在学中の数字は、どの立場よりも良い
大学に入ってから友人関係に悩む話はよく聞くのに、統計の上では在学中が最も恵まれた時期として出てくる。内閣府の孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和7年)は、回答者を現在の仕事で分けて集計しており、学生・生徒は474人分が集計されている。満16歳以上の2万人を対象とした調査で、全体の有効回答は11,873人である。
この調査は、孤立状態にある可能性が高い人を複数の指標で測っている。同居していない家族や友人たちとの対面と非対面を合わせたやり取りが週に1回未満の人、頼れる人も相談相手もいない人、それに気軽に話せる相手もいない条件を加えた人、という組み立てである。立場別の値は次のとおりになる。
| 立場 | やり取りが週1回未満 | 週1回程度以下 | 頼れる人も相談相手もいない | 気軽に話せる相手もいない |
|---|---|---|---|---|
| 学生・生徒(474人) | 1.5% | 2.3% | 2.3% | 1.3% |
| 全体(11,873人) | 6.7% | 9.9% | 6.1% | 4.1% |
| 正規の職員・従業員 | 6.2% | 9.2% | 8.0% | 5.3% |
| 失業中 | 11.5% | 15.3% | 13.2% | 8.4% |
学生・生徒はすべての列で最も低い。週1回未満の1.5%は全体の6.7%の4分の1以下で、失業中の11.5%とは7倍以上の開きがある。孤独感を直接尋ねた設問でも、「決してない」と答えた割合は27.2%で全体の19.6%を上回り、「しばしばある・常にある」は4.0%と全体の4.5%を下回る。在学中という一点に限れば、数字は良い。
この良さを作っているのは本人ではなく時間割である
ここで油断したくないのは、良い数字の出どころである。学生の値が低いのは、交友の技術が高いからではない。週に何度も同じ場所に行き、同じ時間に同じ顔が並ぶ仕組みが、やり取りの回数を自動的に供給しているからである。
同じ調査で、同居していない家族や友人たちと直接会って話す頻度が「週4〜5回以上」の割合を見ると、全体は15.6%にとどまるのに、16〜19歳では男性67.7%、女性73.1%に達する。20歳代では男性19.9%、女性17.1%まで落ちる。在学期間が長い人ほど高い頻度を長く保てるが、その源は履修と通学の側にある。
測り方を変えると、見え方も少し変わる。この調査は孤独感を直接尋ねる設問と、UCLA孤独感尺度の短縮版を使う間接的な設問の2種類で測っている。間接の設問で最も高いスコア帯に入った学生・生徒は5.7%で、全体の6.5%と大きく離れていない。表に出る孤独感は低いのに、言葉を変えて測ると差が縮む。構造が接触を供給していても、感じ方の問題が消えるわけではないという読み方ができる。
参加率が最も低くなるのは、卒業の前後である
では構造が外れるのはいつかというと、数字の上では20歳代の途中である。社会活動への参加状況を見ると、いずれかの活動に参加している割合は全体で45.8%、16〜19歳では男性51.6%、女性52.0%だが、20歳代では男性41.2%、女性30.5%へ下がる。20代女性は全年齢で最も低い。
部活動を含む分類で見ると落差はもっと明確である。スポーツ・趣味・娯楽・教養・自己啓発などの活動に参加している割合は、16〜19歳で男性47.7%、女性45.6%。20歳代では男性37.0%、女性26.2%になる。全体の30.5%を、20代女性だけが下回る形になっている。
大学生はこの境目にまたがっている。入学直後は10代の値に近く、卒業が近づくにつれて20代の値に寄っていく。在学中に数字が良いこと自体は確かだが、良い期間の終わりがあらかじめ決まっている点が、ほかの立場との違いである。進学で期間が延びる場合の実情は大学院に進む若者の回にまとめてある。
卒業で切れるのは関係ではなく、会う口実である
卒業後に連絡が途絶えるとき、気持ちが冷めたわけではないことが多い。切れているのは、会うための理由である。授業、ゼミ、サークルの練習、昼休みといった定期的な予定が、在学中は誰も段取りしないのに成立していた。
頼れる相手の構成を見ると、学校という足場の重さがわかる。困った時に頼れる人として職場の同僚や学校の先生などを挙げた割合は、全体では20.6%だが、16〜19歳では男性37.5%、女性34.9%、20歳代では男性33.9%、女性28.3%と高い。学校の関係者が実際の頼り先として機能している。
これが外れた先で何が起きるかは、20歳代の数字に表れている。やり取りが週に1回未満の層は、在学中の1.5%から20歳代の男性8.3%、女性2.8%へ分かれる。男性は全体の6.7%を超える。学校という共通の足場を失ったあと、代わりの足場を持っているかどうかで結果が割れている。学内に限らない接点の作り方は大学生の出会いの回で経路別に扱った。
在学中に打つ手は、学部の外に1本持つこと
在学中にできる準備は、友人を増やすことではない。卒業と同時に消えない予定を1本だけ用意しておくことである。所属が同じ相手だけで関係が構成されていると、所属が変わった瞬間に全部が同時に薄くなる。
条件は3つで足りる。第一に、自分が幹事をしなくても日程が決まること。相手の都合に頻度を預けると、忙しい時期に止まって戻らない。第二に、学年や卒業年に依存しない集まりであること。社会人と学生が混じる場なら、卒業しても立場が変わるだけで出入りは続く。第三に、月に1回程度で成立する密度であること。週に数回を要求する場は、就職活動や研究で予定が崩れる時期に真っ先に落ちる。
地域や学生の活動を扱うFLASPOのような場は、この1本を学外から調達する経路として使える。あわせて、声でやり取りする相手を少数でも決めておくと手段の偏りを避けられる。電話が「全くない」と答えた割合は20歳代で男性20.9%、女性23.0%と、全体の16.4%を上回っている。友人関係の悩みそのものの分布は大学生の恋愛の特徴の回でも触れた学年ごとの優先順位と重なる。
よくある質問
大学で友人ができないのは珍しいことでしょうか。統計の上では少数である。学生・生徒で頼れる人も相談相手もいない人は2.3%、気軽に話せる相手もいない条件まで加えると1.3%にとどまる。ただし少数であることは、当事者の負荷が小さいことを意味しない。全体で同じ条件に当たる人が4.1%いるのに対し、学内では周囲との差が見えやすくなる。
サークルに入らないと不利でしょうか。入ること自体が条件ではない。重要なのは定期的に日程が決まる場があるかどうかで、アルバイト、研究室、地域の活動でも代わりになる。参加の有無で差が出るのは20歳代に入ってからで、男性41.2%、女性30.5%という参加率の落ち込みが起きる区間に重なる。
卒業後も友人関係を保つには何が要りますか。会う理由を自分の所属から切り離しておくことである。在学中の高い頻度は学校が供給していたもので、卒業後は週4〜5回以上という水準が全体の15.6%まで下がる。頻度の低下を前提に、月1回でも続く予定と、声の通る連絡先を分けて持っておくほうが現実的である。
オンラインのつながりで代わりになりますか。回数の面では足りている。SNSや電子メールなどを週4〜5回以上使う割合は、20歳代で男性34.4%、女性47.4%に上り、全体の19.7%を大きく超える。それでも電話が途絶えている割合は同じ世代で2割を超えており、やり取りの量と、重い話を置ける経路の太さは別に動いている。文字の往復だけで補おうとすると、言いにくい話の行き先が残らない。
大学生の友人関係は、数字の上では最も安定した時期にある。その安定が時間割に支えられていることを在学中に知っておけば、卒業の前後で落ちる幅を自分で小さくできる。
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。
