「次いつ行く」で始まる会話が成り立つ年齢
休憩室や教室で「次いつ行く」という短いやり取りが交わされる。行き先は会場で、日付はもう決まっている。残っているのは誰と行くかと、交通費をどこから出すかだけだ。この会話が前提を省いたまま通じる場面は、年齢の下の方に偏って現れる。
推し活という言い方は、応援する相手を自分で選び、その相手に関わる行動へ時間とお金を割り当てることを指して使われる。相手は演者でも作品の登場人物でも球団でもよい。ここでは「若い世代にとりわけ多い」と言われてきた部分が、公的な調査でどう出ているかを確かめる。
手がかりの一つは文化庁の文化に関する世論調査である。18歳以上の2万4,996人に尋ねた調査で、この1年間に外出を伴う形で文化芸術を鑑賞した人の割合は45.3%だった。令和4年度の52.2%からは下がっている。ところが18〜19歳だけを取り出すと56.9%、20代でも49.0%で、全体より上に出る。
同じ調査は、演奏や出演、創作、祭への参加といった鑑賞以外の活動についても尋ねている。全体では13.3%だが、18〜19歳は27.1%、20代は20.8%。見る側に回るだけでなく、手を動かす側に立っている人の割合も、若い層では全体の1.5倍から2倍になる。
映像との距離の取り方そのものはアニメと若者の距離に別の角度から整理してある。
多いと言っても、項目ごとに差の出方が違う
若い世代に多いという言い方は、何が多いのかを分けないと使えない。見た経験、作った経験、連絡の取り方、集まる場所の有無。この四つを並べると、年齢で大きく開くところと、ほとんど開かないところが分かれる。
| 項目 | 若い世代 | 比較する世代 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 外出を伴う文化芸術の鑑賞 | 56.9%(18〜19歳)/49.0%(20代) | 45.3%(全体) | 文化庁の世論調査 |
| 鑑賞以外の活動・支援の経験 | 27.1%(18〜19歳)/20.8%(20代) | 13.3%(全体) | 文化庁の世論調査 |
| 交流サイトを「ほぼ毎日」使う | 81%(39歳以下の女性)/63%(同男性) | 41%(65歳以上の女性)/37%(同男性) | 内閣府の満足度調査 |
| サードプレイスが「ある」 | 53%(39歳以下の男性)/50%(同女性) | 43%(40〜64歳の男性)/45%(同女性) | 内閣府の満足度調査 |
差が大きいのは上の二段で、鑑賞も活動も若い層に寄っている。対して下の二段、とくに集まる場所があるかどうかは、39歳以下と65歳以上でほとんど変わらない。つまり「場所を持っている割合」は世代の問題ではなく、持っている場所の種類が違うだけだと読める。
下二段の出典は内閣府の満足度・生活の質に関する調査報告書2025で、2025年3月に1万633人へ行ったインターネット調査である。推し活だけを切り出して測った公的統計は今のところないため、文化芸術との関わりや居場所という広い器で見ている点には注意がいる。
時間の工面が、他の世代と最も違うところ
告知が流れた瞬間に動かないと席が残らない。先行の受付は数日で閉まり、配信は始まる時刻が決まっている。推し活の時間割は、自分の都合ではなく相手の都合で先に埋まる。だから若い層の強みは、金額より速さの側にある。
内閣府の調査では、交流サイトを「ほぼ毎日」使うと答えた人が39歳以下の女性で81%、男性で63%だった。65歳以上では女性41%、男性37%にとどまる。情報が流れてくる経路に常時つながっている人の比率が、そのまま若い層に偏っている。
同じ調査は、交流サイトを使っている人のほうが社会とのつながりの満足度が高い傾向を示す一方で、使用頻度と満足度の間に明確な関係はなかったとも報告している。見ている時間を増やせば満たされるわけではない。利用時間そのものの重さについてはメンタルとSNSで扱っている。
時間を確保する側から見ると、やることは単純だ。先に枠を取り、他の予定をその後に置く。学業や仕事の都合で枠が動かせない日は、現地ではなく記録や配信に振り替える。推し活の形を一つに決めてしまうと、どれかが崩れたときに全部が止まる。
お金の出口で、相談が増えた時期がある
若い層ほど鑑賞の機会が多いということは、入場券を買う回数も多いということだ。そこに付いて回るのが転売の問題である。国民生活センターは2022年8月4日に、転売入場券の購入トラブルに関する注意喚起を出している。
同センターがまとめた月別の相談件数は、2021年4月の35件から増え続け、同年11月に94件、2022年3月に123件、同年4月に180件、同年5月には204件に達した。1年1か月で約6倍である。相談者は20代の若い世代が中心だと記されている。
助言は三点に絞られている。入場券は公式の販売サイトから買うこと。転売を仲介するサイトを使うなら、その券の転売が禁止されていないかを先に確かめること。不安があれば最寄りの消費生活センターか、全国共通の消費者ホットラインである188番に相談すること。
急かされている場面で判断が鈍るのは、年齢とは関係がない。ただ、決済の手段を自分で持ち始めた時期と、現地に行く回数が増える時期が重なるため、若い層では失敗の機会が集中しやすい。支出の記録の付け方そのものは大学生のお金管理と節約に手順がある。
残っていくのは一緒に楽しめる相手の数
応援を続けた先に何が残るのかを、内閣府の調査は間接的に示している。社会とのつながりの満足度に大きく影響する項目を選んでもらうと、どの世代でも「困ったときに頼りになる友人・知人がいるか」と「一緒に楽しめる仲間がいるか」が上位に並んだ。推し活はこの二つ目を作る経路になる。
同じ報告書は、家庭と職場・学校以外で自由に交流できる場所をサードプレイスと呼び、その有無を尋ねている。選択肢には喫茶店や図書館と並んで「ライブ会場・観戦場」が入っている。持っていると答えた人は半数近くで、39歳以下では男性53%、女性50%だった。
差が出るのはその先だ。サードプレイスがある人の「生活の楽しさ・面白さ」の満足度は、39歳以下の男性で6.14、ない人では5.14。女性では6.21と5.35である。1点前後の開きが、場所を持っているかどうかで付いている。
応援する相手は人でなくてもよい。町や催しを対象に選ぶ形がどう成り立つかは、FLASPOが集めている若者の活動事例を見ると分かりやすい。相手が地域であっても、通う場所ができるという点は変わらない。
交流サイトで情報を追う形にも弱点がある。流れてくるのは話題になっているものに偏るため、同じ相手を追う人の数が多い順に目に入る。関心の幅を保つには、告知を受け取る経路と、何を見るかを決める経路を分けておくほうがよい。
よくある質問
推し活は若いうちだけのものか。そうではない。文化庁の調査で鑑賞率が高いのは18〜19歳だが、集まる場所を持っている割合は65歳以上でも男性44%、女性49%あり、39歳以下とほとんど差がない。形が変わるだけで、続けられる。
学業や仕事と両立できるか。枠を先に取れるなら両立する。崩れるのは、現地に行く形だけを前提にしたときだ。配信、物を集める、記録を残すといった形に振り替える余地を残しておくと、忙しい時期をまたげる。
費用をどこまでかけてよいか。上限の目安を公的統計が示しているわけではない。ただ、転売入場券の相談が1年1か月で35件から204件へ増えた経緯を見ると、急いで買う場面が増えるほど危険も増える。先に月あたりの枠を決めておくのが現実的だ。
周りに同じ相手を応援する人がいないと続かないか。続く。文化庁の調査では鑑賞したジャンルが映画19.0%、歴史的な建物や遺跡15.1%、美術13.9%と分かれており、関心はもともとばらける。仲間は相手ごとではなく、集まる場所ごとに見つかる。
応援する側から作る側に回る人はどのくらいいるか。18〜19歳では27.1%、20代では20.8%が、鑑賞以外の活動や支援を経験している。全体の13.3%に比べれば多く、珍しい移り方ではない。
家族に理解されないときはどうするか。金額と時間を先に見せるのが早い。内閣府の調査で、集まる場所がある人の「生活の楽しさ・面白さ」の満足度が1点前後高く出ていることも、説明の材料になる。隠すほど話が通らなくなる。
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