20代から30代のあいだに、頼れる相手の顔ぶれが入れ替わる
転職も引っ越しもしていないのに、気づくと悩みを持ち込む相手が変わっている。この入れ替わりは気分の問題ではなく、年齢階級別の集計にはっきり出る。内閣府の孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和7年)は、全国の満16歳以上2万人を住民基本台帳から無作為抽出し、令和7年12月1日を期日として実施した。有効回答は11,873人、回収率は59.4%にあたる。
困った時に頼れる人が「いる」と答えた10,880人に相手の種類を複数回答で尋ねた結果では、友人・知人を挙げた割合は全体で54.2%である。年齢で割ると、20歳代は男性72.1%、女性73.8%。これが30歳代では男性56.1%、女性66.7%になる。男性は16.0ポイント、女性は7.1ポイント下がり、同じ10年のあいだに男性だけが大きく崩れる。
不安や悩みの相談相手でも同じ形が現れる。相談相手が「いる」と答えた10,708人のうち友人・知人を挙げた割合は全体58.9%、20歳代は男性75.7%、女性80.9%、30歳代は男性59.7%、女性72.0%である。男性の下げ幅はここでも16.0ポイントで、頼り先の集計とぴたりと重なる。
| 年齢 | 頼れる相手に友人(男性) | 同(女性) | 相談相手に友人(男性) | 同(女性) |
|---|---|---|---|---|
| 20〜29歳 | 72.1% | 73.8% | 75.7% | 80.9% |
| 30〜39歳 | 56.1% | 66.7% | 59.7% | 72.0% |
| 40〜49歳 | 54.6% | 64.6% | 58.3% | 72.1% |
| 50〜59歳 | 48.3% | 61.9% | 51.1% | 70.9% |
| 60〜69歳 | 46.7% | 56.0% | 48.7% | 63.5% |
表を縦に追うと、女性は40歳代の相談相手で72.1%と30歳代より下がらず、50歳代でも70.9%を保つ。男性は50歳代で51.1%まで落ちる。社会人の友人関係は、男女で崩れ方そのものが違う。
会う回数は「月1回未満」のほうが多数になる
関係が残っていることと、実際に顔を合わせられていることは別に数える必要がある。同居していない家族や友人たちと直接会って話す頻度を見ると、全体では「月1回未満」が16.5%、「全くない」が9.7%で、合わせて26.2%になる。4人に1人は月単位で誰とも会っていない。
男性の30歳代は「月1回未満」21.9%に「全くない」15.7%が重なり37.6%、40歳代は25.0%と14.9%で39.9%、50歳代は21.7%と16.6%で38.3%である。20歳代の31.2%から一段上がり、働き盛りの3つの年代だけが4割前後で並ぶ。
女性は違う推移をたどる。同じ2区分の合計は20歳代26.7%、30歳代26.3%、40歳代29.9%、50歳代27.3%で、ほぼ横ばいのまま推移する。週4〜5回以上会う割合は全体15.6%に対し男性30歳代13.3%、40歳代12.1%。頻度の底は、友人を頼れる相手に挙げなくなる年代とそろって現れる。
職場と近所は、空いた枠を半分だけ埋める
友人の比重が下がったぶん、別の相手が増えているのかどうかは同じ表で確かめられる。仕事・学校関係者を頼れる相手に挙げた割合は全体20.6%。男性は20歳代33.9%から30歳代35.8%へ上がり、ここが全年齢を通じた最高点になる。女性も40歳代の32.2%が最高で、いずれも友人が減る時期に職場が最大化する。
地域はもっと遅い。自治会・町内会・近所の人を挙げた割合は男性で20歳代1.3%、30歳代2.4%、40歳代4.6%、50歳代7.4%、70歳代12.6%と、年齢に沿ってゆっくり積み上がる。女性も20歳代1.7%から40歳代7.4%までで、全体の8.4%を超えるのは50歳代以降である。
合わせて読むと、置き換えは完了していない。友人・知人の54.2%に対し、仕事・学校関係者20.6%と自治会・近所8.4%を足しても29.0%にとどまる。職場は役割が重く、異動と退職で一度に失う。地域は効き始めるのが遅い。友人関係の維持で扱った頻度の確保が、社会人では自力の課題になるのはこの構造のためである。
社会活動から離れる時期と、孤独感が最も高い時期が重なる
人と会う場そのものの持ち方も、年代で大きく動く。社会活動への参加状況では、いずれかの活動に参加している割合が全体45.8%、特に参加はしていないが53.3%である。男性は20歳代41.2%、30歳代40.3%で全年齢の最低に沈み、女性は20歳代30.5%が男女全区分で最も低い。
40歳代になると男性47.1%、女性47.7%へ戻る。中身を見ると復帰の主役はPTA・自治会などの活動で、男性は30歳代10.7%から40歳代19.2%、女性は13.3%から25.1%へ伸びる。一方でスポーツ・趣味・娯楽などの活動は女性30歳代が19.6%で、こちらも全区分の最低値になる。子どもの都合で場が戻り、自分の都合の場は戻らない。
同じ年代に孤独感も山を迎える。孤独感が「しばしばある・常にある」「時々ある」「たまにある」のいずれかに当たる人を合わせると、30歳代は43.0%で全年齢の最高、50歳代42.5%、20歳代42.0%が続く。調査結果の概要によれば、UCLA孤独感尺度に基づくスコアが10〜12点の層も30歳代8.6%、40歳代8.5%、50歳代8.0%で、全体の6.5%を上回るのはこの3つの年代だけである。
社会人の側で用意しておける仕掛けは3つある
手立ての優先順位も、同じ調査から読み取れる。ふだん気軽に話せる相手が「いる」人は90.7%、「いない」人は8.5%。孤独感が「しばしばある・常にある」と答えた割合は、いる側で2.5%、いない側で25.0%と10倍開く。人数を増やす前に、途切れかけている1人を戻すほうが効く。
2つめは、自分が誘わなくても日程が決まる予定を1本持つことである。40歳代で参加率が戻るのは本人の意欲ではなく、役が回ってくる仕組みが働くからだった。それを待つのではなく、内容を自分で選んで同じ仕組みを先に調達する。地域や学生の活動を扱うFLASPOのような窓口は、その1本を外から持ってくる経路として使える。
3つめは声の通る経路を残すことで、ここは数字が厳しい。電話(ビデオ通話を含む)が「全くない」割合は全体16.4%に対し、男性は30歳代24.0%、40歳代23.7%、50歳代24.0%と4人に1人に達する。日常の連絡が文字だけになると、言いにくい話を持ち出す段がなくなる。手段の偏りは友人関係と若者で見た20代の傾向がそのまま持ち越されたもので、放置すると中年期に固定される。
よくある質問
社会人になって友人が減るのは自然なことなのでしょうか。減っているのは関係の数ではなく、頼り先として思い浮かぶ順位と会う頻度である。30歳代でも友人・知人を頼れる相手に挙げる人は男性56.1%、女性66.7%いる。名前が挙がらなくなるのは、連絡が途切れて現在形でなくなったときである。
職場の人間関係が充実していれば、友人は必要ないのではないでしょうか。頼り先としての職場は30歳代男性の35.8%で頂点を打つが、その先は下がり続け、70歳代で7.3%になる。退職や異動で一度に失われる種類の関係だという点も見落とせない。種類の違う相手を複数持っておくことが、この調査からは合理的に見える。
30代や40代から関係を作り直すのは遅すぎませんか。40歳代で参加率が男女とも47%台へ戻っている事実が答えになる。きっかけがPTAや自治会であっても、そこから始まる関係は孤独感の集計の上では同じ重みを持つ。悩みの相談先が足りないと感じる段階なら、友人関係の悩みで整理した頼り先の広げ方から着手するのが早い。
社会人の友人関係でほんとうに起きているのは、関係の消滅ではなく優先順位の後退である。16ポイントという段差は、仕組みに支えられていた接点が外れた跡として読める。会う口実と声の経路を自分の側に1つずつ置き直すだけで、この段差は浅くできる。
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