大学生の節約とライフプラン|奨学金の返還額と初任給から逆算する

大学生の節約とライフプラン|奨学金の返還額と初任給から逆算する

学生時代の支出が、卒業後の固定費を先に決めている

在学中の節約は、その月の残高を増やすための作業だと思われている。ところが学費や生活費の不足を借入れで埋めた場合、その額は卒業後15年から20年にわたる毎月の支払いへ姿を変える。今の数万円が、将来の固定費として据え置かれるわけだ。

借りている人は少なくない。日本学生支援機構の令和6年度学生生活調査では、何らかの奨学金を受給している大学学部昼間部の学生は51.1パーセントで、前回より3.9ポイント下がったものの半数を超えている。機構の給付・貸与に限っても、令和6年度の支援実績ベースで31.7パーセントだった。

金額の重みも小さくない。同じ調査の年間収入203万円のうち、奨学金は21.6パーセント、金額では43万7,500円を占める。4年で170万円を超える規模になり、その多くが返す前提のお金である。

だからこそ、在学中に効く節約と効かない節約の線が引ける。食費を月に千円削るより、借入月額を1万円下げるほうが卒業後に残る差は大きい。ライフプランという言葉を使うなら、まずこの一点を見ておきたい。

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返す額は、借りた総額から機械的に決まる

返還の条件は交渉で決まるものではない。日本学生支援機構は定額返還方式の返還例を公開しており、貸与総額が分かれば月々の割賦金と回数がほぼ一意に定まる形になっている。

無利子の第一種で見ると、国立・公立の自宅通学で月4万5千円を48か月借りた場合、貸与総額は216万円で、返還は月12,857円の168回、年数にして14年だ。私立の自宅外で月6万4千円なら総額307万2千円、月14,222円の216回で18年になる。

ここで効いているのは月額の差ではなく、総額の差である。月額が1万9千円増えただけで返還期間が4年伸びる。貸与の申し込み欄で月額を1段上げる操作は、卒業後の時間を数年単位で動かしている。

逆の方向にも動く。同じ第一種で月3万円を48か月なら総額144万円、返還は月9,230円の156回で13年に収まる。在学中に生活費を詰めて借入月額を下げられれば、返す期間と月額の両方が同時に軽くなる。

生活費の内訳を先に押さえておくと、どこまで下げられるかの見当がつく。月単位の構成は大学生の一人暮らしの月生活費に整理がある。

利息がつくと、同じ240万円が何円になるか

有利子の第二種では、返す総額が利率に応じて動く。機構の返還例は年0.5パーセントから3パーセントまでの4通りで試算を載せており、幅の感覚をつかむのに使える。

貸与月額(4年・貸与総額) 返還回数 年0.5%のとき 返還総額/月額 年3%のとき 返還総額/月額
3万円(144万円) 156回(13年) 1,491,061円/9,557円 1,761,917円/11,293円
5万円(240万円) 180回(15年) 2,497,419円/13,874円 3,018,568円/16,769円
8万円(384万円) 240回(20年) 4,045,295円/16,855円 5,167,586円/21,531円
10万円(480万円) 240回(20年) 5,056,654円/21,069円 6,459,510円/26,914円
12万円(576万円) 240回(20年) 6,068,011円/25,282円 7,751,445円/32,297円

月5万円を4年借りた行を見ると、貸与総額240万円に対して返還総額は249万7千円から301万8千円まで動く。差は52万円で、月額では2,895円の違いになる。利率は借りる本人が選べないので、ここは運の要素が入る部分だ。

選べるのは月額のほうである。月3万円と月12万円を同じ年3パーセントで比べると、返還総額は176万円と775万円、月額は11,293円と32,297円になる。生活が成り立つなら、低い行を選ぶほど卒業後の裁量は広がる。

回数の上限にも注意したい。表の月8万円以上はいずれも240回で、年数にすると20年だ。借入額を増やしても返還期間は20年で止まるため、超過分は月額の増加としてそのまま乗ってくる。

初任給と並べると、返還の重さが見える

月1万3千円という数字だけでは重いのか軽いのか判断できない。卒業後の収入と並べて初めて比率になる。

厚生労働省が2026年3月24日に公表した令和7年賃金構造基本統計調査では、新規学卒者の賃金が男女計で大学卒26万2,300円だった。前年比は5.6パーセント増で、高校卒20万7,300円、大学院卒29万9,000円と並んでいる。男性は26万4,900円、女性は25万9,700円である。

この26万2,300円に対して、第二種で月5万円を4年借りた場合の返還月額13,874円は5.3パーセントにあたる。年3パーセントの16,769円なら6.4パーセントだ。月12万円を借りた場合の32,297円では12.3パーセントに達する。

ここで示した額は税や社会保険料を引く前の数字なので、手元に残る額に対する比率はこれより高くなる。家賃を払い、通勤定期を買い、そのうえで1割前後が返還に向かう形を想像しておくと、在学中の判断が変わってくる。

賃金が上がっている局面であることは追い風だ。ただし返還額は借りた時点で固定されるので、賃金の伸びを待つより借入額を抑えるほうが確実性は高い。

在学中に動かせるのは、借りる額と借りる年数だけ

返還条件のうち、卒業後に変えられる部分は限られている。利率は選べず、回数は総額で決まる。手元にあるのは借りる額と借りる期間の2つだけだ。

借入月額は毎年の手続きで見直せる場合がある。1年目に高めの月額で申し込んだまま4年間続けると総額が膨らむので、生活が回り始めた時点で下げられるか確認したい。下げた分はそのまま返還総額から消える。

収入側を動かす選択もある。学生生活調査では収入に占めるアルバイト収入の割合が25.0パーセントまで上がり、前回から5.9ポイント増えた。借入を減らす原資として働くなら、時間の使い方に見合う時給かどうかは見ておきたい。

産業や地域による時給の開きはアルバイトの時給相場で確かめられる。削る側の全体像は大学生の節約とはにある。

FLASPOでも、卒業後の返還額を在学中に一度も計算していないという声をよく聞く。機構の返還例は公開されているので、申し込む前に自分の行を指で押さえておくだけで判断の質が変わる。

よくある質問

返還はいつから始まりますか。機構の仕組みでは貸与が終わった後に据置期間を経て開始する形になっている。開始月と初回の引き落とし日は貸与終了時に通知されるので、就職後の家計を組むときはその月を起点に置いてほしい。

繰り上げて返すと得になりますか。有利子の第二種では、繰り上げた分の期間に対応する利息が発生しなくなるため、返還総額は下がる。無利子の第一種では総額が変わらないので、手元の資金を残す判断と比べて決めることになる。

第一種と第二種はどちらを先に選ぶべきですか。利息がつかない第一種のほうが総額は軽い。ただし成績や家計の基準があるため希望どおりに決まるとは限らず、併用した場合は2つの返還が並行して始まる点も計算に入れたい。

返せなくなったときの手段はありますか。機構には返還期限の猶予や月額を減らす制度が用意されている。延滞したまま放置すると不利になるので、支払いが難しくなった段階で先に相談するのが順序として正しい。

借入を全部やめるのが最善ですか。そうとは言えない。学業に使う時間をアルバイトで埋めすぎると、卒業や成績のほうに跳ね返る。返還月額が初任給の1割を超えそうかどうかを目安にして、額を調整する考え方が現実的だ。

出典

日本学生支援機構「大学・返還例(定額返還方式)」https://www.jasso.go.jp/shogakukin/henkan/houhou/henkan_hoshiki/kappu/sample/daigaku.html(第一種の表は平成24年度新規入学者に標準修業年限で貸与した場合、第二種は年0.5%・1%・2%・3%による試算)

日本学生支援機構「令和6年度学生生活調査」(令和8年3月31日公表)https://www.jasso.go.jp/statistics/gakusei_chosa/2024.html(奨学金の受給状況、収入額と内訳)

厚生労働省「令和7(2025)年賃金構造基本統計調査の概況」(2026年3月24日公表)https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/dl/14.pdf(第10表 新規学卒者の性、学歴別賃金及び対前年増減率)


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