廃墟になるテーマパークの手前で何が起きるか|第三セクター廃止144件

跡地の写真より先に、決算書が終わっている

使われていない観覧車やさびた門が写った一枚の写真は、よく「廃墟化したテーマパーク」として回ってくる。ただし建物が傷むのは最後の段階で、その前に終わっているものがある。施設を動かしていた法人である。自治体が出資した運営法人であれば、いつ・どういう理由で畳まれたかは法人名まで公表されている。

総務省の第三セクター等の状況に関する調査結果の概要によると、令和7年3月31日時点の第三セクター等は6,947法人で、前回調査より80法人少ない。前回調査は令和5年3月31日時点なので、この2年が今回の調査期間にあたる。その間に新しく設立された法人も86あり、全体が一方向に細っているわけではない。

減った側の内訳は、廃止が144件、統合が14件(これで15法人減)、出資引揚が36件で、合わせて195法人である。144件の廃止のうち130法人は年度別の一覧表に法人名で並び、残る14法人は法的整理によって清算が結了したものとして別に記録されている。「廃墟」と呼ばれる建物の多くは、この144件のどこかに対応する運営法人を持っている。

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債務超過率が全分野で最も高いのは観光・レジャー

同じ調査では、出資割合や財政的支援の条件に当てはまる5,760法人について経営状況も調べている。経常黒字は3,503法人で全体の60.8%、前回調査より1.9ポイント上がった。赤字法人の割合が最も高い分野は社会福祉・保健医療の56.9%、黒字法人の割合が最も高いのは情報処理の85.1%である。

ところが純資産で見ると順番が変わる。債務超過の法人は235で全体の4.1%にとどまるのに、分野別では観光・レジャーが12.2%と最も高く、次の運輸・道路7.8%を大きく離している。全体平均のおよそ3倍である。観光・レジャー関係には、リゾート、レジャー施設の整備と運営、温泉施設、ホテル・旅館などが含まれ、この調査では833法人が経営状況の対象になっている。

もうひとつ目を引くのは、自治体がどこまで後ろに付いているかの差である。損失補償や債務保証を自治体から受けている法人の割合は、地域・都市開発では26.9%に達するのに、観光・レジャーは2.4%しかない。金額でも29億円で、運輸・道路の1兆1,063億円とは桁が違う。一方で自治体以外からの借入がある法人は33.3%あり、傾いたときに自治体が肩代わりする仕組みは薄い。

業務分野 法人数 補助金あり 自治体以外からの借入あり 損失補償・債務保証あり
観光・レジャー 833 36.7% 33.3% 2.4%
地域・都市開発 908 24.2% 37.4% 26.9%
農林水産 968 52.6% 27.8% 6.7%
運輸・道路 359 48.2% 42.3% 6.4%
全分野の合計 5,760 46.2% 24.3% 6.8%
総務省「第三セクター等の状況に関する調査結果の概要」(令和7年3月31日時点)より作成

畳む理由として最も多いのは「赤字」ではない

総務省は廃止された法人を年度ごとの統廃合等全国集計として公表しており、法人名・主たる出資自治体・出資額・廃止理由までが1行ずつ並ぶ。この一覧を業務分類で数えると、130法人のうち観光・レジャーは28法人で、土地開発公社を多く含む地域・都市開発の40法人に次ぐ2番目だった。農林水産16法人、商工9法人がそれに続く。

その28法人の廃止理由を区分ごとに数えたのが次の表である。「経営状況が低調で、改善が困難」は8件で3割に届かない。これと同数で並ぶのが「その他」、次に多いのが「指定管理者制度の活用により、業務が失われた」の5件である。直営事業への移行2件を足すと、運営の担い手が替わっただけで法人が不要になった型が7件ある。

廃止理由 件数
経営状況が低調で、改善が困難 8
その他 8
指定管理者制度の活用により業務が失われた 5
他に類似の業務を行う第三セクター等がある 3
都道府県・市区町村の直営事業へ移行 2
既に事業目的を達成 1
新公益法人への移行申請を行わずみなし解散 1
令和5年度・令和6年度に廃止された観光・レジャー関係28法人の内訳。総務省「統廃合等全国集計」の一覧を業務分類で集計

一覧に載る業務概要を読むと、温泉施設、道の駅、キャンプ場、ゴルフ場、宿泊施設が並ぶ。ゴルフ場を管理していた北海道南幌町の法人、観光鍾乳洞を運営していた熊本県球磨村の法人、温浴宿泊施設の指定管理を受けていた新潟県上越市の法人といった具合である。遊園地やテーマパークを名乗る法人はほとんど出てこない。地方の観光施設の現実は、大型の遊戯施設よりも温泉と道の駅に寄っている。施設整備そのものの設計の問題はハコモノはなぜ失敗するのかで扱っている。

法的整理14件のうち7件が観光・レジャーだった

畳み方のなかでも、自ら解散を決める場合と、裁判所の手続に入る場合では後に残るものが違う。今回の調査期間に法的整理の申し立てで清算が結了したのは14法人で、いずれも会社法法人だった。手法の内訳は破産10、特別清算3、特定調停1で、私的整理による清算結了はなかった。

総務省が公表する法的整理全国集計の業務分類を見ると、14法人のうち7法人が観光・レジャーだった。半分である。規模は一様ではない。山梨県北杜市のモール運営法人は負債24億3,918万円に対して純資産が24億2,072万円のマイナス、島根県浜田市のホテル運営法人は負債3億9,155万円に対して純資産が3億8,957万円のマイナスだった。破綻理由の欄には「債務超過のため」と書かれた法人もあれば、宿泊とレストランの売上が落ち込んだと書く法人、熊本地震と感染症の影響を挙げる法人もある。

自治体の側の負担も一覧に金額で載っている。14法人の破綻に伴う財政負担は合計20億6,326万円で、うち観光・レジャーの7法人分は1億4,107万円だった。最大だったのは農林水産分野の島根県奥出雲町の法人で10億151万円、そのうち9億251万円が損失補償・債務保証の履行である。観光・レジャーの7法人はほとんどが出資金の放棄にとどまり、代位弁済はなかった。件数は多いのに1件あたりの負担が軽いのは、前の章で見た損失補償2.4%という低さの裏返しである。交付金に頼る設計の限界は補助金頼みの地方創生はなぜ続かないのかと地続きの話になる。

建物が残る理由と、学生が開ける資料

法人が消えても建物はその場に残る。自治体が持つ施設であれば、ここで効いてくるのは解体の財源である。公共施設等適正管理推進事業債には除却事業という対象があり、充当率は90%だが、元利償還金に対する交付税措置はない。一方、集約化・複合化に伴う除却なら交付税措置率は50%で、長寿命化や転用などは財政力に応じて30〜50%が付く。令和8年度の事業費は5,000億円、事業期間は令和8年度までで、年度内に工事に着手した事業には令和9年度以降も同じ措置が続く経過措置がある。

つまり「ただ壊す」には国からの手当てが付かず、「建て替えや集約と一緒に壊す」なら付く。跡地の使い道が決まらないうちは、壊す判断が後回しになりやすい。民間の建物でも事情は似ており、空き家の解体費用の構造別の目安を見ると桁の感覚がつかめる。

地域に入る学生が一つの施設を調べるなら、順番がある。第一に、施設名ではなく運営法人名で探す。第三セクター等の状況に関する調査には法人名と主たる出資自治体、出資額、廃止理由が載る。第二に、財政的リスクの状況に関する調査を見る。こちらは毎年度の調査で、令和6年度決算データによる調査対象は943法人、前年度より51法人少ない。うち経営健全化方針の策定要件に当てはまるのは254法人で調査対象の26.9%、策定が必要な自治体は278団体ある。債務超過法人と関係を持つ自治体だけで237団体である。第三に、自治体側の公共施設等総合管理計画と個別施設計画を開き、その施設が集約・転用・除却のどれに位置づけられているかを確かめる。

ここまで押さえると、現地で聞く質問が変わる。「なぜ潰れたのですか」ではなく「指定管理に切り替えたのはいつですか」「跡地は個別施設計画でどう扱われていますか」と聞ける。地域での活動の組み立て方はFLASPOでも紹介している。

よくある質問

テーマパークの閉鎖件数を示す統計はありますか

閉鎖や跡地を直接数えた官公庁の統計は見つからない。追えるのは、自治体が出資した運営法人の廃止と法的整理だけである。民間が単独で建てて運営した施設は第三セクター等の調査の対象外なので、同じ方法では数えられない。

第三セクターは減り続けているのですか

令和7年3月31日時点で6,947法人、前回調査比で80法人の減少である。ただし同じ2年間に86法人が新設されており、廃止と設立が同時に起きている。土地開発公社を含む地方三公社は611法人で、40法人減った。

自治体はいくら払うことになりますか

法的整理で清算が結了した14法人について、自治体の財政負担は合計20億6,326万円だった。中身は出資金の放棄、短期や長期の貸付金の債権放棄、損失補償や債務保証の履行などで、損失補償を付けていた場合に負担が重くなる。1件あたりの振れ幅は大きく、ゼロの法人もある。

調査結果はどこから探せますか

総務省の第三セクター等のページに、状況に関する調査、財政的リスクの状況に関する調査、経営健全化方針の取組状況の調査が年度別に並ぶ。概要のPDFだけでなく、法人ごとの一覧が入ったEXCELも同じ場所から落とせる。状況に関する調査は令和2年度から隔年になっている点には気をつけたい。


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