、第21条第2項は、本人から直接書面で個人情報を取得する場合はあらかじめ利用目的を明示しなければならないとする。入会用紙の下に「連絡および名簿作成に利用します」の一行を刷っておけば足りる話で、用紙を刷り直す手間のほうが小さい。第23条は漏えいや滅失を防ぐ安全管理措置を、第24条は名簿を扱わせる人への監督を要求している。

いちばん踏みやすいのが第27条だ。あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないと書かれている。他大学の合同サークルに名簿を回す、スポンサー候補の企業へ参加者一覧を送る、OBの会に卒業生の連絡先を渡す。どれも第三者提供にあたる。共有フォルダの権限を広く開けたまま卒業していく運用も、ここに触れる形になりやすい。

引き継ぎは三月に始めると間に合わない

代替わりで毎年失われるものは、鍵の場所でも印鑑でもない。「去年なぜその判断をしたか」の部分である。合宿先を変えた理由、昨年度に会計が合わなかった原因、大学の窓口で誰に話を通したか。この種の情報は引き継ぎ資料に書かれないまま消えるので、翌年の代表が同じ検討を一からやり直す。

やめる人の扱いも先に決めておきたい。民法第678条第1項は、存続期間を定めなかった組合では各組合員がいつでも脱退できるとしつつ、やむを得ない事由がある場合を除き、組合に不利な時期に脱退することはできないと続けている。合宿の二日前に会計が抜けると、この但し書きに引っかかる余地がある。たたむときは第688条が清算人の職務として現務の結了、債権の取立てと債務の弁済、残余財産の引渡しを挙げ、残余財産は各組合員の出資の価額に応じて分割すると定めている。

時期の話をすると、三月の引き継ぎでは遅い。十月から次の代表を決めて、冬の行事を二人で回しておくと、判断の文脈ごと渡せる。十一月に会計の帳簿を一緒に締め、十二月に大学の窓口へ二人で行き、一月に名簿の権限を付け替える。これだけで三月にやることが鍵の受け渡しだけになる。

残すべき書類は多くない。会則と、年度ごとの収支と残高、大学への提出書類の控え、名簿の利用目的を書いた入会用紙の見本、そして判断の記録を一枚。学生時代の運営経験を就職活動で語る段になると、この判断の記録がそのまま材料になる。FLASPOのように学生の活動を扱う場でも、聞かれるのは役職名より「何をどう決めたか」のほうだ。会則そのものを起こし直すなら、学生団体の会則で記載事項を並べている。

よくある質問

会費を一年分まとめて集めるのと、月ごとに集めるのはどちらがよいですか。
管理の手間では年額が楽だが、民法第676条第3項により途中でやめる人へ返金する義務は生じない一方、返さないことへの不満は残る。半期ごとに区切ると、週0時間の層が大半という分布に対しても取りすぎになりにくい。金額の根拠を収支で示せる形にしておくほうが、集め方の選択より効く。

名簿をLINEのグループだけで管理していれば、個人情報保護法の対象外になりますか。
なりません。第16条第1項は検索できるように体系的に構成されたものを広く含み、表計算ソフトかメッセージアプリかを区別していない。むしろ退会者が残り続けたり、誰でも名前と連絡先を見られたりする点で、第23条の安全管理措置の面では不利になりやすい。

会則がない状態で一年を回してしまいました。今から作る意味はありますか。
あります。会則のない間は民法第670条第1項の過半数決定がそのまま当てはまっているので、これまでの決定の多くが条文どおりではなかった可能性がある。遡って無効にする必要はないが、委任の一行を入れた時点から先は根拠のある決め方に替わる。

幽霊部員の名前を名簿から消してよいですか。
名簿から外すことと、組合員の地位を失わせることは別の話になる。前者は本人に連絡したうえで整理すればよく、後者は第680条の除名にあたるため正当な事由と他の組合員の一致が必要になる。来ないことそれ自体を正当な事由と言い切るのは難しいので、本人に脱退の意思を確かめる順番が現実的だ。

週に一度も活動しない人が半分という数字は、うちの代だけの問題ですか。
全国の分布です。令和6年度の調査で「0時間」は53.7%、前回の令和4年度も55.7%だった。短期大学の昼間部ではさらに高く79.2%に達している。人の熱量の問題として処理せず、週数時間の関与でも回る役割分担に組み替えるほうが筋が通る。


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