特定居住促進計画とは|二地域居住を市町村が進める3つの新しい仕組み

法律の条文に載った住まい方

週末だけ地方で過ごす暮らしは、長く個人の工夫の範囲にあった。住む場所を二つ持つことに制度上の裏づけはなく、空き家を借りる交渉も仕事の確保も当事者任せだった。それが2024年に変わった。広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律、通称の広活法が改正され、国土交通省の発表によれば令和6年5月22日に公布、同年11月1日に施行された。令和6年法律第31号である。

条文の中では「二地域居住」ではなく「特定居住」という語が使われる。日常語と法律用語が食い違うため、自治体の資料を検索するときは両方で引く必要がある。国交省の二地域居住の推進ページは、人口が減る中で全ての地域が定住人口を増やせるわけではないという前提を置き、地方への人の流れをつくる手段として位置づけている。

改正が扱うのは暮らしの三つの壁である。自治体向けの手引きは「住まい」「なりわい(仕事)」「コミュニティ」を挙げ、どれかが欠けると二地域居住は続かないと整理している。制度の組み立ては、この三つを市町村が自分の区域の事情に合わせて用意できるようにするという方向でできている。

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新しく置かれた三つの仕組み

改正で加わったのは、計画、法人、協議会の三本である。

仕組み つくる・指定する主体 役割
特定居住促進計画 市町村 区域と方針、拠点施設の整備を定める。計画に載せた事業に法律上の特例がつく
特定居住支援法人 市町村長が指定 NPO法人や不動産会社などが、住まい・仕事・交流の仲立ちをする
特定居住促進協議会 市町村が組織 都道府県、支援法人、住民、不動産会社、交通事業者、商工会議所、農協などで協議する

計画を市町村が単独でつくれるわけではない点が肝である。都道府県が二地域居住に関する事項を含む広域的地域活性化基盤整備計画を作成したときに、市町村が特定居住促進計画をつくれる仕組みになっている。都道府県の計画は期間が3年から5年で、必要があれば10年まで延ばせる。市町村の側からは、拠点施設と重点地区を内容に含めるよう都道府県に提案することもできる。

支援法人の指定は市町村長の権限である。指定を受けた法人は、空き家の情報や仕事の情報、イベントの情報を市町村長から提供してもらえるようになり、計画の作成や変更を市町村に提案することもできる。民間が勝手に動くのではなく、情報の受け渡しを制度の中に入れたところが従来との違いになる。

協議会には手続き上の重みがある。協議会を置いている市町村は、計画に記載する事項についてそこで協議する必要があり、協議が調った事項は構成員がその結果を尊重するものとされている。住民や事業者を集めて意見を聞くだけの場ではなく、決まったことに縛られる場として組まれている。二地域居住者が増えると、ごみ出しや自治会の当番、不在期間の家の管理といった生活の摩擦が先に出る。手引きも、慣習を知らないことによる不和や不在によるやり取りの不足を想定すべき点として挙げている。

計画に何を書き、どう決めるのか

計画の必須の記載事項は四つで、特定居住促進区域、促進に関する基本的な方針、特定居住拠点施設の整備に関する事項、計画期間である。必要に応じて、生活の利便性や就業機会の創出に資する施設の整備、効果を高めるために一体で行う事業、都道府県が行う基盤整備との連携についても書く。

区域の設定には制約がある。市町村の全域を一律に指定することは認められず、市街化調整区域や災害のリスクを考えて絞る必要がある。一方で一つの市町村に複数の区域を置くことや、複数の市町村が共同で区域をまたいで設定することは認められている。都市計画のマスタープランや土地利用計画と矛盾しないか、住民の意向を反映しているかも確認事項に挙がっている。

決め方の手順も示されている。素案をつくり、検討の段階で都道府県に意見を聴き、説明会やパブリックコメントで住民の意見を反映する措置を講じ、協議会を置いている場合はそこで協議し、特例に関して都道府県などと協議して同意を得て、公表する。公表をもって計画は策定されたことになる。つまり外から読める形で残る文書であり、どの地域がどんな人に来てほしいと考えているかが文章になって出てくる。

5年で600件と600法人という目安

制度がどれだけ広がる想定なのかは、法案段階の資料に数字で出ている。法案の概要は成果の指標として、特定居住促進計画の作成数を施行後5年間で累計600件、二地域居住等支援法人の指定数を同じ期間で累計600法人と掲げている。施行から5年という期限つきの数字であり、計画と法人を同数そろえる設計になっている点に意図が見える。計画だけつくっても実務を担う法人がなければ動かないという判断である。

需要の側の数字も同じ資料に載っている。二地域居住等への関心は約3割、20歳代の地方移住への関心は約半数とされ、関心の高さを制度化の理由に挙げている。関心と実行の差が大きいことは、三つの壁の存在と合わせて読むと分かりやすい。住まいと仕事と人のつながりのどれかが欠けたままでは、関心は行動に変わらない。

関係人口という言葉で語られてきた層と、この制度が想定する層は重なるが同じではない。関係人口には訪問しない関わり方も含まれるのに対し、特定居住は実際に滞在して住まいを持つ形を前提にする。二地域居住の現状や滞在の目的ごとの違いと並べて見ると、制度が拾おうとしている範囲がはっきりする。

市町村の側も目標を立てることになっている。方針の中に促進に係る目標を置き、地域が求める二地域居住者数を指標として設定することが求められる。人数の増減を把握しにくい段階では、拠点施設の年間の利用者数や開いたイベントの参加者数といった中間的で暫定的な指標でもよいとされている。計画の実施による効果を検証するために定期的に評価する枠組みが前提にあり、数えられる形に落とすところまでが市町村の仕事になる。

学生の側から見える入口

在学中に家を二つ持つのは現実的ではない。それでもこの制度が学生に関係するのは、計画に載る拠点施設の中身が若い世代の使う施設だからである。手引きが例に挙げるのは、一団地の住宅施設や宿泊施設、シェアハウス、お試し居住施設、シェアオフィスやコワーキングスペース、工房、コミュニティカフェなどの交流施設である。短期で地域に入りたい学生が使える受け皿と重なる。

支援法人の公募はすでに市町村単位で始まっている。新潟県三条市や佐渡市は募集要項を公開しており、年度内の指定を希望する場合の申請期限まで示している。学生がいる団体がすぐ指定を受けられるわけではないが、地域で活動している団体や不動産会社、NPOのどこが手を挙げているかを見れば、その地域で誰が受け入れの実務を担うのかが分かる。

計画と協議会の構成員の一覧は公表される。交通事業者や商工会議所、農協が並ぶ名簿は、その地域で話が通る相手の一覧でもある。地域に入る前に一度読んでおくと、連絡先を探す手間が減る。使える支援制度の全体像は二地域居住の支援制度に整理されており、学生の立場での関わり方はFLASPOでも扱っている。

よくある質問

自分の住む自治体に計画があるか調べたい。計画は公表をもって成立するため、市町村の公式サイトで「特定居住」や「二地域居住」の語で探すのが早い。都道府県が広域的地域活性化基盤整備計画をつくっていない段階では市町村は計画を持てないので、見つからない場合は県の側の状況も確認する。

計画があると何が変わるのか。計画に定めた事業について法律上の特例が措置される。住居専用地域で二地域居住者向けのコワーキングスペースを開設しやすくするといった扱いがその例である。あわせて空き家の改修やコワーキングスペースの整備に予算面の支援が用意されている。

支援法人にはどんな組織がなれるのか。法改正で想定されているのはNPO法人や民間企業で、不動産会社が例示されている。二地域居住の促進に関する活動を行っていることが前提になり、指定するのは市町村長である。空き家などの不動産情報の提供には本人の同意が必要とされている。

目標の600件に対して今どこまで進んでいるのか。国としての集計は公表されていない。公募要項を出している自治体が個別に確認できる段階で、全国の作成数や指定数を一覧で示した資料は今のところ見当たらない。進み具合を知りたい場合は、関心のある市町村の担当課に直接聞くのが確実である。


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