健康保険の種類は5つ|協会けんぽ・組合健保・共済・国保・後期高齢者

健康保険の種類は5つ|協会けんぽ・組合健保・共済・国保・後期高齢者

保険証の裏にある、3つの系統

転職や独立のときに「保険はどうなるのか」と戸惑うのは、制度が一本ではないからである。日本の公的医療保険は、勤め先を通じて入る被用者保険、市区町村を通じて入る国民健康保険、そして75歳以上が全員移る後期高齢者医療制度という3つの系統に分かれている。どこに属するかは年齢と働き方で決まり、自分で好きに選べる仕組みにはなっていない。

被用者保険はさらに3つに分かれる。中小企業の従業員が入る全国健康保険協会管掌健康保険、いわゆる協会けんぽ。大企業が単独または共同で設立する健康保険組合。そして公務員や私立学校の教職員が入る共済組合である。国民健康保険の側も、市区町村が運営する市町村国保と、医師や建設業などの同業者で組織する国民健康保険組合に分かれる。合わせて数えると、加入先の型は5つから6つになる。

系統が違っても、窓口で受けられる医療の中身は同じである。どの保険証を出しても同じ診療報酬で同じ治療が受けられ、医療機関を選ぶ自由も共通している。違うのは、誰が保険料を決め、誰がいくら負担し、公費がどれだけ入るかという財政の側である。

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5つの保険者を、同じ目盛りで並べる

制度の性格は、加入者の年齢と所得の分布に出る。厚生労働省の「医療保険に関する基礎資料」は、主な保険者を同じ項目で比べた表を載せている。令和5年度の数字で並べると、同じ公的医療保険と呼ぶのが不思議なほど中身が離れている。

区分 市町村国保 協会けんぽ 組合健保 共済組合 後期高齢者
保険者数 1,716 1 1,380 85 47
加入者数 2,309万人 3,954万人 2,803万人 979万人 1,978万人
加入者の平均年齢 54.0歳 38.9歳 36.1歳 35.3歳 82.7歳
65〜74歳の割合 43.8% 8.2% 3.6% 3.5% 1.3%
一人当たり医療費 41.7万円 21.0万円 19.3万円 20.0万円 96.4万円
一人当たり平均所得 99万円 182万円 253万円 244万円 94万円
一人当たり平均保険料 9.3万円 13.0万円 14.4万円 14.8万円 7.9万円
保険料負担率 9.3% 7.2% 5.7% 6.1% 8.4%
公費負担 給付費等の50% 給付費等の16.4% 一部補助 なし 給付費等の約50%
厚生労働省「医療保険に関する基礎資料(令和5年度の医療費等の状況)」参考7より。保険者数と加入者数は令和6年3月末、他は令和5年度。保険料は介護分を含まず、被用者保険は事業主負担を除く本人分

協会けんぽの加入者3,954万人は、被保険者2,521万人と被扶養者1,433万人の合計である。組合健保は被保険者1,668万人に被扶養者1,135万人、共済組合は576万人に402万人が乗る。被用者保険では一人の被保険者が家族を連れて入る構造になっており、保険料は被保険者の報酬だけで決まる。市町村国保の2,309万人が1,590万世帯に分かれているのに対し、こちらは世帯の人数が保険料に効かない。

数字の落差で目を引くのは医療費である。後期高齢者の一人当たり96.4万円は、組合健保の19.3万円の5倍になる。平均所得は組合健保の253万円に対し後期高齢者は94万円で、医療費が最も重い層の所得が最も低い。この逆転を埋めるために、現役世代の保険料から後期高齢者支援金が流れ、公費が給付費の約半分を負担している。世代間の資金の流れそのものは社会保障給付費の内訳から現役世代の負担を見た記事で扱った。

勤め先で決まる3つ:協会けんぽ・組合健保・共済

会社員の保険料は、報酬に率を掛けて計算し、事業主と半分ずつ負担する。協会けんぽの健康保険料率は都道府県ごとに異なり、令和8年度は新潟県の9.21%が最も低く、佐賀県の10.55%が最も高い。東京都は9.85%、大阪府は10.13%である。医療費の地域差を料率に反映させる仕組みで、同じ給与でも勤務地によって手取りが変わる。

40歳から64歳までは、これに全国一律の介護保険料率1.62%が加わる。さらに令和8年度からは子ども・子育て支援金が上乗せされ、被用者保険に共通の率は0.23%と定められた。こども家庭庁の試算では健保組合の被保険者一人当たり月額約550円で、国民健康保険は一世帯あたり約300円、後期高齢者医療制度は被保険者一人当たり約200円となる。いずれも医療保険料とあわせて徴収される。

健康保険組合は各組合が規約で料率を決めるため、協会けんぽより低いところもあれば高いところもある。表の保険料負担率が組合健保で5.7%と最も低いのは、加入者の所得水準が高いことの裏返しでもある。被扶養者の認定は年間収入130万円未満かつ被保険者の年間収入の2分の1未満が原則で、60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害がある人は180万円未満になる。令和7年の税制改正にあわせて、19歳以上23歳未満の人は150万円未満に引き上げられた。

国民健康保険は「それ以外」を受け止める

自営業、フリーランス、退職して次の勤め先が決まっていない人、勤め先の社会保険に入らない働き方の人は、市区町村の国民健康保険に入る。日本の医療保険が国民皆保険と呼ばれるのは、この受け皿があるからである。平成30年度の改革で都道府県も財政運営の責任主体になり、いまは都道府県と市町村が共同で運営している。

保険料は世帯単位で、所得に応じた所得割と、加入者数に応じた均等割などを足し合わせて決まる。被用者保険と違って事業主負担がないため、同じ所得でも手取りへの影響は大きくなりやすい。令和6年度の市町村国保の被保険者数は2,204万人で、前年度から105万人減った。平均年齢54.0歳、65歳から74歳が43.8%という構成が、一人当たり医療費41.7万円の背景にある。

もう一つの国民健康保険組合は、医師、歯科医師、薬剤師、建設業、食品販売業などの同業者が組織する公法人で、組合員とその世帯の人が被保険者になる。市町村国保と並ぶ国民健康保険の一形態だが、保険料の決め方は組合の規約による。開業の届出や社会保険の切り替えの段取りはフリーランスのなり方を法令から確かめた記事にまとめている。

75歳になると、全員が移る

後期高齢者医療制度は、年齢だけで加入先が切り替わる唯一の制度である。75歳の誕生日を迎えると、それまで会社員の被扶養者だった人も国保の世帯員だった人も、都道府県ごとに置かれた広域連合の被保険者になる。保険者は47で、加入者は1,978万人。一定の障害があると広域連合が認定した場合は65歳から入れる。

保険料は個人単位で、所得割と均等割を合わせて決まる。被扶養者という扱いがないので、それまで保険料を払っていなかった人も自分の分を負担することになる。一人当たり平均保険料は7.9万円で、5つの保険者のうち最も低い。給付費の約5割を公費が担い、約4割を現役世代からの後期高齢者支援金が支え、残りを保険料で賄う構造になっている。

この支援金は、被用者保険と国保の双方が加入者数に応じて負担する。令和6年度の市町村国保では、後期高齢者支援金として1兆6,214億円を支出した。保険料として納めた額のうち一定部分が、自分の世代の医療費ではなく高齢者医療に回る設計だと理解しておくと、保険料通知書の内訳が読みやすくなる。

給付は同じ、負担だけが年齢で動く

どの制度に入っていても、窓口で払う割合は年齢と所得で決まる。保険者による違いはない。

年齢 窓口負担 例外
義務教育就学前 2割 自治体の助成で無料や定額になる地域が多い
義務教育就学後〜69歳 3割 なし
70〜74歳 2割 現役並み所得者は3割
75歳以上 1割 一定以上の所得がある人は2割、現役並み所得者は3割
厚生労働省の資料より。75歳以上の2割負担は令和4年10月から導入された。自治体独自の医療費助成は制度の外側にある

高額療養費制度も制度をまたいで共通に働き、ひと月の自己負担が所得区分ごとの上限を超えた分は払い戻される。傷病手当金と出産手当金だけは被用者保険にしかない給付で、国民健康保険には原則としてない。会社員が病気で働けなくなったときの所得補償があるかないかは、独立を考えるときに最も見落とされやすい差である。地方での働き方や独立の選択肢を扱うFLASPOでも、ここは事前に確かめる項目として挙がる。

よくある質問

自分がどの制度に入っているかは、どこで確かめられますか。 マイナ保険証の資格情報や資格確認書に保険者の名称が記載されている。全国健康保険協会とあれば協会けんぽ、○○健康保険組合なら組合健保、市区町村名なら市町村国保である。保険者番号の桁の並びでも判別できるが、名称を見るほうが早い。

退職したら、どれを選べばよいのでしょうか。 前の勤め先の健康保険を任意継続するか、市区町村の国民健康保険に入るか、家族の被扶養者になるかの三択になる。任意継続は資格喪失日から20日以内という期限があり、保険料は事業主負担がなくなるぶん在職中の約2倍になる。国保は前年所得で決まるので、退職直後の年は高く出やすい。

パートで働く場合、どちらに入ることになりますか。 週の所定労働時間と月額賃金、勤め先の規模などの条件を満たせば勤め先の健康保険に入る。満たさなければ、配偶者の被扶養者か国民健康保険になる。被扶養者の収入基準を少し超えると保険料負担が一気に生じるため、年収の見込みは事前に確かめておくほうがよい。

同じ病気でも制度によって負担が変わりますか。 窓口負担の割合と高額療養費の上限は共通なので、同じ年齢と所得区分なら自己負担は変わらない。差が出るのは保険料と、傷病手当金のような現金給付の有無である。保険料は所得が同じでも、被用者保険なら半分を事業主が持ち、国保なら全額が世帯の負担になる。

国保の保険料が高いと感じるのは、なぜでしょうか。 事業主負担がないことと、世帯の加入者数に応じた均等割があることが大きい。加えて加入者の平均年齢が54.0歳で医療費水準が高く、平均所得は99万円と低い。保険料負担率が9.3%で5つの保険者のうち最も高いのは、この構造の結果である。確定申告での社会保険料控除の扱いは確定申告が必要な人の線を整理した記事も参考になる。

出典:厚生労働省「医療保険に関する基礎資料(令和5年度の医療費等の状況)」、同「国民健康保険の保険料・保険税について」、同「医療保険制度の自己負担割合」、同「令和6年度国民健康保険(市町村国保)の財政状況について」、全国健康保険協会「令和8年度の都道府県毎の保険料率」、こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」


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