指定は感覚ではなく数値で決まる
自分の住んでいる町が過疎地域かどうかは、役所の印象や人口の少なさで決まるものではありません。国が法律と政令で数値の線を引き、その線を越えた市町村を公示する仕組みになっています。
根拠は令和3年4月に施行された過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法です。判定に使われるのは大きく二つで、一定期間にどれだけ人口が減ったかという人口要件と、自前でどれだけ財源を確保できているかという財政力要件です。両方に当てはまって初めて指定されます(出典:総務省 過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法の概要)。
数値のもとになるのは国勢調査と、地方財政の統計です。どちらも国が定期的に取っているものなので、自治体が自己申告で条件をつくることはできません。
ここで押さえておきたいのは、人口が少ないことと人口が減ったことは別だという点です。もともと小さな町でも減少幅が緩やかなら要件には当たりませんし、人口規模が大きくても長期の減り方が急なら対象になります。
人口要件:長期と中期という二つの物差し
減り方を測る期間は一つではありません。40年という長い物差しと、25年という中くらいの物差しを併用し、いずれかに当てはまれば人口要件を満たす形になっています。
令和3年の法律では、長期は昭和50年から平成27年まで、中期は平成2年から平成27年までが基準とされました。さらに、単純な減少率だけでなく、高齢者と若年者の割合を組み合わせた条件も用意されています。
| 物差し | 期間 | 基準となる値 |
|---|---|---|
| 長期の人口減少率 | 昭和50年〜平成27年(40年間) | 28%以上。財政力指数が0.40以下の場合は23%以上 |
| 長期+高齢者比率 | 同上 | 減少率23%以上、かつ65歳以上が35%以上 |
| 長期+若年者比率 | 同上 | 減少率23%以上、かつ15歳以上30歳未満が11%以下 |
| 中期の人口減少率 | 平成2年〜平成27年(25年間) | 21%以上 |
高齢者の割合と若年者の割合が条件に入っているのは、総数の減り方が同じでも中身が違うからです。減った分を子育て世代が埋めている町と、残ったのが高齢者ばかりの町では、10年後の姿が大きく変わります。
一方で、同じ25年間に人口が10%以上増えた市町村は対象から外れます。途中で減っていても勢いを取り戻した地域までは支援しない、という線引きです。
財政力要件:自前でまかなえる割合を見る
人口の条件を満たしても、財源に余裕があれば指定されません。ここで使われるのが財政力指数です。標準的に必要な経費に対して、自前の税収などでどれだけ賄えるかを示す数値で、1.0に近いほど自立しています。
令和3年の法律では、平成29年度から令和元年度までの財政力指数の平均が0.51以下であること、あわせて公営競技収益が40億円以下であることが条件とされました(出典:総務省 過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法 概要)。
0.51という値は全国の市町村の平均にあたります。つまり平均より財政基盤が弱いことが条件です。競輪や競艇などの収益が大きい自治体を除いているのは、そこに独自の財源があるためです。
なお、後述する一部過疎の判定では、この基準が市の平均である0.64以下に置き換わります。合併して市になった自治体を同じ物差しで測ると実態に合わないためで、区分ごとに線が引き直されている点は見落としやすいところです。
全部過疎・一部過疎・みなし過疎という三つの入り方
指定という言葉から市町村まるごとを思い浮かべがちですが、実際には三つの入り方があります。
一つ目が全部過疎で、市町村そのものが人口要件と財政力要件を満たす場合です。二つ目が一部過疎で、平成11年4月以降の市町村合併によってできた自治体のうち、合併前の旧市町村の区域が要件を満たす場合に、その区域だけが対象になります。市の中心部は対象外でも、周辺の旧町村部だけが過疎地域という状態はここから生まれます。
三つ目がみなし過疎です。旧法で全部過疎やみなし過疎だった市町村について、一部過疎にあたる区域の人口が3分の1以上、または面積が2分の1以上を占めるなどの条件を満たし、かつ財政力指数が0.51以下であれば、市町村全体を過疎地域とみなす扱いでした。
こうした区域を持つ自治体をまとめて過疎関係市町村と呼びます。総務省の公示によれば、令和4年4月1日時点で885団体にのぼり、市が311、町が449、村が125という内訳です。過疎地域そのものの位置づけは過疎地域とは?指定基準・移住のメリット・仕事・補助金にも整理があります。
基準は一度決めたら終わりではない
要件の数値は法律と政令に書かれていますが、当てはめる材料は5年ごとの国勢調査で更新されます。新しい調査結果が出ると追加の公示が行われ、対象になる区域が増えることがあります。令和2年の国勢調査にもとづく追加もこの流れで行われました。
逆の動きもあります。法律が新しくなるたびに要件は見直されるため、これまで指定されていた市町村が外れることがあります。急に支援がなくなると運営が立ち行かなくなるため、一定の期間だけ従来の扱いを続ける経過措置が置かれてきました。
自分の地元が該当するかを調べるときは、次の順番が確実です。まず総務省の過疎対策のページで最新の市町村等一覧と公示を見る。次に、市町村単位なのか旧市町村の区域単位なのかを確かめる。最後に都道府県の地域振興担当課のページで、区域の詳細を確認します。
数値の適用には細かい例外があるため、実務では政令と公示の本文に当たるのが原則です。進学や就職で地方に関わることを考えている人は、指定の有無で使える支援制度が変わる点だけでも押さえておくと役に立ちます。地域の募集や活動を探すならFLASPOが入口になります。
よくある質問(FAQ)
Q. 人口が少なければ過疎地域に指定されるのですか?
A. されません。判定に使うのは人口の規模ではなく、決められた期間にどれだけ減ったかという減少率と、高齢者や若年者の割合、そして財政力です。人口の少ない町でも減り方が緩やかなら対象外になります。
Q. 財政力指数はどこで調べられますか?
A. 総務省が地方公共団体の主要財政指標一覧を公表しており、市町村ごとの数値を確認できます。単年度ではなく複数年度の平均が使われる点に注意してください。
Q. 一部過疎とみなし過疎はどう違いますか?
A. 一部過疎は合併前の旧市町村の区域だけが対象になる形です。みなし過疎は、その区域が人口や面積で一定の割合を占める場合に、市町村全体を過疎地域として扱う形でした。対象が区域か全体かという違いになります。
Q. 指定から外れるとどうなりますか?
A. 過疎対策事業債や税制上の優遇といった支援の裏づけが弱まります。急激な変化を避けるため経過措置が設けられるのが通例で、一定期間は従来に近い扱いが続きます。
Q. 基準はいつ見直されますか?
A. 判定の材料となる国勢調査は5年ごとに行われ、その結果を受けて追加の公示が出ます。要件そのものは、法律が新しくなる時期に合わせて見直されてきました。
Q. 指定されている地域の人口はどのくらい減っているのですか?
A. 長期の物差しで23%から28%以上という水準が条件になっているため、40年で人口が4分の1前後、あるいはそれ以上失われた計算になります。全国的な傾向は地方の人口減少はどのくらい深刻?データ・成功事例・若者の関係で確認できます。
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