副業のメリットと留意点|厚生労働省の指針が挙げる4つと3つ

副業のメリットと留意点|厚生労働省の指針が挙げる4つと3つ

収入が増える、という答えだけでは足りない

もう少し手取りがあれば、という思いから副業を調べ始める人は多い。ただ、実際に副業を続けている人が何を得ているのかを国の資料で確かめると、収入はいくつも並ぶ理由のうちの一つにすぎないことがわかる。

厚生労働省が公表している副業・兼業の促進に関するガイドラインは、副業・兼業を行う理由として、収入を増やしたい、一つの仕事だけでは生活できない、自分が活躍できる場を広げる、様々な分野の人とつながりができる、時間のゆとりがある、現在の仕事で必要な能力を活用・向上させる、という動機を並べている。

この並べ方には意味がある。家計の話と、能力や人のつながりの話が同じ列に置かれていて、どちらが上という書き方をしていない。国の側も副業を家計の補填だけで捉えてはいない、ということである。

この記事では、同じ指針が「労働者のメリット」として挙げている四つの項目と、すぐ隣に「留意点」として挙げている三つの項目を、原文の順に沿って並べる。そのうえで、総務省の調査が示す副業の広がりを数字で確かめ、企業の側から見た損得も合わせて見ていく。

募集中の地域コンテスト

読んだら、地域に行ってみよう

地域が出したお題に、オンラインでアイデアを応募できます。受賞すると、現地に無料で招待されます。

募集中の地域をすべて見る

指針が挙げる四つの利点を、順番のまま読む

指針の本文には、労働者にとってのメリットが番号付きで四つ書かれている。要約して紹介されることが多い部分だが、どの順に置かれているかまで含めて読むと、国が何を軸に副業を促しているのかが見えてくる。

順 指針が書いている内容 言い換えると
1 離職せずとも別の仕事に就くことが可能となり、スキルや経験を得ることで、労働者が主体的にキャリアを形成することができる 辞めずに次の経験を積める
2 本業の所得を活かして、自分がやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求することができる 稼ぎにならない挑戦を抱えられる
3 所得が増加する 収入が増える
4 本業を続けつつ、よりリスクの小さい形で将来の起業・転職に向けた準備・試行ができる 辞める前に試せる

収入の話が三番目に置かれている点がまず目を引く。一番目と四番目はどちらも「離職せずとも」「本業を続けつつ」という条件から始まっていて、辞めなくてよいこと自体を価値として数えている。転職や独立を考える人にとって、収入が途切れない状態で次の仕事を試せるというのは、そのまま失敗できる余地の広さを意味する。

二番目は少し性質が違う。本業の所得があるからこそ、単価の低い仕事や、まだお金にならない活動を抱えられるという話である。採算を気にせず取り組める期間が持てるのは、収入源が二つあることの副産物にあたる。

三番目の所得増加は、四つのなかで唯一その月から効果が出る。残りの三つはいずれも、数か月から数年かけて形になるものだ。副業を始めて数週間で手応えがないと感じるのは、効果が出る速さが項目ごとに違うためでもある。

数字でたしかめる、どのくらいの人が二つ目の仕事を持っているか

どれだけの人が実際に副業をしているのかは、総務省の令和4年就業構造基本調査でわかる。五年ごとの大規模な調査で、2022年の結果が最新である。

この調査では、農業と林業などを除いた非農林業従事者のうち副業がある者が304万9千人と集計されている。五年前に比べて60万人の増加で、非農林業従事者に占める割合である副業者比率は4.8パーセント、こちらは0.9ポイント上がった。

年 副業がある者(非農林業従事者) 副業者比率
2007年 214万6千人 3.9%
2012年 241万5千人 4.2%(正規1.8%/非正規5.3%)
2017年 245万1千人 3.9%(正規1.9%/非正規5.8%)
2022年 304万9千人 4.8%(正規2.5%/非正規7.2%)

雇用形態で分けると差が大きい。正規の職員・従業員は2.5パーセントで0.6ポイントの上昇、非正規の職員・従業員は7.2パーセントで1.3ポイントの上昇となっている。二つ目の仕事を持つのは、もともと非正規で働く人のほうが多いという形だ。

さらに目を向けたいのが、副業をしたいがまだしていない人の数である。調査はこれを追加就業希望者として別に数えていて、493万4千人、比率は7.8パーセント、五年前から93万人の増加となっている。実際に副業がある人の1.6倍の規模が、希望の段階で止まっていることになる。

雇用形態別の内訳を見ると、この希望は正規の職員・従業員で2.4ポイント上がって7.7パーセントになり、非正規では0.1ポイント下がって8.4パーセントになった。正社員の側で希望が急に伸びた五年だった、と読める。都道府県で比べると副業者比率は京都府が7.5パーセントで最も高く、東京都6.5パーセント、和歌山県5.6パーセントが続く。

同じ指針が、利点のすぐ隣に書いている三つの注意

メリットを並べた直後に、指針は留意点を三つ挙げている。順に、就業時間が長くなる可能性があるため労働者自身による就業時間や健康の管理も一定程度必要であること、職務専念義務と秘密保持義務と競業避止義務を意識することが必要であること、一週間の所定労働時間が短い業務を複数行う場合には雇用保険等の適用がない場合があることの三つだ。

三つ目は見落とされやすい。短い時間の仕事を二つ三つ重ねても、一つの勤め先での所定労働時間が週20時間に届かなければ、そこでは雇用保険の被保険者にならない。合計すれば20時間を超えていても、原則としては合算されない仕組みになっている。

例外として、65歳以上の人には令和4年1月から特例が用意された。二つの事業所のそれぞれが週5時間以上20時間未満で、合計して週20時間以上になり、どちらも31日以上の雇用見込みがある場合に、本人がハローワークに申し出ると被保険者になれる。年齢の条件が付いているため、現役世代はこの特例の外にいる。

もっとも、労災保険については扱いが先に変わっている。令和2年法律第14号による改正で、災害が起きなかった勤め先の賃金額も合算して給付額を算定することになり、複数の勤め先の業務上の負荷を総合的に評価して労災認定を行うことになった。勤め先から勤め先へ移動する間に起きた事故も、通勤災害として給付の対象になる。

税の扱いも先に確かめておきたい。指針は、副業・兼業を行って20万円を超える副収入がある場合は企業による年末調整ではなく個人による確定申告が必要だと書いている。国税庁の給与所得者で確定申告が必要な人も、一か所から給与を受けている人は給与所得と退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超えるときに申告が必要だとしている。

会社の側の損得を知っておくと、話の持ちかけ方が変わる

勤め先に副業を認めてもらう場面では、自分の利点だけを並べても話が進みにくい。指針は企業にとってのメリットも四つ挙げていて、労働者が社内では得られない知識やスキルを獲得できること、労働者の自律性と自主性を促せること、優秀な人材の獲得と流出の防止ができて競争力が向上すること、社外から新たな知識や情報や人脈が入って事業機会の拡大につながることを並べている。

企業側の留意点は一つにまとめられている。就業時間の把握と管理、健康管理への対応、そして三つの義務をどう確保するかという懸念への対応が必要である、という書き方だ。つまり会社が心配しているのは時間と健康と情報の三点に絞られる。申し出るときに、働く時間の見込みと、本業と競合しないことを先に示せると話が早い。

そもそも制限できる範囲は限られている。指針は裁判例を踏まえて、労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由であり、企業が制限することが許されるのは、労務提供上の支障がある場合、業務上の秘密が漏洩する場合、競業により自社の利益が害される場合、自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合にあたるときだと整理している。企業の対応としても、原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当だと書かれている。

厚生労働省のモデル就業規則も、労働者の遵守事項から許可なく他の会社等の業務に従事しないことという規定を削除し、勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができる、という条文を置いている。令和4年7月の改定では、副業・兼業を許容しているかどうかと条件付きの場合はその条件を自社のホームページ等で公表することが望ましい、という項目も加わった。

応募先を選ぶ段階でこの公表情報が使える。働き方を地域とどう組み合わせるかという視点では、二地域居住の仕事の組み立てを扱った記事が参考になる。公務員のように法律の側で兼業が制限される立場もあり、こちらは地方公務員の兼業を扱った記事で整理している。地域で働き方の選択肢を増やす取り組みはFLASPOでも進めている。

よくある質問

副業の一番の利点は収入が増えることではないのか。収入は確かに利点の一つだが、指針の並びでは三番目に置かれている。辞めずに経験を積めること、採算を気にせず挑戦できること、独立や転職を事前に試せることが、残りの三つにあたる。

どのくらいの人が副業をしているのか。2022年の調査で、非農林業従事者のうち304万9千人、割合では4.8パーセントとなっている。五年前より60万人増えた。

正社員でも副業をしている人はいるのか。いる。正規の職員・従業員の副業者比率は2.5パーセントで、五年前から0.6ポイント上がった。希望の段階まで含めると7.7パーセントまで広がり、こちらは2.4ポイントの上昇である。

短い時間の仕事を二つ掛け持ちすれば、雇用保険に入れるのか。原則は入れない。一つの勤め先での所定労働時間が週20時間に届かなければ被保険者にならず、合計では判定されない。65歳以上の人だけ、二つの事業所を合算する特例をハローワークに申し出られる。

副業先で怪我をしたとき、本業の賃金は補償の計算に入るのか。入る。令和2年の改正で、災害が起きていない勤め先の賃金額も合算して給付額を算定することになった。二つの勤め先の間を移動する途中の事故も通勤災害として扱われる。

会社が副業を禁止していたら、あきらめるしかないのか。就業規則の文言と、制限が許される四つの場合に自分が当たるかを突き合わせて考えたい。労務提供上の支障、業務上の秘密の漏洩、競業による利益の侵害、名誉や信用を損なう行為のいずれにも触れないなら、交渉の余地はある。

収入がいくらから税の手続きが要るのか。給与以外の所得が20万円を超えると確定申告が必要になる。20万円以下でも住民税の扱いは別に残るため、自治体の案内を確かめておきたい。副業で得る収入の相場感は、

動画編集の収入を扱った記事のような職種別の記事が目安になる。


アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

FLASPO

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。

FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。

賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。

コンテストを探す▶︎

FLASPOで募集中のコンテスト

自治体や企業が出したお題に、学生・若者がオンラインでアイデアを応募できます。募集中のものも、これまでのお題と結果も、一覧で見られます。