入口は知らない番号からの電話ではない
詐欺という言葉から思い浮かぶのは、知らない番号からかかってくる電話かもしれない。いま投資をめぐって起きている被害は、そこではなく画面の中から始まっている。動画サイトに出てきた広告を押す、著名人の名前が付いた投資の話を読む、案内されたグループに入る、という流れである。
警察庁の確定値によると、令和7年のSNS型投資詐欺は認知件数9,523件(前年比プラス48.5%)、被害額1,288.0億円(同プラス47.9%)だった(警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」)。令和8年上半期も認知件数5,893件・被害額797.9億円と、前年同期の2倍を超える水準で続いている。
被害者の年齢層は40代から60代が多数を占める一方、20代でも男性294件・女性262件、30代では男性483件・女性441件の被害が記録されている。年齢や性別で狙われ方が決まるわけではなく、画面を見ている人すべてが対象になっている。
どこから接触されるのかを数で見る
手口を覚えるより、入口の分布を知っておくほうが身を守りやすい。令和7年の9,523件を最初の接触のしかたで分けると、次のようになる。
最初の接触手段
件数
割合
多く使われたツール
バナー等広告
3,785件
39.7%
YouTube 1,024件、投資のサイト 697件、Instagram 617件
ダイレクトメッセージ
3,549件
37.3%
Instagram 1,000件、LINE 633件、Facebook 485件
投稿
1,279件
13.4%
—
その他
910件
9.6%
—
広告とダイレクトメッセージで全体の約8割を占める。最初に接触したツール別ではInstagramが1,934件、YouTubeが1,229件、LINEが1,211件で、ここに投資のサイト1,071件、TikTok830件、Facebook822件、X815件が続く。特定のアプリを避ければよいという話ではない分布である。
そして被害が進む段階では、連絡手段がほぼ一本に集まる。被害時の連絡ツールはLINEが8,906件で全体の93.5%を占めた。広告やダイレクトメッセージで接触し、LINEのグループや個別のやり取りへ移す、という道筋が数字に出ている。
広告の中身にも共通点がある。著名人の画像や動画を無断で使ったものが確認され、「必ずもうかる」「元本保証」といった文言を含む広告も見られたと記録されている。本人が投資を呼びかけているように見えても、公式のアカウントで発信されているかは別の話である。
振り込む前に確かめる8つの項目
警察庁は、振込の前に立ち止まって確認する項目を具体的に挙げている。どれか1つでも当てはまれば、送金する前に警察へ相談するという使い方である。
項目は、SNSのダイレクトメッセージで投資話を持ちかけられた、連絡先がLINEに変わった、相手方の口座に振り込むよう言われた、投資先が金融庁の登録業者か確認していない、「必ず」「確実」「あなただけ」と言われた、著名人による無料の投資教室である、勧められた暗号資産や投資アプリを検索しても出てこない、個人名義の口座を指定されたか振込先が毎回変わる、の8つである(警察庁「SNS型投資詐欺」)。
このうち判断が早いのは登録の確認である。日本の居住者を相手に金融商品を扱うには国内の登録が必要で、海外に拠点があっても例外にならない。金融庁は免許や登録を受けている事業者の一覧を業種別に公表しており、名称や電話番号で横断して探せる検索機能も用意している(金融庁「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」)。
逆方向の確認もできる。金融庁は無登録で金融商品取引業を行う者に警告書を出し、その名称を一覧で公表している。ただし掲載されているのは警告書を出した時点で無登録営業が確認できた相手に限られるため、載っていないことは正規である証明にならない(金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」)。登録業者の名前を借りて名乗る例もあるので、連絡先が公式サイトのものと一致するかまで見る必要がある。
お金の渡し方に手口が出る
勧誘の言葉はいくらでも作り替えられるが、資金を受け取る方法には制約がある。そのため、送金の形を見ると判断しやすい。令和7年の集計では、振込型が7,135件・1,000.6億円で認知件数の74.9%、被害額の77.7%を占めた。このうちインターネットバンキングを使ったものが5,049件で、振込型の70.8%に達している。
次に多いのが暗号資産を送らせる形である。暗号資産送信型は1,898件・215.5億円で、前年から件数が149.1%増えた。振込型のうち暗号資産交換業者の口座への振込と合わせると、実質的に暗号資産で渡したものが全体の21.0%になる。送金先が交換業者やウォレットになっている時点で、取り戻せる見込みは大きく下がる。
進み方にも型がある。最初は少額を入れさせて利益が出ている画面を見せ、信用させてから高額の振込を求める。出金しようとすると手数料や税金の名目でさらに入金を要求され、被害が1,000万円を超えることもある。偽の画面に表示された利益は、入金を続けさせるための表示にすぎない。
振込先が個人名義である、毎回口座が変わる、入金を急がされるという条件がそろえば、商品の説明を読む必要はない。値動きの大きさとは別の問題として扱うべき領域である。価格変動そのものへの備えは投資のリスクを種類ごとに整理した記事で扱っている。
気づいたときに、どこへ連絡するか
送金してしまった、あるいは出金できないと気づいた時点で、連絡先は決まっている。迷っている時間が長いほど、資金が別の口座へ移される可能性が上がる。
窓口
連絡先
主に扱う内容
警察相談専用窓口
#9110
被害の相談、振込前の確認
消費者ホットライン
188
消費生活全般の相談
金融庁 金融サービス利用者相談室
0570-050-588(平日10時から17時)
詐欺的な投資勧誘に関する相談
証券取引等監視委員会 情報受付窓口
0570-00-3581
不公正な取引などの情報提供
送金先の金融機関への連絡も同時に行いたい。振込の直後であれば、口座の凍結によって資金が残る場合がある。金融庁は、職員が投資商品を勧めたり被害の調査を行ったりすることはないとして、官公庁の名をかたる電話への注意も呼びかけている(金融庁「詐欺的な投資勧誘等にご注意ください」)。
取り締まりは進んでいる。令和7年のSNS型投資詐欺の検挙件数は369件で前年比プラス183.8%、検挙人員は224人で同プラス286.2%だった。それでも認知件数9,523件との差は大きく、被害が起きてから取り戻す道筋が細いことは変わらない。送金前に止まることが、実際にはいちばん効く対策である。
同じ構図は投資以外でも起きている。関係を作ってから金銭を求める流れについては、マッチングアプリの注意点を扱った記事でも触れた。地域で働く選択肢や暮らし方を調べたい場合は、FLASPOのような運営元が明確な情報源から当たるほうが安全である。
よくある質問
著名人が勧めている投資なら安全ではないか。画像や動画は無断で使えるため、顔が出ていることは根拠にならない。確かめる方法は本人の公式アカウントを見ることだけで、広告側のリンクから飛んだ先でいくら本人の映像が流れていても確認にはならない。
少額なら試してもよいか。最初に少額を入れさせて利益が出たように見せる手順自体が、手口の一部として記録されている。試した結果として表示される数字は、次の入金を促すための表示である。試すこと自体が相手の設計に入っていると考えたい。
出金できないと言われたが、手数料を払えば戻るのではないか。出金のために追加の入金を求める形は、被害が膨らむ典型として挙げられている。ここで払っても出金されず、名目を変えてさらに要求が続く。支払う前に警察へ相談する段階である。
金融庁の一覧に載っていない業者は、すべて詐欺と考えてよいか。無登録業者の一覧は警告書を出した相手に限られるため、網羅はしていない。判断の順序は逆で、登録業者の一覧に名前があるかを先に確かめ、見つからない相手には資金を渡さないという形になる。
家族が投資グループに入っているようだが、どう声をかければよいか。本人は利益が出ていると信じているため、否定から入ると連絡を切られることがある。振込先が個人名義か、出金できたことがあるか、登録業者かを一緒に確かめる形にすると、事実のほうから話が進む。確認の途中で連絡が取れなくなる相手であれば、それ自体が答えになる。
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。
