三百四人が、三十五の団体に分かれている
四国の西側で協力隊を探すと、募集の一覧は出てくるのに、県全体で何人が活動しているのかは分かりにくい。総務省が令和八年四月二十四日に公表した令和7年度の地域おこし協力隊の隊員数等についてによれば、高知県の隊員は三百四人、受け入れている団体は三十五である。
全国の規模は八千百九十六人で、取り組んでいる自治体は千百八十七団体。前年度から隊員が二百八十六人、団体が十一増えた。受け入れが可能な自治体は千四百六十一団体あり、その約八十一パーセントが実際に受け入れている。全国を俯瞰した並びは地域おこし協力隊の地域別ガイドの記事にある。
一団体あたりの人数を出すと、高知県は八・七人になる。全国の平均は六・九人だから、一か所に置かれている人数はやや多い。隊員が集中している自治体がある県では、この数字が大きく振れる。高知県の場合は三十五団体に広く分かれており、特定の一市町村に偏っている形ではない。
制度全体は拡大の途中にある。総務省の資料は、隊員数を一万人とする目標を掲げていると明記している。八千百九十六人という現在地からは、あと千八百人あまりという距離になる。募集の枠が絞られていく局面ではないため、応募先を一つに決め打ちする必要は薄い。
三十五という数は、県と全市町村を足した数と一致する
受け入れ団体の内訳を確かめると、この県の特徴が出てくる。高知県内の市町村は三十四で、県が自ら委嘱している隊員が二十二人いる。県と三十四市町村を足すと三十五になり、公表されている団体数とちょうど重なる。
全国の千百八十七団体は、二十の道県と千百六十七の市町村で構成されている。つまり都道府県が直接受け入れる形は二十しかなく、高知県はその一つにあたる。県の広域の仕事と市町村の現場の仕事が、同じ制度の中で並んでいることになる。
広く分かれていることは、選ぶ側には手間として現れる。島根県のように一つの町へ大きく集まる県とは、探し方が変わってくる。集中型の例は島根県の協力隊の記事で確かめられる。高知を見るときは、県の募集と各市町村の募集を別の列として並べたほうが早い。
定住率七十三・八パーセントは、どの位置にあるのか
任期の後に残るかどうかは、数字で追える。令和二年四月一日から令和七年三月三十一日までの五年間に任期を終えた高知県の隊員は三百六十二人で、そのうち二百六十七人が同じ地域に定住した。割合は七十三・八パーセントである。全国では八千七百六十二人のうち六千百六十三人が残り、七十・三パーセントだった。
| 県・全国 | 直近5年の任期終了者(人) | 同じ地域に定住(人) | 定住率 |
|---|---|---|---|
| 高知県 | 362 | 267 | 73.8% |
| 香川県 | 66 | 48 | 72.7% |
| 愛媛県 | 193 | 130 | 67.4% |
| 徳島県 | 100 | 65 | 65.0% |
| 全国 | 8,762 | 6,163 | 70.3% |
四国の四県で比べると、任期終了者の数は高知が最も多く、徳島の三・六倍である。定住率も四県の中で一番高い。さらに全国で任期終了者が三百人を超える七つの道県に絞ると、高知の七十三・八パーセントは北海道と長野に次ぐ三番目になる。母数が小さい県の高い定住率と違い、三百人規模で保たれている点に意味がある。
定住の中身も分解されている。全国で任期を終えた八千七百六十二人のうち、活動した市町村にそのまま残った人が五千三十八人で五十七・五パーセント、近隣の市町村に移った人が千百二十五人で十二・八パーセントだった。他の地域へ転出した人は二千十三人で二十三・〇パーセントいる。同じ地域に残るという言い方には、隣の市町村へ移った形も含まれている。
四国を含む広域の並びは中国・四国9県の協力隊の記事で扱っている。県をまたいで比べると、隊員数の多さと定住率の高さが必ずしも一緒に動かないことが見えてくる。
転出した二千十三人のうち二百二十八人は、活動地と関わりのある地域協力活動などに従事しているとも書かれている。住む場所を移しても関わりが切れていない形である。定住率という一つの数字だけで成否を測ると、この層が見えなくなる。
残った人のなりわいは、起業がいちばん多い
定住した後の生計については、全国の集計が出ている。活動した市町村と同じ場所に残った五千三十八人のうち、約四十五・六パーセントの二千二百九十六人が起業、約三十四・八パーセントの千七百五十三人が就業、約十一・六パーセントの五百八十三人が就農か就林だった。事業承継は七十人で一・四パーセントである。
起業が最多という並びは、制度の側の設計と対応している。総務省の地域おこし協力隊についての資料は、隊員の起業や事業承継に要する経費について一人あたり百万円を上限とする財政措置を示し、令和八年度からは新たな雇用の創出などの要件を満たす場合に二百万円へ引き上げると書いている。任期の二年目から終了後三年以内が対象の期間である。
ここで挙げた割合は全国の数字であって、高知県だけの内訳ではない。県別に出ているのは任期終了者数と定住率までなので、なりわいの傾向は全国の分布を目安として使うことになる。応募先の自治体に、過去の隊員がどの道を選んだかを直接尋ねるほうが精度は高い。
応募を考える段で見ておく三つの数字
一つ目は年代である。令和七年度の隊員の年齢構成は、二十代が三十三・六パーセント、三十代が三十・一パーセントで、合わせて六割を超える。四十代は二十・一パーセント、五十代は十一・五パーセント、六十歳以上は四・四パーセントだった。女性は四十・三パーセントを占める。学生が卒業後の進路として考える場合、同年代が多数派の制度だと分かる。
二つ目は期間と費用の条件である。活動期間はおおむね一年以上三年以下で、令和八年度からは最大五年とする特例が置かれた。国の財政措置は隊員一人あたり五百五十万円を上限とし、報償費等が三百五十万円、その他の活動経費が二百万円という内訳になっている。実際にいくら支給されるかは自治体ごとの要綱で決まる。
三つ目は相談先である。高知県には「とさのね」という県域のネットワークが令和五年一月に設立されている。任期中や任期後の隊員同士がつながる場で、同じ仕組みは他の県にもある。応募の前に短く試す方法としては、二週間から三か月の地域おこし協力隊インターンという枠も用意されている。地域と関わる入口を比べる段では、FLASPOのような場も候補に入る。
受け入れる側の予算も同じ資料に出ている。隊員の募集等に要する経費は一団体あたり三百五十万円が上限で、日々のサポートに要する経費は二百万円が上限とされている。募集の説明会や相談対応に手が回っている自治体は、この枠を使っている可能性が高い。問い合わせへの応答の速さは、その運用の表れとして見ておける。
よくある質問
高知県の協力隊は増えているのか。県単位の前年比は公表資料に出ていないため、増減は断定できない。全国では隊員が二百八十六人増え、取り組む自治体も十一増えた。県別の数字を追うなら、毎年四月に公表される同じ資料を並べる形になる。
定住率が高いのは、条件がよいからなのか。資料は理由までは書いていない。言えるのは、三百六十二人という規模で七十三・八パーセントが保たれている点である。受け入れの歴史が長い自治体が多いのか、仕事の作り方が合っているのかは、個別の自治体に当たって確かめる必要がある。
県の直営と市町村では、何が違うのか。県が委嘱する隊員は広域の課題を担うことが多く、市町村の隊員は特定の集落や分野に入ることが多い。高知県では県直営が二十二人いる。募集要項に書かれた活動範囲と配属先を読み比べるのが確実である。
任期の途中で辞めた人はどう扱われるのか。定住率の分母は任期を終えた人であり、中途で退任した人はここに入らない。数字を読むときは、残った人の割合であって続いた人の割合ではないことを意識しておきたい。
数字はどこで確かめられるのか。隊員数と受入自治体数、都道府県別の定住率はいずれも総務省の公表資料に載っている。年度が替わると数値が入れ替わるため、引用するときは公表日を添えておくのが安全である。
おためしとインターンはどう違うのか。総務省の案内では、おためし地域おこし協力隊は主に二泊三日で、受入地域の関係者との顔合わせや交流会への参加が中心となる。インターンは二週間から三か月で、地域協力活動の実地体験にあたる。どちらも住民票の異動は条件になっていない。
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