申告している2,339万人は、納税より還付のほうが多い
確定申告と聞くと納税の手続きだと思われがちだが、集計を開くと印象が変わる。国税庁が令和7年5月に公表した資料によれば、令和6年分の所得税等の確定申告書の申告人員は2,339万人で、前年比0.6%増。平成27年分以降はほぼ横ばいで推移している。
この2,339万人の内訳が示唆に富む。申告納税額がある人、つまり納める人は517万人にとどまり、税金が戻ってくる還付申告が1,353万人。さらに納める額も戻る額もない人が468万人いる。納税のために出された申告書は全体の2割強で、残りの8割近くは還付かゼロである。
| 区分 | 令和6年分の人員 | 構成比 | 対前年比 |
|---|---|---|---|
| 申告納税額がある方(納税) | 517万人 | 22.1% | 22.6%減 |
| 還付申告 | 1,353万人 | 57.9% | 0.2%増 |
| 申告納税額がない方 | 468万人 | 20.0% | 53.5%増 |
| 合計 | 2,339万人 | 100% | 0.6%増 |
納める人が前年から22.6%も減り、納める額のない人が53.5%増えたのは、令和6年に実施された定額減税が効いた動きと読める。納税人員が減った一方で所得金額は51兆1,604億円(3.2%増)、申告納税額は4兆3,989億円(8.6%増)に伸びており、人数と金額が逆方向に動いた年だった。
会社員の分かれ目は「2,000万円」と「20万円」
給与から源泉徴収され、年末調整まで会社が済ませてくれる人は、原則として申告の必要がない。その原則から外れる条件が国税庁のタックスアンサーに列挙されている。まず給与の年間収入金額が2,000万円を超える人は年末調整の対象外になり、自分で申告することになる。
次が副収入の線である。給与の支払先が1か所で全額が源泉徴収の対象である人のうち、給与所得と退職所得以外の各種所得の合計額が20万円を超える人は申告が必要になる。支払先が2か所以上ある場合は、年末調整されなかった給与の収入金額と他の所得の合計で20万円を判定する。ただし、給与の収入合計から雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除を除く所得控除を差し引いた額が150万円以下で、かつ他の所得が20万円以下なら申告は要らない。
このほか、同族会社の役員などでその会社から貸付金の利子や資産の賃貸料を受け取っている人、災害減免法で源泉徴収の猶予を受けている人、源泉徴収義務のない者から給与を受けている人も対象に挙がる。副業を始めるときに就業規則の確認と並べて押さえたい論点で、手順と期限は副業の始め方を整理した記事にまとめている。20万円は所得の額であって売上ではない点も読み違えやすい。
年金を受け取っている人には申告不要の仕組みがある
公的年金も所得税の対象なので、本来は申告の話が出てくる。ただし国税庁は判定表の形で、公的年金等の収入金額の合計が400万円以下であり、その全部が源泉徴収の対象で、公的年金等以外の所得が20万円以下であれば所得税の確定申告は不要だと示している。外国の制度にもとづいて国外で支払われる年金がある場合は対象外になる。
400万円は年金の収入の合計で判定し、複数の年金を受け取っているなら合算する。源泉徴収票の支払金額の欄がそのまま判定の材料になる。20万円のほうは所得の額で見るため、個人年金や原稿料のような雑所得は総収入金額から必要経費を引いて計算する。民間の個人年金で20万円を超えると、この仕組みからは外れる。
気をつけたいのは、所得税の申告が不要でも住民税の申告が必要な場合があることである。国税庁の案内も住民税については市区町村に尋ねるよう促している。医療費控除や社会保険料控除で税が戻る人は、不要制度の対象であっても申告書を出して還付を受けられる。
出さなくてよい人が出したほうが得になる場面
1,353万人という還付申告の多さは、義務ではなく選択で出されている申告書が多いことを意味する。国税庁が例として挙げるのは、年の途中で退職して年末調整を受けず源泉徴収税額が納め過ぎになっているとき、要件を満たす住宅を取得して住宅ローンがあるとき、災害や盗難で資産に損害を受けたとき、多額の医療費を支出したときである。
期限の感覚も違う。還付申告はその年の翌年1月1日から5年間提出できる。3月の期限に間に合わなかったからもう無理だ、という話ではなく、5年分をさかのぼって出せる。ただし青色申告特別控除のように法定申告期限までの提出が要件になっている特例は、この5年の枠では救えない。
寄附金控除も還付の典型で、ワンストップ特例を使わない場合は申告が必要になる。手続きの流れと必要書類はふるさと納税の確定申告のやり方で具体的にたどれる。学生や新社会人で所得が小さい場合の控除の効き方は学生フリーランスの税金を控除の境目から見た記事が近い。
提出は4人に3人がe-Tax、期限は3月16日
紙の申告書を税務署に持ち込む姿は、すでに多数派ではない。令和6年分でe-Taxを使った申告人員は1,732万人で、申告人員全体の74.0%にあたる。送信件数ベースでは75.7%。4人に3人が電子で提出している計算になる。
さらに内訳を見ると、納税者自身の自宅からe-Taxで申告した人が824万人で前年比19.4%増、前年分から134万人増えた。そのうち自宅からスマートフォンを使った人は408万人で29.0%増え、自宅から電子申告した人のおよそ半数を占める。マイナンバーカードを使って自宅から申告した人は640万人で、自宅からのe-Taxの約8割に達した。
期限は毎年2月中旬から3月中旬で、令和7年分は令和8年3月16日が所得税と贈与税の申告・納付の期限になる。個人事業者の消費税等は3月31日が期限で、所得税より2週間ほど後ろにずれる。会場に行かずに済む手段が整ったぶん、期限だけを見落とさないようにしたい。働き方の選択肢が増えるほど申告の機会も増えるため、副業や兼業の設計はFLASPOでも制度の面から取り上げている。
よくある質問
副業の所得が20万円以下なら何もしなくてよいのでしょうか。 所得税の確定申告は不要になるが、住民税は別の制度で、申告が必要になる場合がある。20万円という線は所得税の話だと理解しておくほうが安全である。医療費控除などで還付を受けるために申告する場合は、20万円以下の所得も申告書に含めて計算することになる。
申告を忘れていた年があります。いまから出せますか。 還付になる年なら翌年1月1日から5年間提出できる。納める税がある年を申告していなかった場合は期限後申告になり、無申告加算税や延滞税がかかる。気づいた時点で早く出すほど負担は小さくなる。
e-Taxを使うには何が必要ですか。 マイナンバーカードとスマートフォンがあれば自宅から送信できる。令和6年分では自宅からの電子申告のうち約8割がマイナンバーカードを使っていた。カードを使わない方式もあるが、税務署で発行する識別番号と暗証番号の準備が必要になる。
公的年金が400万円以下でも申告したほうがよい場合はありますか。 医療費が多くかかった年、生命保険料や地震保険料の控除がある年、災害で損害を受けた年などは、申告すると源泉徴収された税が戻る可能性がある。不要制度は申告を禁じる仕組みではなく、還付を受けるための申告書は提出できる。
事業をしている人の申告はどのくらいの規模ですか。 令和6年分で納税人員のうち事業所得者は118万人、所得金額は7兆4,622億円だった。事業所得者以外は399万人で43兆6,982億円。人数では事業所得者が2割強にとどまり、給与や年金、譲渡所得などを持つ人が申告の多数を構成している。
出典:国税庁「令和6年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」、同「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」、同「No.2030 還付申告」、同「確定申告特集」
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