悩みの一覧に入れてみると、恋愛は上位ではない
恋愛の話は学生のあいだでよく出るので、関心の中心にあるように見える。日頃の悩みを並べて順位をつけると、位置は少し違う。全国大学生活協同組合連合会の第60回学生生活実態調査で、日頃悩んでいることや気にかかっていることとして「恋愛のこと」を挙げた学生は18.3パーセントだった。調査は2024年10月から11月に実施され、回答は11,590人である。
同じ設問の上位は別の項目で埋まっている。最多は生活費やお金のことで46.8パーセント、次が授業・レポート等勉学上のことで44.7パーセント、就職のことが37.8パーセントと続く。専攻分野や進路のことが27.8パーセント、時間が足りないことが26.1パーセントで、恋愛はその下に位置する。
これが在学中の恋愛を考えるときの第一の条件である。恋愛だけを切り出して悩んでいる状態ではなく、お金と単位と進路の心配に囲まれた中の一項目として置かれている。前回までの推移を見ると、2019年の21.4パーセントから今回の18.3パーセントまでゆるやかに下がっており、順位が上がる気配もない。
学年が上がると、心配の中身が入れ替わる
4年間を通して同じ悩みを抱えているわけではない。同じ調査を学年別に並べると、恋愛のことを挙げた割合は1年生で19.6パーセント、2年生で19.7パーセント、3年生で18.0パーセント、4年生で15.5パーセントと下がっていく。4年間で4.1ポイントの減少である。
同じ期間に跳ね上がる項目がある。就職のことは1年生の28.2パーセントから3年生の51.8パーセントまで23.6ポイント上がり、4年生では32.8パーセントに落ちる。採用の日程に合わせて3年生に山が来る形で、恋愛の割合が下がる区間とちょうど重なっている。
| 悩んでいること(学年別) | 1年生 | 2年生 | 3年生 | 4年生 |
|---|---|---|---|---|
| 恋愛のこと | 19.6% | 19.7% | 18.0% | 15.5% |
| 就職のこと | 28.2% | 41.5% | 51.8% | 32.8% |
| 生活費やお金のこと | 49.0% | 48.5% | 43.4% | 45.2% |
| 授業・レポート等勉学上のこと | 51.9% | 49.4% | 40.9% | 34.0% |
| 時間が足りないこと | 26.8% | 26.2% | 26.9% | 24.3% |
表のもう一つの読みどころは、時間が足りないことの行がほとんど動かない点である。4学年とも24パーセントから27パーセントの幅に収まっている。何に追われているかは学年で変わるのに、追われている感覚の量は変わらない。就職活動の日程をどう置くかは就活の時間管理は日程表からにまとめてある。
出会いの場は、所属という形で先に決まっている
社会人との違いが出るのは、人と会う回路の作り方である。学生の場合、授業の履修と課外活動への所属で、顔を合わせる相手の範囲がほぼ決まる。同じ調査によると、サークルや部活動等への所属率は63.8パーセントで、前年から3.6ポイント増えた。1年生に限ると80.0パーセントで、感染症の流行前の水準に戻っている。
ただし全体では2019年の水準に4.3ポイント届いていない。つまり、入学直後は8割が所属するものの、学年が上がるにつれて抜けていく層が以前より厚い。所属が切れると、授業以外で新しい人と会う機会は自分で作る必要が出てくる。前の項で見た3年生の就職の山と、この離脱は時期が重なりやすい。
長い目で見ると、学生が大学生活で重点を置く先も変わっている。2000年の調査では「よき友、豊かな人間関係」を挙げた学生が19.2パーセントだったが、2024年は14.3パーセントである。同じ期間に「勉学や研究」は24.0パーセントから33.5パーセントへ上がった。人間関係を目的として置く学生の比率は、四半世紀で5ポイント近く減っている。関心の近い人と会う場を学外に求める道もあり、地域の課題に学生が提案を持ち込むFLASPOのような場はその一つとして使える。
時間とお金の裁量が、思ったより小さい
会う回数や過ごし方を決めているのは気持ちだけではない。同じ調査では、現在アルバイトをしている学生が76.8パーセントで、過去10年間で最も高い水準だった。働いている学生の週当たり平均時間は12.1時間、1か月のアルバイト収入の有額平均は50,970円である。月7万円以上を稼ぐ層は週17.7時間働いており、7万円未満の層の10.2時間と大きく開く。
稼いだ分が自由に使えるとも限らない。アルバイト収入の使途で最も多いのは旅行・レジャー費用の33.3パーセントだが、生活費のゆとりが28.9パーセント、生活費の維持が24.2パーセント、貯金が23.4パーセントと続く。生活の維持とゆとりを足すと5割を超え、交際に回る分は残りを分け合う形になる。
節約したい費用の答えにも同じ構図が出る。2つまで選ぶ設問で、外食費を含む食費が64.3パーセント、趣味が22.3パーセント、教養娯楽費・交際費が20.1パーセントだった。人と出かける費用は、削る候補として5人に1人が挙げている。支出の優先順位を先に決める手順は大学生の節約とはで扱っている。
住まいの形で、条件がさらに分かれる
同じ大学の同じ学年でも、自宅から通うか下宿するかで前提が変わる。回答者の内訳は自宅・実家暮らしが5,593人で48.3パーセント、自宅外が5,997人で51.7パーセントだった。自宅外のうち下宿生は5,607人、寮生は390人である。ほぼ半々に分かれている。
悩みの内容はこの線でずれる。生活費やお金のことを挙げた割合は自宅生で37.2パーセント、下宿生で55.6パーセント、寮生で56.4パーセントだった。18ポイント以上の差がある。恋愛のことは自宅生18.0パーセント、下宿生18.4パーセント、寮生21.5パーセントで、こちらの差は小さい。お金の心配の大きさが違っても、恋愛を気にかける割合はあまり動かないということである。
節約の対象も分かれる。外食費を含む食費を挙げた割合は自宅生57.4パーセント、下宿生71.0パーセントで、家賃・水道光熱費は自宅生3.2パーセント、下宿生11.0パーセントだった。暮らし向きを苦しい方と答えた割合は自宅生6.0パーセント、下宿生7.4パーセント、寮生9.5パーセントである。費用の内訳は大学生の一人暮らしの月生活費に整理してある。
よくある質問
恋愛の悩みが少ないのは、関心が薄れたという意味か。この設問は悩みや気にかかっていることをたずねたもので、関心そのものを測っていない。割合が2019年の21.4パーセントから18.3パーセントへ下がった事実は読み取れるが、交際の有無や関心の強さは別の設問で見る必要がある。国立社会保障・人口問題研究所の第17回出生動向基本調査では、18〜34歳の未婚男性の35.7パーセント、未婚女性の35.3パーセントがとくに異性との交際を望んでいないと答えている。
4年生で恋愛の悩みが下がるのは、相手が決まるからか。この調査からは理由を特定できない。同じ学年で授業・レポートの悩みも51.9パーセントから34.0パーセントへ下がっており、在学中の課題そのものが減る時期である。就職のことも3年生の51.8パーセントから32.8パーセントに落ちるため、悩みの総量が縮む中での下がり方だという見方もできる。
アルバイトを増やすと交際の時間はどれくらい削られるか。週当たりの差で見当がつく。月7万円以上の層は週17.7時間、7万円未満の層は週10.2時間で、差は週7.5時間である。収入を月7万円の水準まで引き上げると、週に7時間半ほどの持ち時間が消える計算になる。授業と課外活動の予定を先に置いてから、残りで働く順番にすると判断しやすい。
この調査はどこまで全国を代表しているか。対象は全国の国公立および私立大学の学部学生で、無作為抽出のうえオンラインで回答を集めている。回答は11,590人、30大学生協、回収率は24.0パーセントである。設置者別の構成は国公立63.9パーセント、私立36.1パーセントで、実際の在学者の構成とは比率が異なる。学年や住まいの比較に使う分には足りるが、全国の平均値として扱うときは構成の偏りを頭に入れておきたい。
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