二十人に声をかけて、残るのは二人
新歓の時期が終わると、たいてい同じ話を聞く。説明会に十五人来て、連絡先を交換したのが十人、二回目の集まりに顔を出したのが四人、夏まで残ったのが二人。歩留まりが悪いのではないかと落ち込む人がいるが、この数字そのものは珍しくない。問題は、なぜそうなるのかを説明できないまま次の年も同じやり方を繰り返すことである。
人を集める作業は、三つの別の仕事が重なってできている。声の届く範囲を広げること、来た人に正しく判断させること、入った人に居場所を渡すこと。どれが詰まっているのかを分けずに「広報を頑張る」と決めると、いちばん効かないところに力を注いでしまう。
順番としては、まず分母を知るのが早い。自分たちが相手にしている母集団の大きさを数字で押さえると、設計の前提が変わる。
同年代でこの種の活動をしている人は、八人に一人
総務省統計局の令和3年社会生活基本調査は、報酬を目的とせず自分の労力や技術、時間を提供して地域社会や個人・団体の福祉増進のために行う活動をボランティア活動と定義し、一年間に行ったかどうかを尋ねている。全体の行動者数は2005万6千人、行動者率は17.8%で、2016年と比べて8.2ポイント下がった。
注目したいのは年齢階級別の数字である。学生団体が声をかける相手の層は、全体よりさらに低い。
| 年齢階級 | 2016年 | 2021年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 10〜14歳 | 26.5% | 12.1% | -14.4ポイント |
| 15〜19歳 | 22.6% | 13.2% | -9.4ポイント |
| 20〜24歳 | 19.2% | 12.2% | -7.0ポイント |
| 25〜29歳 | 15.3% | 10.1% | -5.2ポイント |
| 総数 | 26.0% | 17.8% | -8.2ポイント |
25〜29歳の10.1%は全年齢で最も低く、最高の65〜69歳は23.4%だった。つまり二十代前半では、一年のあいだにこの種の活動をした人が八人に一人しかいない。残りの七人は、関心がないわけではなく、やったことがないだけである。
この数字が設計に与える影響は大きい。「ボランティアをやりたい人」を探す募集文は、母集団の一割強を取り合うことになる。そこを広げたいなら、入口の語彙を活動の種類から変える必要がある。企画をやってみたい、取材して書きたい、地方に行ってみたい、という動機のほうが分母が広い。活動の内容を先に説明し、分類の名前は後に回す。
募集の文面で決まるのは、断る人の数
募集文を直す目的は、応募を増やすことだけではない。合わない人に早く降りてもらうことのほうが、長い目で見れば効く。二回目で来なくなる人の多くは、関心を失ったのではなく、想像していた負荷と実際が違った人である。
だから文面には四つを必ず書く。活動の頻度(週に何回、何曜日の何時から)、場所(対面か遠隔か、どこに集まるか)、期間(いつまでの区切りがあるか)、そしてやらないこと。四つめを書く団体は少ないが、これがいちばん効く。営業活動はしない、宗教や政治の勧誘はしない、飲み会への参加は任意、といった線を先に見せると、不安で見送っていた層が動く。
書き方の順も効く。冒頭に団体名と活動の一行説明を置き、次に直近の企画を一つだけ具体的に書く。「来月、県内の商店街で聞き取り調査をして冊子にします」のように、日付と場所と成果物が入った一文があると、読んだ人は自分が何をするのかを想像できる。実績の列挙や理念の説明を先に置くと、分量が増えるだけで判断材料にならない。
会費と役職の扱いも同じ列に並べておきたい。会員の資格をどう得てどう失うのか、会費を払っていない人に議決権があるのかは、会則に書いてあるべき事柄である。条文の起こし方は学生団体の会則|定款の必要的記載事項14項目から条文を起こすでまとめた。大学の公認団体かどうかで募集のできる場所が変わる点は学生団体とサークルの違い|大学の公認という線はどこで効くかで扱っている。
名簿を作った時点で、法律上の立場が変わる
応募フォームを作り、名前とメールアドレスを表に並べた瞬間に、団体は個人情報の保護に関する法律の義務を負う側へ移る。同法第16条第2項は、個人情報取扱事業者を、個人情報データベース等を事業の用に供している者と定義し、国の機関や地方公共団体などを除くとしているだけである。規模の下限は置かれていない。
個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、ここをはっきり書いている。事業の用に供しているの「事業」とは一定の目的をもって反復継続して遂行される同種の行為であって社会通念上事業と認められるものをいい、営利・非営利の別は問わない。そして、識別される特定の個人の数の多寡にかかわらず該当するとし、法人格のない、権利能力のない社団(任意団体)又は個人であっても該当すると明記している。十人の名簿でも対象になるという意味である。
| やろうとしていること | 条文 | 実際にすること |
|---|---|---|
| 応募フォームを作る | 第17条(利用目的の特定) | 何に使うかをできる限り具体的に書く |
| フォームで名前を受け取る | 第21条第2項 | 取得の前に利用目的を本人へ明示する |
| 名簿を保管する | 第23条(安全管理措置) | 共有範囲を役職で区切り、端末ごと渡さない |
| 名簿を協力先へ渡す | 第27条(第三者提供の制限) | あらかじめ本人の同意を得る |
| 連絡先を別の用途に使う | 第18条(利用目的による制限) | 目的の範囲を超えるなら同意を取り直す |
難しい作業ではない。フォームの冒頭に「いただいた連絡先は本団体の活動案内のみに使い、第三者へ渡しません」と一行置き、名簿の置き場所を代表と会計に限り、イベント共催先へ参加者名簿を流すときは同意欄を設ける。これだけで列挙した条文のほとんどを満たす。流出してからでは、どれも間に合わない。
入ってから三か月で、残るかどうかが決まる
集めた人が抜けていく原因で最も多いのは、やることがなかったという一点である。新しく入った人は最初の数回で、自分がここにいてよい理由を探している。役割が渡されなければ、見学者のまま終わる。
渡すのは責任の重い役職でなくてよい。議事録を取る、交流サイトの投稿を一本書く、備品を数える、次回の会場を予約する。どれも一時間で終わり、やった事実が人に見える。これを初回から割り振ると、二回目に来る理由が生まれる。
部や班を増やす判断も、同じ考え方で決まる。箱を先に作ると空席が目立つので、仕事が人の手に余ったときに初めて割る。箱と権限の対応をどう描くかは学生団体の組織図|NPO法の機関設計を任意団体に当てて描く、代表がどこまで抱えるべきかは学生団体の代表の役割|代表権と業務執行の線を法律から引き直すで整理した。
三か月を越えて残った人は、次の年の新歓で勧誘する側に回る。人集めが毎年ゼロから始まるか、前年の人数を土台にできるかは、この三か月の設計で分かれる。
よくある質問
Q. 交流サイトでの発信と、対面のビラ配りはどちらが効きますか。
A. 役割が違うので比べにくい。発信は関心のある層に届きますが、母集団の一割強しか拾えません。対面は無関心だった人に初めて情報を渡せるので、分母を広げるのはこちら側です。発信で詳細を置き、対面で入口を作る組み合わせが現実的です。
Q. 人数は何人くらいを目指すべきでしょうか。
A. 目標人数から決めると、たいてい空席が増えます。先に企画を置き、その企画を回すのに必要な役割を数えてから人数を出してください。十人で回る企画に三十人を集めると、二十人は見学者になります。
Q. 他大学の学生や社会人を入れても構いませんか。
A. 任意団体であれば制限はありません。大学の公認団体は、構成員の要件が学内の規程で決まっている場合があるので、先に確認が必要です。会員の種類を分けて、議決権の有無を会則で書き分けておくと揉めません。
Q. 応募フォームに学籍番号や住所まで書かせるのは問題ですか。
A. 使う目的が説明できない項目は外してください。利用目的をできる限り特定する義務があるため、目的の立たない項目は集めるほどリスクだけが増えます。郵送物を出す予定がないなら住所は要りません。
Q. 途中で辞めた人の連絡先はどうすればよいですか。
A. 退会の時点で活動案内という利用目的が消えるので、保管し続ける理由がなくなります。一定の期間で消す決まりを会則か内規に置き、引き継ぎのときに名簿ごと渡さない運用にしておくのが無難です。学生時代の活動を仕事の側からどう語るかという論点はFLASPOでも取り上げています。
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