任期満了後の家族の選択|配偶者の就労と子の進学をどう決めるか

任期の終わりは、世帯ごとの決算日になる

三年目の秋、来年度の住民票をどこに置くかという話題が食卓に出る。隊員本人の進路だけを考えるなら選択肢は数えられるが、配偶者の勤め先と子どもの学年が加わると、答えは一本に決まらない。総務省が令和8年4月24日に公表した調査によると、令和2年4月1日から令和7年3月31日までの直近5年間に任期を終えた隊員は8,762人で、そのうち6,163人が同じ地域に住み続けている。割合にすると70.3パーセントで、前年の調査の68.9パーセントから上向いた。

注目したいのは、その70.3パーセントが一枚ではないことだ。活動地と同じ市町村に住んだ人が5,038人、活動地の近隣市町村に移った人が1,125人と、二つの層に分かれている。さらに他の地域へ転出した2,013人のうち228人は、転出先からなお活動地と関わりのある地域協力活動等に従事していた。住所を動かしたかどうかと、地域との縁が切れたかどうかは別の話である。家族で来た世帯にとっては、この「近隣」と「転出しても関わる」という二つの余地が実務的な意味を持つ。

任期終了後の居住地 人数 割合
活動地と同一市町村内に定住 5,038人 57.5%
活動地の近隣市町村内に定住 1,125人 12.8%
他の地域に転出 2,013人 23.0%
その他 75人 0.9%
不明 511人 5.8%
合計(直近5年間の任期終了者) 8,762人 100%
総務省「令和7年度 地域おこし協力隊の定住状況等に係る調査結果」(調査時点は令和7年5月1日)をもとに作成
募集中の地域コンテスト

読んだら、地域に行ってみよう

地域が出したお題に、オンラインでアイデアを応募できます。受賞すると、現地に無料で招待されます。

募集中の地域をすべて見る

二人分の収入で計算すると、残る形が変わる

単身の隊員であれば、任期後の収入が一時的に落ち込んでも自分の生活費だけで吸収できる。世帯ではそうはいかない。同じ市町村に定住した5,038人のなりわいを見ると、起業が2,296人で45.6パーセント、就業が1,753人で34.8パーセント、就農・就林が583人で11.6パーセント、事業承継が70人で1.4パーセントだった。起業がいちばん多いという構成は、任期後の暮らしを「自分で売上をつくる仕事」に寄せた人が半分近くいることを示している。

起業は立ち上がりの数年が薄い。だからこそ、世帯のもう一方が安定した給与を受け取れるかどうかが設計の要になる。就業1,753人の中身を見ると、行政関係(自治体職員、議員、集落支援員等)が480人で最も多く、観光業が176人、農林漁業の法人や森林組合などが138人、地域づくり・まちづくり支援業が99人、教育業が78人、医療・福祉業が72人、製造業が58人と続く。配偶者の資格や職歴がこの並びのどこかに当たるなら、任期中から求人の出方を見ておく価値がある。医療・福祉と教育は、条件不利地域でも欠員が出やすく、通年で募集が立つ分野だ。

逆に、二人そろって起業や就農に向かう設計は、同じ年に二つの不確実を抱えることになる。片方を給与所得で固め、もう片方が立ち上がったら入れ替える、という段取りを任期の2年目あたりで話しておくと、三年目の判断が軽くなる。

子どもの学年は、数年先まで見てから決める

小学校に入る前の子どもを連れてきた世帯が、三年後に直面するのは通学の問題だ。文部科学省の令和7年度学校基本統計(調査期日は令和7年5月1日)では、全国の小学校は18,607校で前年度より215校減り、児童数は581万2,375人で12万9,358人減って過去最少となった。中学校は9,827校で55校減、生徒数は310万5,297人で3万5,835人減である。学校そのものが年ごとに減っている局面で、転入先の学区がこの先も同じ形で残るとは限らない。

同じ統計で逆方向に動いている数字もある。小中一貫で9年間を通す義務教育学校は261校と23校増え、在学者は8万6,924人で7,113人増えて過去最多になった。小規模校を単純に閉じるのではなく、小中をまとめて1校として残す形が広がっているということだ。子どもが小学校高学年なら、進学先の中学校が統合予定か、義務教育学校への移行が検討されているかを教育委員会に確かめておくと、三年後の見通しが立つ。

確認の順番としては、まず通学区域と通学手段(スクールバスの有無と路線)、次に部活動や進学実績、最後に高校の選択肢までを一度に聞くのが早い。高校は市町村をまたぐことが多く、ここで初めて「近隣市町村に住む」という選択肢が現実味を帯びる世帯もある。

同じ市町村でなくてもよい、という抜け道

定住という言葉は、活動した集落にそのまま残ることだと受け取られやすい。実際の統計はもっと緩い。近隣市町村に移った1,125人は、仕事や学校の都合で生活の拠点を少しずらしながら、地域との関係は保った人たちだ。買い物や通院の便、配偶者の通勤時間、高校までの距離という条件を足し合わせると、隣の市のほうが世帯としては成り立つ、という結論はめずらしくない。

住まいの確保では空き家が選択肢に入る。総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査(調査日は2023年10月1日)によれば、総住宅数6,504万7千戸のうち空き家は900万2千戸で、2018年の848万9千戸から51万3千戸増えて過去最多、空き家率は13.8パーセントと過去最高になった。数としては潤沢に見えるが、賃貸や売却に出ていない家、残置物が片づいていない家も含まれるため、使える物件に当たるまでには時間がかかる。任期の最終年に入ってから探し始めると、年度末の引き渡しに間に合わないことがある。

なお、地域との関わりを残したまま遠くへ移る形もある。転出した2,013人のうち228人は、転出後も活動地と関わる活動を続けていた。家族の都合で都市部に戻る判断をしても、関わり方がゼロになるわけではない。FLASPOのように学生や若い世代と地域をつなぐ取り組みも、こうした「離れてからの関わり」の受け皿になりうる。

任期中にやっておくと、三年目が軽くなる

令和7年度の隊員は8,196人で、前年度から286人増えた。受け入れているのは1,187自治体(20道県と1,167市町村)で、受入可能自治体1,461団体の約81パーセントに当たる。年齢構成は20代が33.6パーセント、30代が30.1パーセント、40代が20.1パーセントで、子育て期と重なる層が8割を超える。つまり、家族をどうするかという問いは例外ではなく、隊員の多数派が通る道だということになる。

入口の段階で家族ごと試す仕組みも整ってきた。短期で地域を体験する「おためし地域おこし協力隊」は令和7年度に1,450人、実際の活動を体験するインターンは1,414人が参加している。着任前にこの枠を使い、配偶者も一緒に数日を過ごしておくと、気候や買い物の距離といった生活の手触りを二人で共有できる。着任後に認識がずれて、三年目の話し合いが振り出しに戻る事態を避けられる。

任期中の準備としては、一年目に生活インフラと学校の下調べ、二年目に配偶者の就労先候補と住居の目星、三年目に契約と手続き、という割り振りが現実的だ。起業を選ぶ場合は、自治体の起業支援や補助の申請時期が年度単位で動くため、二年目の秋には担当課と話を始めておきたい。

よくある質問

定住率70.3パーセントという数字は、今いる隊員の何割が残るという意味ですか。違う。母数は直近5年間に任期を終えた8,762人で、現役の隊員8,196人とは別の集団を指している。これから任期を終える人の結果は、この数字には入っていない。

配偶者が協力隊に応募していなくても、一緒に移住できますか。制度が住民票の異動を求めるのは隊員本人である。家族の帯同を禁じる仕組みではないため、世帯で移る例は多い。ただし住居の広さや家賃の扱いは自治体ごとに条件が異なるので、募集要項と担当課への確認が必要になる。

子どもの学校は、任期の途中で変わる可能性がありますか。統合や再編は年度単位で進むため、在学中に通学先が変わることはありうる。小学校が年に215校減っている局面では、入学時点の学区がそのまま6年続く保証はない。教育委員会が公表する学校再編計画の対象年度を見ておくのが確実だ。

任期後に近隣市町村へ移ると、定住支援は受けられなくなりますか。支援の対象範囲は自治体が決めるため、一律には言えない。統計上は近隣市町村への移住も「同じ地域に定住」として数えられているが、補助金の要件は市町村の区域で切られることが多い。移る前に、転居先と転出元の両方の窓口で確認しておきたい。

起業と就職で、世帯としてどちらが有利ですか。有利不利は収入の立ち上がりの速さと、配偶者の就労状況で入れ替わる。同一市町村に定住した人では起業が45.6パーセント、就業が34.8パーセントと起業が多いが、これは任期中に準備できた人の結果でもある。準備の時間を確保できないまま任期が終わるなら、まず給与所得を確保してから事業に移る順番が無理が少ない。

出典と関連記事

本文の数値は次の資料によった。総務省「令和7年度 地域おこし協力隊の隊員数等について」(令和8年4月24日)、総務省「地域おこし協力隊」、文部科学省「令和7年度学校基本統計(学校基本調査の結果)確定値」、総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」。

あわせて、協力隊の卒業後は地方創生の成績表になるか、子育てしながら地方へ戻る前に、協力隊の住居は自治体がどこまで持つかも参考になる。


アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

FLASPO

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。

FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。

賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。

コンテストを探す▶︎

FLASPOで募集中のコンテスト

自治体や企業が出したお題に、学生・若者がオンラインでアイデアを応募できます。募集中のものも、これまでのお題と結果も、一覧で見られます。