地域のDAOはどの器で立つのか|2024年に開いた合同会社型という入口

名前はDAOでも、契約を結ぶ主体は別に用意されている

地域の取組に「DAO」という名前が付いていると、組織の形まで新しいものに置き換わったように見える。ところが口座を開く、補助金を受ける、土地を借りるといった場面では、現行の法律が認める主体でなければ相手が応じない。トークンの保有者が投票で物事を決める仕組みと、外と契約を結ぶための器は、別々に用意されているのが実情である。

内閣官房と内閣府が令和7年5月12日の会議に出した関係人口と小さな拠点に関する資料は、新潟県長岡市の山古志地区の例をこう整理している。NFTの保有者が参加する仮想の共同体を山古志DAOと呼び、活動内容は「村民」から募集して投票で決める。デジタル村民は関係人口として位置づけられ、人数は1,779人、NFTの発行数は第一期と第二期の合計で2,937とされている。そして2024年2月11日に、地縁や血縁を越えた自治圏に向けて「ネオ山古志村」が権利能力なき社団として設立されたと記されている。資料はこの一連の取組をLocalDAOと呼んでいる。

注目したいのは、投票の仕組みが動いた後に、法人格のない社団という古くからある形が選ばれている点である。NFTが開いた関わりの形そのものはデジタル村民1,800人の事例で扱っているので、ここでは器の選び方と、その選択肢が2024年に一つ増えた経緯を追う。

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2024年4月に条文へ一行が加わった

選択肢が増えたのは、金融庁が所管する府令の改正による。金融庁は2024年2月1日に改正案を公表し、その趣旨を「トークン化された合同会社等の社員権について、一定の場合には通常の合同会社等の社員権と同等の規制とするための所要の改正」と説明している。手続を経て令和6年内閣府令第49号として2024年4月1日に公布され、同年4月22日から施行された。

改正されたのは金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令の第九条の二で、見出しは「電子記録移転権利から除かれる場合」である。改正前はこの条が一つの場合だけを定めていたのに対し、改正後は二つの号のいずれかに当たればよい形になり、新しく加わった第二号が合同会社などの社員権を名指しした。e-Gov法令検索で現行の条文を開くと、第一項第二号として残っているのが確認できる。

同じ改正では第十六条の二にも号が加えられた。こちらは金融商品取引業となる募集または私募に係る有価証券から除かれる場合を定めた条で、第二号として、第二条第二項第三号の権利が表示される場合で、その財産的価値の全てが第九条の二第一項第二号のイまたはロに該当するときが入った。発行する側が自ら勧誘する行為の扱いも、同じ条件でそろえられている。

抜け道は二つあり、地域向きなのは後者

第九条の二第一項第二号が示す要件は二つで、どちらか一方に当たればよい。イは、その財産的価値を業務を執行する社員以外の者に取得させたり移転したりできないようにする技術的措置が取られていることを求める。ここでいう業務を執行する社員は、事業に係る業務執行の決定について同意をするか否かの意思を表示し、かつ事業の全部または一部に従事する者に限ると括弧書きで絞られている。働き手として関わる人だけが持てるトークン、という形になる。

ロは、トークンに表示される権利を持つ者が、その出資または拠出の額を超えて収益の配当や事業に係る財産の分配を受けることがないことを求める。配当で儲ける設計をしないなら、保有者を限定しなくてもよいという条件である。地域に関わる人を広く集めたい取組では、住んでいる場所も職業も問わずに参加してもらえるロの方が使いやすい。

トークンに表示される権利 満たす要件 電子記録移転権利に当たるか
第二項各号の権利 第九条の二第一項第一号(取得者を適格機関投資家等に限り、移転は都度発行者の承諾を要する) 当たらない
合同会社などの社員権 第一項第二号イ(業務を執行する社員に限る) 当たらない
合同会社などの社員権 第一項第二号ロ(出資・拠出の額を超える配当や分配がない) 当たらない
第二項各号の権利 いずれにも当たらない 当たる

そもそも合同会社の持分は有価証券として扱われている

なぜ府令の一行で扱いが変わるのか。出発点は金融商品取引法第二条第二項第三号にある。ここは「合名会社若しくは合資会社の社員権(政令で定めるものに限る。)又は合同会社の社員権」を、証券や証書に表示されるべき権利以外の権利であっても有価証券とみなすと定めている。株券のような紙がなくても、合同会社の持分は有価証券の一種として法律の対象に入る。

続く第二条第三項は、こうした権利が電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示される場合を「電子記録移転権利」と名付け、これを第一項有価証券に含めている。電子記録移転権利を除いた第二項各号の権利が第二項有価証券である。同じ持分でも、ブロックチェーン上のトークンに載せた瞬間に区分が移り、募集に該当するかどうかの判定も別の号に振り分けられる。

第三項の括弧の中には、「流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定める場合を除く」という一文がある。この除外の中身を書いているのが第九条の二であり、2024年に加わった第二号は、地域の共同出資のように転売を目的としない設計であれば従来の持分と同じ扱いに戻すという判断を条文に落としたものといえる。関係人口のまま事業を立てる際の居住要件については関係人口のまま起業できるかに整理がある。

トークンを配ると暗号資産になるのかという別の問い

社員権を載せないトークン、たとえば地域の活動に参加した記録や投票の権利だけを表すものを配る場合は、金融商品取引法とは別の法律が関わってくる。資金決済に関する法律第二条第十四項は暗号資産を二つの類型で定義している。第一号は、物品等の購入や役務の提供の代価の弁済のために不特定の者に対して使用でき、かつ不特定の者を相手方として購入および売却ができる財産的価値で、電子情報処理組織を用いて移転できるものである。第二号は、不特定の者を相手方として第一号のものと相互に交換できる財産的価値を指す。

鍵になるのは「不特定の者」という言葉が二度出てくる点である。地域の限られた店でしか使えない、あるいは譲渡を想定していない設計であれば、この定義にそのまま当てはまるとは言いにくい。逆に、誰にでも売買できる市場を自分たちで用意すると、定義に近づいていく。設計の段階でどこまで流通させるつもりなのかを決めておかないと、後から規制の網が変わる。

公的な窓口を整える動きと並べて考えると位置づけが見えやすい。自治体が関係人口を登録して名簿を持つ仕組みについては関係人口のデジタル窓口は誰が回すのかでまとめている。トークンを使う方式は、この名簿の役割を保有者の一覧で代替しようとする試みに近い。地域と関わる最初の一歩を探している段階なら、FLASPOのような窓口から受け入れ先を見ておくほうが具体的に動ける。

よくある質問

DAOという法人格はあるのか。法律に「DAO」という名前の器は置かれていない。山古志の例で選ばれたのは権利能力なき社団であり、2024年の府令改正で整えられたのは合同会社の社員権をトークンに載せる場合の規制の扱いである。名前ではなく、どの法人格を使うかで権利と義務が決まる。

配当をしない設計にすれば何の規制もかからないのか。第九条の二第一項第二号ロを満たせば電子記録移転権利から除かれるが、合同会社の社員権が有価証券とみなされること自体は変わらない。第二項有価証券としての扱いが残るため、勧誘の方法や人数によって手続が変わる。実際に発行する前に、どの条文の適用を受ける設計なのかを専門家に確認する必要がある。

住んでいない人が社員になれるのか。府令第九条の二第一項第二号イは保有者を業務を執行する社員に絞るが、そこで要求されているのは業務執行の決定への意思表示と事業への従事であり、住所地の要件ではない。ロを選ぶ場合は保有者の属性に条件が付かない。関係人口として遠くから関わる形と、法律上の社員であることは両立し得る。

自治体はこうした取組に加われるのか。山古志の例は、総務省の令和3年度過疎地域等集落ネットワーク圏形成支援事業として公表されている。実施主体は山古志住民会議で、令和3年度の交付金活用額は9,830千円、電子住民票は2回に分けて発行され、国内外から延べ850人のデジタル住民が生まれたと記録されている。公費の入口は既存の交付金や委託の枠であり、トークンの保有者として自治体自身が入るかどうかは別の論点になる。公金の支出と議会の関与をどう整理するかが、器の選択より先に来る。


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