待機児童は9年で10分の1以下になった
保育園に入れないという話を前提に戻る先を考えると、判断を間違える。こども家庭庁が公表した令和8年4月1日時点の集計では、全国の待機児童数は2,435人である。ピークだった平成29年の26,081人と比べると10分の1以下で、平成30年から令和7年まで減少が続いた。令和8年は前年の2,254人から181人増えて、減少傾向が初めて反転した年にあたる。
増えた理由は国の資料にはっきり書かれている。保育の受け皿拡大と就学前人口の減少によって全国的には逓減傾向にあるが、申込者数が想定以上に増えて利用定員が足りなくなった自治体や、保育士を確保できずに利用定員が減った自治体があり、東京都などで大きな増加が見られた。つまり全国の数字が増えたのではなく、特定の地域で増えた分が全国値を押し上げた形である。
背景にある働き方の変化も押さえておきたい。女性の就業率は令和7年に83.6パーセント(25歳から44歳、前年は81.9パーセント)、共働き世帯の割合は79.7パーセント(前年は77.3パーセント)まで上がっている。保育所等の利用率は令和7年4月1日時点で全年齢平均55.7パーセントと、就学前児童の過半数を超えた。
残っている待機児童の4分の3は都市部にある
地方へ移る側にとって重要なのは、2,435人がどこにいるかである。こども家庭庁の資料は、待機児童が都市部に多く見られ、全体の75.5パーセント(1,838人)を占めると明記している。ここでいう都市部は、首都圏の埼玉・千葉・東京・神奈川と近畿圏の京都・大阪・兵庫の7都府県(指定都市・中核市を含む)に、その他の指定都市・中核市を加えた範囲である。
分布はさらに偏っている。全国1,741市区町村のうち89.1パーセント(1,552自治体)で待機児童は0人である。待機児童がいるのは189自治体(全市区町村の10.9パーセント)で、前年から22自治体減った。50人以上は8自治体、うち100人以上は3自治体にとどまる。
| 待機児童数の区分 | 令和8年4月 | 割合 | 前年からの増減 |
|---|---|---|---|
| 0人 | 1,552自治体 | 89.1パーセント | 22増 |
| 1〜49人 | 181自治体 | 10.4パーセント | 25減 |
| 50〜99人 | 5自治体 | 0.3パーセント | 1増 |
| 100人以上 | 3自治体 | 0.2パーセント | 2増 |
上位の顔ぶれも都市部に集まる。令和8年4月時点で最も多いのは東京都世田谷区の166人、次が足立区106人、北区103人、町田市90人、江戸川区75人と続く。東京都以外では兵庫県西宮市75人、奈良県橿原市56人、兵庫県明石市54人が並ぶ。年齢で見ると3歳未満児が全体の96.0パーセントを占め、1歳児と2歳児だけで86.9パーセントに達する。預け始めの時期に集中する構造は、都市でも地方でも変わらない。
戻る先では、定員が埋まらないほうが課題
受け皿の全体像は逆方向に動いている。令和8年4月1日時点の保育所等の利用定員は3,016,417人で前年から12,865人(0.4パーセント)減り、利用する児童の数は2,646,756人で31,661人(1.2パーセント)減った。施設の数は40,046か所で71か所増えているのに、利用する子どもは減っている。結果として定員充足率は87.7パーセントまで下がり、前年から0.7ポイント低下した。
国の今後の方針にも、この余りへの対応が書き込まれている。過疎地域など待機児童の少ない地域では定員充足率の低下が課題になっているとして、地域分析や支援の強化により、統廃合や規模の縮小、多機能化といった計画的な取組を促進し、人口減少地域での持続可能な保育機能の確保を進めるとしている。
子育て世帯が地方へ移るときに確かめる対象は、ここで変わる。入れるかどうかではなく、通わせる予定の園が5年後も同じ規模で残っているか、統合された場合の通園距離はどうなるか、という問いになる。市町村の子ども・子育て支援事業計画や公立施設の再編計画は公表されているので、移住の相談窓口で求人の話をする前に目を通しておきたい。移動の実数から移住先を比べたい人には、0〜4歳の移動9万6544人を実数で読むという見方が役に立つ。
率で見ると、小さな自治体のほうが詰まる
人数の順位だけ見ていると、地方は安心だと読み違える。こども家庭庁の資料には待機児童率(待機児童数を申込者数で割った値)も載っていて、ここでは小規模な自治体が上に来る。北海道南幌町は待機児童26人で待機児童率10.48パーセント、福岡県水巻町は25人で3.36パーセント、宮城県富谷市は26人で2.15パーセント、奈良県橿原市は56人で2.27パーセントである。
同じ26人でも、申込者が1万人を超える区と、数百人規模の町では意味が違う。世田谷区の待機児童率は0.81パーセント、大田区は0.30パーセントで、人数の多い自治体ほど率が低いという逆転も起きている。母数が小さい町では、保育士が1人退職するだけで受け入れ枠が目に見えて減る。
増減の振れ幅も小さな自治体ほど大きい。南幌町は前年の7人から19人増え、水巻町と富谷市は前年0人から25人と26人に増えた。宅地開発や転入者の増加によって保育ニーズが急に増える地域事情にも注視が必要だと国の資料は述べている。移住者を積極的に受け入れている自治体では、受け皿の整備が追いつかない時期が生じうるということである。前の年の数字が0人だったからといって、来年も0人とは限らない。
小学校に上がった後にもう一度詰まる
保育の見通しが立っても、受け皿の問題は就学で終わらない。放課後児童クラブの令和8年度の速報値では、利用している児童の数は5月1日現在で前年から約3万人増えて約160万人となり、過去最高を更新した。一方で待機児童数は1万4,713人で、前年から1,617人減っている。保育所等の2,435人と比べると桁が一つ違う。
令和8年度からは数え方も細かくなった。やむを得ず待機となった児童のうち、自治体が関与する「こどもの居場所」を利用していると確認できた児童は3,030人で、これを差し引いた「居場所確保要支援児童数」は1万1,683人として新たに公表された。待機のうち約2割には代わりの居場所があり、残りには無いという内訳が見える形になった。速報値の段階でも市町村別の情報が公表されるようになったため、移住先の候補を絞る段階で確認できる。
共働きで戻るつもりなら、保育と学童を一続きで見る必要がある。小1で預け先が足りなくなれば、せっかく決めた仕事の勤務時間を組み替えることになる。地域の仕事を探す段階から、FLASPOのような求人の情報と自治体の放課後児童対策の資料を並べて見ておくと、生活と仕事の両方で無理のない形を選びやすい。家族の事情で戻る判断を迫られる場面の整理は、働く365万人と離職10.6万人の内訳が参考になる。
よくある質問
地方なら保育園には必ず入れるのか。全国1,741市区町村のうち1,552自治体で待機児童は0人だが、残る189自治体には地方の町村も含まれる。待機児童率で見れば10パーセントを超える町もあるため、転入予定先の最新の公表値を市町村の窓口で確認するのが確実である。
待機児童が0人なら希望の園に入れるのか。別の話である。待機児童の数え方は国の定義に沿っていて、特定の園のみを希望している場合などは集計の扱いが分かれる。希望する園に入れるかどうかは、その園の年齢別の空き状況と申込者数で決まるため、園単位の情報を聞く必要がある。
定員が余っているのに入れないことはあるのか。ある。国の資料は、保育士を確保できなかったことによる利用定員の減少を増加要因の一つに挙げている。施設の定員が書類上あっても、配置できる保育士がいなければ受け入れ枠は開かない。入園の相談では、定員ではなく実際に受け入れ可能な人数を聞くとよい。
移住前に見ておく資料はどれか。こども家庭庁の保育所等関連状況取りまとめで全国と自治体の位置を把握し、転入先の市町村が出す子ども・子育て支援事業計画で今後の定員計画を確かめ、放課後児童クラブの市町村別情報で就学後の見通しを押さえる。この3点がそろえば、受け皿の話は数字で比べられる。
出典:こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和8年4月1日)」、内閣府「黄川田内閣府特命担当大臣記者会見要旨(令和8年7月14日)」
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