続かない節約は、毎回その場で決めている
レジの前で「今日はやめておこう」と言い聞かせる。その小さな判断を1日に何度も繰り返していると、2週間ほどで息が切れて元の買い方に戻る。節約が途切れた場面を思い出すと、たいていこの形をしている。
判断の回数を減らすには、先に仕組みを置くほかない。使える額の枠や引き落としの経路を決めておけば、店先で考える必要がなくなる。お金の管理という言葉は、意志を強くする訓練のように響くが、実際にやるのは意志を使う回数を削る作業である。
若い世代は知識の面でも不利な位置にいる。金融経済教育推進機構(J-FLEC)が2026年3月27日に公表した金融リテラシー調査2025では、正誤問題25問の正答率が18〜29歳で39.4パーセント、全体では53.8パーセントだった。70代の66.2パーセントとの差は27ポイント近い。
分野ごとに見ると弱点の位置がはっきりする。家計管理の正答率は46.8パーセントで、前回の50.7パーセントから下がった。ローン・クレジットも48.2パーセントで、どちらも支払い方法そのものに関わる領域だ。知識でねじ伏せるより、仕組みで迂回したほうが早い部分である。
知識の差は、支払いと備えの差になって表に出る
知らないことの不利は、試験の点数としてではなく生活の場面に現れる。同じ調査は回答者3万人を正答率で5つの階層に分け、階層ごとの行動を並べて集計している。
下の表は、最も点数が低い第1階層と最も高い第5階層、そして全体を比べたものだ。
| 行動・考え方の項目 | 低リテラシー層(0〜20点・5,923人) | 全体(30,000人) | 高リテラシー層(81〜100点・6,820人) |
|---|---|---|---|
| 請求書の期日に遅れずに支払いをする | 59.8% | 83.4% | 95.7% |
| 緊急時に備えた資金を確保している | 23.2% | 54.9% | 81.5% |
| 借入れのときに他の商品と比較しない | 54.3% | 44.7% | 34.5% |
| 老後の生活費の資金計画がない | 70.5% | 59.9% | 49.2% |
| 金融・経済情報を月1回もみていない | 66.0% | 41.3% | 16.9% |
気づいてほしいのは、どの行も知識を問う質問ではないことである。期日に支払うことも、少し手元に残しておくことも、覚えているかどうかではなく段取りの話だ。それでも階層の間で36ポイント近く開いている。
ここから読み取れる知識の役目は、正解を暗記することではなく、段取りを思いつけることにある。延滞したときに何が起きるかを知っていれば、引き落とし日を給与の振込日より後ろに寄せるという発想が出る。知らなければ発想そのものが出ない。
学生の家計は収入の入り口が複数あるので、この段取りが効きやすい。日本学生支援機構の令和6年度学生生活調査では、大学学部昼間部の年間収入203万円のうち、家庭からの支援が50.7パーセント、アルバイト収入が25.0パーセント、奨学金が21.6パーセントを占めていた。入り口が3つに分かれているなら、出口にも線を引いておきたい。
口座とカードは、金額ではなく役割で分ける
最初に手を付けるのは口座である。1つの口座にすべてを入れてすべてを出していると、残高が減った理由を後から特定できない。家賃が引かれたのか、週末に使いすぎたのかが同じ数字に混ざる。
役割で3つに割ると見通しが立つ。入ってくるお金を受け取る口座、家賃や通信費のように毎月決まった額が出ていく口座、日々の買い物に使う口座の3つだ。貯める場所を別に設けるなら4つめになる。
毎月決まった支払い用の口座には、月初に合計額だけを移しておく。残高が足りていればその月の固定費はもう考えなくてよく、頭を使う対象が変動費だけに絞られる。判断の回数を削るというのは、具体的にはこういう作業である。
カードも同じ発想で整理したい。引き落とし先の違うカードを何枚も持つと、どの支払いがどこから出たのかを追えなくなる。先の調査で、自分のお金の運用や管理について十分注意していると答えた人は24.6パーセントにとどまっていた。注意を向ける先が多すぎることも理由のひとつだろう。
記録の付け方から入りたい場合は、大学生の家計簿と節約に5費目で続ける手順を書いている。
上限は、気持ちではなく設定として置く
使いすぎを止める手段として、我慢はいちばん当てにならない。疲れた日や誘われた日に真っ先に外れるからだ。
先に置くのは金額の枠である。カードの利用枠は申し込みで下げられるし、残高を自分で入れる決済手段なら入れた額がそのまま上限になる。買い物のたびに考えるのをやめて、月初に1回だけ決める形へ移す。
この種の設定が効くのは、出ていく額が見えにくいからだ。金融リテラシー調査では、1か月の収入を把握している人が86.1パーセントいる一方、支出を把握している人は72.2パーセントだった。入る額は通知が来るので分かるが、出る額は自分で数えない限り分からない。
枠の高さは厳しくしすぎないほうがよい。何かを買う前に余裕があるかを注意深く考えると答えた人は37.0パーセントで、残りはその都度考えていない。考えない前提で、守れる高さに置くのが続けるコツである。
最初の1か月で何から着手するかは、大学生の節約の始め方で週ごとに分けて整理した。
学ぶ機会が制度として多いのは、学生の時期だけ
仕組みを組むには最低限の知識が要る。幸いなことに、その知識を受け取る機会は学生のうちが比較的多い。
金融リテラシー調査で、学校や勤務先などで金融経済教育を受けたと認識している人は全体の8.7パーセントだった。これが18〜29歳では13.5パーセント、18〜24歳の学生では16.0パーセントとなり、年齢が下がるほど高い。学校での授業や講義が増えてきた結果である。
効果も数字に出ている。金融経済教育を受けたと答えた学生の正答率は57.7パーセント、受けていない学生は40.4パーセントで、17ポイント余りの差がついた。学校で金融経済教育を行うべきだと答えた人は67.5パーセントに達している。
急ぐ理由もある。金融トラブルを経験した人の割合は18〜29歳で8.2パーセント、30〜59歳で7.3パーセント、60〜79歳で5.5パーセントだった。知識が追いつかない時期に、新しい契約が集中してくる。
FLASPOに寄せられる相談でも、支出を削ろうとする前に契約の中身を一度も見ていない例が目立つ。どこから削るかの全体像は大学生の節約とはにまとめてある。
よくある質問
口座を分けると管理が面倒になりませんか。増えるのは月初の振替1回だけで、日々の手間はむしろ減る。固定費の口座に合計額を置いた時点でその月の支払いは確定するため、残高を見て不安になる回数が落ちる。
学生でもクレジットカードの利用枠は下げられますか。カード会社の会員ページや電話で引き下げを申し出られる場合が多い。手続きの可否と方法は会社ごとに違うので、契約時の書面か会員ページの案内で確かめてほしい。
緊急時に備える資金はいくら必要ですか。一律の正解はないが、学生生活調査の年間収入203万円を12で割ると月約16万9千円になる。この1か月分前後を手を付けない場所に置いておくと、不意の出費で借入れに走らずに済む。
キャッシュレスにすると使いすぎませんか。履歴が自動で残るので把握はしやすくなる。問題になるのは手段の数で、2つか3つに絞っておけば枠の設定と残高の確認が追いつく。増やしたまま放置するほうが危ない。
お金の勉強はどこから始めればよいですか。公的機関の資料から入るのが安い。金融経済教育推進機構は調査のほかに学生向けの資料も公開しており、商品の売り込みを伴わない点で学生の最初の一歩に向いている。
出典
金融経済教育推進機構(J-FLEC)「金融リテラシー調査2025年」(2026年3月27日公表、全国の18〜79歳の個人30,000人、2025年9月26日〜10月17日のインターネット・モニター調査)https://www.j-flec.go.jp/wpimages/uploads/25literacy.pdf(図表6、図表9、図表11、図表35、図表43〜45ほか)
日本学生支援機構「令和6年度学生生活調査」(令和8年3月31日公表)https://www.jasso.go.jp/statistics/gakusei_chosa/2024.html(大学学部昼間部の収入額と内訳)
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