投稿を始める前に、誰の画面に出るのかを確かめる
地域の魅力を伝える担当を任されると、まずアカウントを作る話になりやすい。その前に見ておきたい数字がある。総務省情報通信政策研究所の令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書によれば、全年代での利用率はLINEが九十二・九パーセント、インスタグラムが五十四・八パーセント、エックスが四十四・七パーセント、ティックトックが三十六・七パーセントである。
動画共有では、ユーチューブが八十一・五パーセントで、十代から四十代では九十パーセントを超える。調査は十三歳から七十九歳の千八百人を対象に、令和七年十二月一日から七日までの一週間について聞いたもので、令和八年六月に公表された。前年度から対象年齢が広がっているため、古い年度の数字と並べるときは注意が必要になる。
全年代の平均だけを見ると、半分の人に届く媒体がいくつもあるように読める。ところが地域の発信で問題になるのは平均ではない。誰に届かせたいのかを決めた時点で、使える媒体の幅は一気に狭まる。
端末の側も同じ報告書に出ている。スマートフォンの利用率は全年代で九十五・九パーセントで、十代から六十代は九十パーセント超、七十代でも八十三・八パーセントまで上がった。見る道具はほぼ行き渡っている。だから届かないときの原因は、端末の有無ではなく、どの媒体を選んだかに寄る。
二十代で八十二・六パーセント、七十代で十五・八パーセント
年代別に並べ替えると、同じ媒体でも様子がまったく違う。インスタグラムは二十代で八十二・六パーセントに達する一方、七十代では十五・八パーセントにとどまる。ティックトックは十代の六十七・九パーセントが最も高く、七十代は十一・一パーセント。エックスも二十代の七十三・四パーセントに対し、七十代は十・八パーセントである。
| 年代 | LINE | X(旧Twitter) | TikTok | |
|---|---|---|---|---|
| 10代 | 96.4% | 69.3% | 56.4% | 67.9% |
| 20代 | 97.7% | 82.6% | 73.4% | 61.5% |
| 30代 | 97.9% | 76.6% | 67.7% | 44.7% |
| 40代 | 96.6% | 67.1% | 57.0% | 42.6% |
| 50代 | 95.6% | 54.4% | 40.2% | 32.2% |
| 60代 | 92.0% | 36.1% | 24.8% | 21.2% |
| 70代 | 77.8% | 15.8% | 10.8% | 11.1% |
例外はLINEで、七十代でも七十七・八パーセントが使っている。十代から六十代は九十パーセント超である。地域の中で連絡を回す用途なら、ここが唯一ほぼ全年代に通る経路になる。逆に、画像や短い動画で広く見せる媒体は、六十代以上にはほとんど届かない。
この偏りは、受け入れる側の年齢構成と重ねると意味を持つ。住民の半分以上が六十五歳以上という町は珍しくない。外に向けた発信が若い層に当たるのは好都合だが、同じ投稿で地域内の合意を作ろうとすると空振りする。地域の人口構成そのものについては過疎化と若者のUターンの記事で触れている。
訪問のきっかけは、三分の一が人のつながりだった
では、実際に地域へ足を運んだ人は何をきっかけにしたのか。国土交通省が令和七年六月二十七日に公表した地域との関わりについてのアンケートは、十八歳以上の居住者約一億二百七十五万人のうち、約二千二百六十三万人が特定の地域と継続的に関わっていると推計した。訪問する形が約千八百八十四万人、訪問しない形が約三百七十九万人である。
同じ調査の補足資料は、訪問することになったきっかけを複数回答で聞いている。最も多いのは「親族、友人・知人が住んでいる、住んでいた」で三十五・六パーセント。次が「観光・レジャーで訪れたことがある」の二十五・二パーセント、三番目が「かつて住んでいた、職場や学校に通っていたことがある」の十九・四パーセントだった。
上位三つはいずれも、投稿を見たことではなく、その人の来歴や人間関係である。有効回答は十一万八千九百六十三人、調査は令和五年九月から十月に行われた。規模の大きい調査でこの並びが出ているのだから、発信が入口になる割合は、少なくとも最初のきっかけとしては小さいと考えるのが筋である。
関わりの中身にも偏りがある。訪問する形を類型で見ると、最も多いのは趣味や消費で関わる型で、参加・交流型、直接寄与型が続く。年間の訪問日数は「二日から七日」が約四十九パーセントで最も多く、「一日以下」が約二十パーセント、「八日以上」が約三十一パーセントだった。年に数日という関わりが中心だと分かる。
足りないと答えられたのは、情報ではなかった
関わりを持ちたいと思っているのに持てていない人に、何が改善すれば動けるかを尋ねた結果もある。上位は「仕事やプライベートでの時間的な余裕の確保」が二十七・四パーセント、「移動や滞在に伴う金銭的な負担の軽減」が二十六・七パーセント、「地域へ行くための交通の利便性の改善」が二十六・四パーセントだった。
一方、「地域を紹介するホームページやSNS、オンラインコミュニティの存在」を挙げた人は六・六パーセントである。時間や費用の四分の一ほどしかない。関わりの手前で止まっている人の多くは、情報を知らないのではなく、休みと交通費と移動時間の制約に当たっている。
この順番は、予算の配分を考えるときに効く。発信を強化しても、宿や交通や日程の条件が変わらなければ、見る人が増えるところまでで止まる。逆に言えば、交通費の補助や滞在の受け皿を用意した地域が、その告知にSNSを使うのは筋が通っている。関わりの型ごとの整理は関係人口の現状の記事にまとめがある。
流動の向きも参考になる。訪問する形の人数は、三大都市圏を除く地域から同じ区分の地域への移動が約七百六十三万人で最も多く、首都圏の都市部からその他地域への移動が約二百九十三万人だった。都市から地方へという一方向の図より、地方から地方への行き来のほうが大きい。発信する相手を首都圏の若者だけに想定すると、この層を取りこぼす。
それでも発信が効く場所は、はっきりしている
同じ調査には、訪問せずに関わる人の中身も出ている。「SNS等で、自分の住んでいる地域以外の特定の地域の情報発信を行っている」と答えた人は一・三パーセントだった。ふるさと納税による応援が八・六パーセント、お盆や正月の帰省が十八・七パーセントと並ぶ中では、かなり細い経路である。
それを踏まえると、地域のSNSに期待できる役割は三つに絞られる。すでに縁のある人へ近況を届けること、来る前の人に日程と条件を正確に伝えること、そして関わった人の記録を残して次の人の判断材料にすることである。新しい人を呼び込む一本目の矢としては弱いが、縁を切らさない線としては安い。
学生が関わるなら、この三つ目に伸びしろがある。投稿の数を競うより、受け入れの条件や費用の実際を書き残す作業のほうが、年代を問わず読まれる資産になる。学生団体として媒体を選ぶ段の判断は学生団体に向くSNSの記事が扱っている。地域と関わる入口を比べたいときは、FLASPOのような場も候補になる。
よくある質問
地域の発信はどの媒体から始めるとよいのか。届かせたい相手の年代で決まる。地域内の連絡や高齢の住民まで通したいならLINE、外の若い層に見せたいならインスタグラムやティックトックに寄る。両方を一つのアカウントで兼ねようとすると、どちらにも刺さらない投稿になりやすい。
フォロワーが増えれば訪問も増えるのか。調査の並びはそうなっていない。訪問のきっかけの上位は縁故と過去の訪問で、発信の役割は知らせる段に偏っている。増えた数をそのまま成果として報告すると、次の年に説明が苦しくなる。
それならSNSに手間をかける意味はあるのか。ある。すでに関わった人へ継続して届ける手段としては、費用がほとんどかからない。帰省や寄附のように縁を土台にした関わりが多い以上、その縁を保つ道具として使うほうが実態に合っている。
数字はどこで確かめられるのか。媒体ごとの利用率は総務省情報通信政策研究所の報告書に、関わりのきっかけと改善点は国土交通省の公表資料と補足資料に載っている。どちらも調査時点と対象者が明記されているので、引用するときはそこまで写しておくとよい。
年代別の数字は毎年変わるのか。変わる。同じ報告書は、エックスとインスタグラム、ティックトックの利用率がいずれも増加したと書いている。対象年齢の変更もあったため、年度をまたいだ比較は注記を読んでから行う必要がある。
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