還元率で並べる時代が終わったあとの比べ方
数年前まで、どのサイトから寄附するかを決める最大の材料はポイントの上乗せだった。同じ自治体の同じ返礼品でも、経由するサイトによって数パーセント分の差がつくため、比較記事の見出しはほとんどが還元率の話になっていた。その前提が2025年10月1日に消えている。総務省は2024年6月28日付けの告示で、仲介サイトが寄附者に独自のポイントを付与する募集の取り扱いを認めないこととし、およそ1年の準備期間を置いたうえで施行した。これにより、サイト独自のポイント還元を理由に寄附先を選ぶという行動は制度上できなくなった。クレジットカード会社が決済に対して通常どおり付けるポイントは、この規制の対象ではない。差が消えたぶん、比べる軸は自分で立てる必要が出てきた。掲載されている自治体と返礼品の幅、申込みから受け取りまでの手続きのしやすさ、確定申告やワンストップ特例に必要な書類がどう届くか。派手さのない項目ほど、寄附したあとの手間に効いてくる。
寄附の9割以上が、サイトを通って自治体に届いている
ポータルサイトの位置づけを数字で確かめておきたい。総務省が2026年5月に公表した調査によると、令和6年度のふるさと納税の受入額は1兆2,728億円で、そのうち94.5パーセントにあたる1兆2,025億円がポータルサイト経由だった。窓口や自治体の独自サイトから直接というルートは、実質的にわずかしか残っていない。自治体がポータルサイトの運営事業者に支払った額は総額で約2,559億円。内訳を見ると、返礼品の情報を掲載するための委託料などの事務費等がもっとも大きい。ここから返礼品そのものの調達費と送付費を除いた1,379億円が、いわゆる仲介手数料にあたり、受入額に対する割合は11.5パーセントになる。寄附した1万円のうち千円強がサイト側に渡っている計算で、総務省はこの水準を問題視し、事業者に引き下げを要請する方針を示している。利用者から見れば無料のサービスだが、費用は寄附先の自治体が負っているという構造は知っておきたい。
| 支払いの目的 | 令和6年度の支払額 |
|---|---|
| 掲載委託料などの事務費等 | 1,166億円 |
| 返礼品の調達費 | 947億円 |
| 返礼品の送付費 | 234億円 |
| 決済費 | 161億円 |
| 広報費 | 52億円 |
| 合計 | 約2,559億円 |
端数処理のため、合計は内訳の単純な足し算と一致しない。出典:総務省「ふるさと納税ポータルサイト」。
2026年10月から、サイトに配れる原資そのものが縮む
もうひとつ、選び方に効いてくる変更が控えている。総務省は2025年6月24日に指定基準の見直しを公表し、告示に「寄附金の活用に関する基準」を新たに設けた。令和8年、つまり2026年10月1日から適用され、自治体は集めた寄附のうち52.5パーセント以上を実際の事業に使える額として残さなければならない。裏返せば、返礼品の調達から送料、サイトへの手数料、広報、事務にかかる費用までを合わせた募集経費を47.5パーセント以下に抑える必要がある。これまでの5割ルールより2.5ポイント厳しく、かつ経費に数える範囲も明確化された。ワンストップ特例の事務費用、寄附金受領証明書の発行と発送にかかる費用、職員の人件費といった、これまで曖昧に扱われがちだった項目も募集経費に含まれる。しかも一度きりの引き締めではない。基準は段階的に上げられ、2029年10月には自治体に残す割合が60パーセント以上、経費は40パーセント以下になる予定だ。サイト側に回せる原資が縮んでいくため、大型のキャンペーンや高還元の企画は中長期的に減る方向に向かう。
何を見て比べるか、五つの観点
還元率という共通のものさしがなくなった以上、比較は自分の使い方から逆算するほかない。第一に、掲載されている自治体と返礼品の幅。応援したい地域が決まっているなら、その自治体が出品しているサイトはどれかという一点で候補は絞れる。第二に、決済手段。クレジットカードのほか、コンビニ払いやキャリア決済、電子マネーに対応しているかは、年末の駆け込み寄附で期限に間に合うかどうかを左右する。第三に、ワンストップ特例のオンライン申請に対応しているか。マイナンバーカードを使った電子申請ができれば、書類を印刷して郵送する手間がなくなる。第四に、確定申告をする人なら、寄附金控除に関する証明書を年間分まとめて発行してくれるかどうか。複数自治体に寄附しても一枚で済むため、申告の負担がまったく違う。第五に、返礼品の配送時期や在庫の表示。人気の食材は数か月待ちということもあり、いつ届くかが書かれているサイトのほうが計画を立てやすい。複数のサイトを併用しても控除の上限は変わらないので、用途ごとに使い分けるのも現実的な選択になる。
「おすすめ」を、自分の条件に翻訳する
比較記事に並ぶ順位は、多くの場合その媒体の都合を含んでいる。読み替えるための足場になるのは、制度の側にある二つの数字だ。ひとつは自分の控除上限額で、年収と家族構成、他の控除の状況で決まる。上限を超えた分は自己負担になるため、最初にシミュレーションで把握しておく。もうひとつは自己負担の2,000円で、これは何か所に寄附しても合計で2,000円に収まる。この二つを押さえてしまえば、サイト選びは「手続きが自分に合っているか」だけの問題に縮む。そのうえで考えたいのが、寄附先の決め方そのものだ。ポイントが付かなくなったいま、返礼品の量だけで選ぶ理由は以前より弱くなった。訪ねたことのある町、家族の出身地、災害からの復旧を進めている自治体というように、つながりのある場所を選ぶほうが納得は残る。地域と関わる入口を探している人に向けては、FLASPOのように現地との接点をまとめている窓口もある。寄附をきっかけに、その町に一度行ってみるところまでつながれば、制度の使い方としては上等だ。
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よくある質問
ポイント付与の禁止は、クレジットカードのポイントにも及びますか。
及ばない。規制の対象は仲介サイトが寄附の募集にあたって独自に付けるポイントであり、カード会社が決済に対して通常付与するものは別の扱いになる。ただし、サイトと連動した上乗せキャンペーンという形をとるものは規制の趣旨に触れるため、以前のような大型の還元企画は見られなくなっている。
複数のサイトを使い分けても問題ありませんか。
問題ない。控除の上限は寄附者ごとに決まるので、どこを経由したかで有利不利は生じない。ただしワンストップ特例を使う場合、申請は寄附先の自治体ごとに必要で、5団体以内という条件も寄附先の数で数える。サイトを分けたことで申請漏れが起きやすくなる点だけ注意したい。
2026年10月の変更で、返礼品は減ってしまいますか。
すべてが減るわけではないが、内容は動く。経費の枠が縮むため、送料のかさむ重量物や、調達費の割合が高い品目は見直されやすい。逆に、地元で加工まで完結している品や、配送の負担が軽い品は残りやすい。改正前に駆け込むかどうかより、狙っている返礼品が対象になりそうかを個別に確かめるほうが実際的だ。
手数料率が11.5パーセントというのは高いのですか。
総務省は高いと判断し、事業者に引き下げを求める方針を示している。集めた寄附のうち1割超がサイト側に渡る構造は、制度の目的である地域への資金移転から見れば損失にあたるためだ。利用者が直接負担するものではないが、応援したい自治体に届く額を増やしたいなら、手数料の水準を公表しているかどうかもサイトを見る材料になる。
どのサイトが一番おすすめか、一つに絞れますか。
絞れない。寄附先が決まっている人は掲載の有無で選ぶことになり、申告を自分でする人は証明書の発行機能を優先することになる。制度が共通化された結果、サイトの差は機能の相性に収れんした。順位表を探すより、自分が面倒だと感じる工程を先に書き出してから候補を当てるほうが早い。
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