地銀のコンサル化は制度が決めた|2021年の銀行法改正で変わった仕事

「融資だけの会社ではない」と言われはじめた順番

説明会で「当行はコンサルティング機能を強化しています」と聞かされ、面接で何を話せばいいのか決めきれない。そういう詰まり方をしている学生は少なくない。この言い回しは各行が同時に思いついたものではなく、監督する側が文言を書き換えたところから順に広がっている。金融庁は2018年に監督指針を改め、銀行が取引先企業に人材を紹介することを、銀行業に付随する業務として例示に加えた。それまで輪郭のはっきりしなかった領域に線が引かれ、有料職業紹介事業の許可を取る銀行が出てくる。業務が広がった最初のきっかけは、低金利で利ざやが細ったという事情だけではなく、制度側の一文だったわけだ。だから「なぜコンサルに力を入れているのですか」と尋ねるより、どの年に何ができるようになったのかを先に押さえたほうが、面接の会話は噛み合う。各行の資料に並ぶ横文字が、制度のどの枠に対応しているかも見えてくる。

もう一点、制度の側には必ずブレーキが付いている。銀行は融資の判断を握っている相手に向かって別の商品を売る立場になるため、優越的地位の濫用が繰り返し論点になってきた。2021年の改正でも、本体で登録型人材派遣ができるようになった一方、この点への注意は明示されている。取引先に断りにくい提案をしないという内部の線引きが、現場では研修や稟議の形で存在する。面接で「提案の仕事をやりたい」と言うなら、売る自由と立場の重さが同居している業種だという理解まで届いていたい。

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2021年の改正で本体に加わった「地域活性化等支援業務」

転機になったのは改正銀行法である。2021年5月26日に公布され、同年11月22日に施行された。ここで銀行本体の業務として加わったのが「地域活性化等支援業務」で、政令には具体的な中身が並んでいる。コンサルティングとビジネスマッチング、登録型人材派遣、システム関連業務、広告宣伝やデータ分析といった仕事だ。注意したいのは、これが「何でもできるようになった」話ではない点である。銀行本体の付随業務は引き続き限定列挙で、列挙に載っていないものは本体では扱えない。全国地方銀行協会は改正後も、残る業務範囲規制の撤廃や緩和を政府に求め続けている。就活生の側から見ると、この一覧は志望動機の材料そのものだ。自分が関心を持つ仕事が列挙のどこに当たるのか、あるいは当たらないのかで、配属される先が本体か関連会社かが変わってくる。

時期 制度の動き 就活で効いてくる点
2018年 監督指針に人材紹介業務を付随業務として例示 有料職業紹介の許可を取る銀行が増えはじめる
2021年5月26日 改正銀行法の公布 法律としての枠がここで確定する
2021年11月22日 同法の施行 地域活性化等支援業務が本体で実施可能になる
施行後 銀行業高度化等会社の外縁が拡大 関連会社側の求人や出向が広がる

本体でできることと、子会社でなければできないこと

同じ改正で、銀行グループ側の枠も動いた。銀行業高度化等会社の業務の外縁が広がり、銀行の子会社や兄弟会社で幅広い仕事を営めるようになっている。ただしこちらは金融庁の認可が前提で、届け出て終わりという作りではない。認可基準自体は緩められ、非上場の地域活性化事業会社に対しては議決権を100パーセント持つ出資も可能になった。地域の企業を支える側に、銀行が資本ごと入っていける道が開いたということである。就活の実務に落とすと、見るべきは本体の採用ページだけではない。地域商社、人材会社、システム会社といった名前で、同じグループの別法人が募集を出していることがある。本体採用でも数年目に出向で移るケースがあり、どちらの入口から入るのかで最初の数年の仕事はかなり違う。説明会では法人名と、そこがグループのどの位置にあるのかを確かめておきたい。

認可という言葉の重さも押さえておきたい。届け出で済む業務と、審査を経て初めて開ける業務では、立ち上がりの速さが違う。だから各行の中期経営計画には「認可取得」や「子会社設立」が工程として書き込まれる。学生が読むべきはその工程表で、どの年度に何を立てる予定なのかが、数年後の自分の配属可能性とほぼ重なる。

人の仲介という、学生にいちばん見えやすい仕事

広がった業務のうち、学生の目に触れやすいのは人材の仲介だろう。取引先が後継者や管理職を探していて、銀行が候補者を連れてくる。厚生労働省の資料では、職業紹介の許可を得た地域銀行は本体ベースで67行とされている(2022年8月1日時点)。公的な仕組みも併走していて、地域経済活性化支援機構が運営する経営人材のマッチング事業は、累計の成約が2024年3月末の72件から同年7月末に100件へ届き、2025年2月末には167件まで伸びた。絶対数としてはまだ小さい。ここを「地銀の主力事業」と読むと説明会で足をすくわれる。むしろ、融資の判断材料として積み上げてきた取引先の情報が、人を紹介する仕事にそのまま使われている点が本質に近い。地方就職と若手|地銀61行と競争率4.6倍の二つの入口も合わせて読むと、入口の数え方が整理しやすい。

派遣の形も加わった。改正後は銀行本体で登録型人材派遣を扱えるため、紹介して終わりではなく、人を送り続ける関わり方も選べる。地域に専門人材が薄い土地では、一人を常勤で採る体力がない企業に対して、この形のほうが現実的なことがある。紹介と派遣では、銀行の中で動く部署も必要な資格も変わるので、志望の段階で分けて考えておくと話が具体化する。

95行という分母を、どう割って見るか

最後に規模の話をしておく。全国銀行協会の統計では、地方銀行が61行、第二地方銀行協会に加盟する地方銀行が34行で、合わせて95行という数え方になる(2026年8月時点)。この95を一つの業界として均したまま志望先を選ぶと、志望動機が抽象的になりやすい。人材紹介に本体で踏み込んでいる行と、関連会社に寄せている行がある。地域活性化事業会社への出資を実際に積んでいる行と、構想段階の行もある。制度は全行に同じだけ開いているのに、使い方は揃っていないからだ。開示資料で役務取引等の収益と、その内訳の説明の厚みを見比べると差が出る。地方銀行のコンサル化とは?と地方銀行の現状とは?で業界側の整理を押さえてから、各行の資料に入るのが早い。地域で働く選択肢を広く見たい人はFLASPOの情報も入口になる。

よくある質問

コンサル化が進むと、融資の仕事は減るのですか

減るという書き方は正確ではない。地域活性化等支援業務は付随業務として足されたもので、本業の貸出が置き換わる建て付けではない。取引先の課題を掘るための材料が融資審査で積み上がるため、むしろ両方を行き来する働き方に近づく。

面接で制度の話をすると、知識自慢に見えませんか

年号を並べるだけなら、そう受け取られることはある。公布と施行の日付を暗記するのではなく、列挙された業務のうち自分が関わりたいものを一つ選び、その仕事が本体と関連会社のどちらで動くのかまで言えると、話の筋が通る。

第二地方銀行と地方銀行で、できる業務は違うのですか

銀行法の枠は同じで、加盟している協会が違うだけである。差が出るのは制度ではなく体力と方針のほうだ。認可を取って子会社を立てるには資本と人が要るので、結果として取り組みの幅は行ごとに分かれる。

この分野の一次情報はどこを見ればよいですか

法律案そのものは金融庁の国会提出法律案のページで確認できる。行数や預貸金の統計は全国銀行協会の統計、業界側の要望は全国地方銀行協会に当たるのが近道になる。

地方公務員と併願する場合、見るべき時期は違いますか

採用の暦が別なので、重なるのは筆記の準備くらいである。銀行側は制度が開いた業務をどう使うかという各行の差を読む作業が要り、自治体側は所属する部署の幅を読む作業が要る。調べる対象が違うぶん、どちらを主にするかは早めに決めたほうが負荷が下がる。


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