地方国立大学の定員増は申請5件中3件|国立85校と在学60.9万人の配置

国立大学は85校、学生の2割がそこにいる

進学先を選ぶときに「地方の国立大学」と一言でまとめてしまうが、数で見ると位置づけがはっきりする。令和7年度の学校基本調査(確定値)によれば、大学は全国で812校あり、内訳は国立85校、公立103校、私立624校である。在学者数は大学全体で2,972,412人と過去最多になり、このうち国立は608,869人、公立は170,373人、私立は2,193,170人を占める。学校数では1割程度の国立が、学生数では2割を抱える構図になっている。

配置の特徴は戦後の設計にさかのぼる。新制国立大学は各県に1校を置く方針で整えられ、全ての都道府県に国立大学があるという状態が続いてきた。その後、2001年の「大学(国立大学)の構造改革の方針」で再編・統合を進める柱が立ち、統合によって校数は少しずつ動いている。令和7年度の学校基本調査の表でも、国立の大学数は前年度から1校減として記録されている。

つまり地方の国立大学は、県内に数少ない「学部を抱えた高等教育機関」であることが多い。地域の側から見れば、進学で県外に出る若者を引き止める装置であり、産業の側から見れば技術者の供給源になる。この二つの期待が、定員をめぐる議論の背景にある。

募集中の地域コンテスト

読んだら、地域に行ってみよう

地域が出したお題に、オンラインでアイデアを応募できます。受賞すると、現地に無料で招待されます。

募集中の地域をすべて見る

東京23区では学部の定員を増やせない

定員の話は、地方だけを見ていると半分しか分からない。平成30年に成立した地方大学・産業創生法(地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律)は、第13条で特定地域内の大学等の学部等の学生の収容定員を増加させてはならないと定めた。10年間の時限措置で、特定地域は政令により東京23区が指定されている。

規制の範囲は広い。文部科学省の説明資料は、23区内での大学や学部学科の新設、収容定員の増加、23区外からのキャンパス移転など、23区内で収容定員が増える行為を対象としている。例外は法令で定められた事由に限られ、スクラップアンドビルドによる学部の設置、留学生や社会人の受入れ、夜間・通信教育の学部学科、収容定員増について既に投資や機関決定を行っている場合などが挙げられている。期限は令和10年3月末までとされている。

この抑制と対になる形で、地方の側には定員を増やす特例の道が用意された。それが「魅力ある地方大学の実現に資する地方国立大学の定員増」である。国立大学全体としては定員を抑えてきた流れのなかで、特例的かつ限定的に認めるという位置づけが、文部科学省の公表資料に繰り返し書かれている。

2回の公募で、結果は0件と3件に分かれた

特例があると聞くと通りやすい枠のように見えるが、実際の採択は厳しい。令和4年度分は令和3年6月25日付で各国立大学法人に公募され、8月23日締切で申請を受け付けた。申請は2大学2件、審査結果は0大学0件である。最終的な選定にあたっては、文部科学省の審査会に加えて、地方創生の観点から内閣官房が実施した審査も踏まえるとされていた。

翌年度分では結果が変わる。令和5年度分は令和3年12月10日付で公募され、4月15日締切で申請を受け付けた。申請は5大学5件、選定は3大学3件だった。審査はヒアリング方式で、審査会の構成員6名には大学の学長や研究者、民間企業の経営者が並ぶ。

対象年度 公募の日付 締切 申請 選定
令和4年度 令和3年6月25日 8月23日 2大学2件 0大学0件
令和5年度 令和3年12月10日 4月15日 5大学5件 3大学3件

同じ制度で、申請が2件のときは全て落ち、5件のときは3件が通った。審査の観点が後から緩んだと読むのは早い。公募要領は、定員増の必要性を定量的なエビデンスに基づく人材需要分析で示すこと、地方創生に資する明確なアウトカムが見通せること、アウトカムを意識したKPIを設定することを求めている。構想の作り込みが問われる設計になっている。

選ばれた3大学が増やしたのは計180人

令和4年6月10日に公表された選定結果を見ると、増員の作り方が大学ごとに違う。島根大学は材料エネルギー学部材料エネルギー学科を新設し、入学定員80人を置いた。内訳は定員増が40人、学内措置が40人で、既存の学部から振り替えた分が半分を占める。

広島大学は情報科学部情報科学科を80人から150人へ増やした。増加数70人の内訳は定員増50人、学内措置20人である。徳島大学は理工学部理工学科を595人から625人へ増やし、増加数30人は全て定員増だが、令和7年度以降に学内措置で15人を減らす計画が併記されている。3大学の入学定員の増加は合わせて180人、うち純粋な定員増は120人となる。

構想の説明資料には、地域が抱える数字がそのまま書かれている。島根大学の資料では、県内に大学が2校しかなく私立大学がないこと、工学系に進む生徒の県外流出割合が83パーセントと分野別で最も高いこと、マテリアル関連産業で研究者や開発技術者が年間200名超不足していることが挙げられている。企業との共同研究の事業規模が1.26億円から2.69億円へ2.1倍になった実績も示されている。産学の連携規模を他大学と比べたい場合は、東北大学の共同研究1,565件のうち県内140件という内訳が物差しになる。

審査が見たのは「誰を巻き込んだか」

公募要領の趣旨には、地方国立大学が地域の高等教育機関の中核として、地方公共団体、地元産業界、他の公私立大学をはじめとする高等教育機関等を巻き込むことが前提として書かれている。大学単独の計画では要件を満たさない。地域のステークホルダーと連携し、地域の課題を把握して共有し、雇用創出や産業創出を通じて地域に貢献する取組であることが求められる。

審査で問われる項目は、受験生にとっても読む価値がある。定員増を行う学部の規模について、地域の国公私立大学の進学率や分野ごとの進学者収容率、学生の流出入状況といった定量的な分析があるか。産業構造や産業界が求める人材需要の分析があり、定員増の必要性が妥当か。全学的な定員の在り方について検討がなされているか。この三つが並んでいるため、選ばれた構想は「その地域にその学部がどれだけ足りないか」を数字で語る形になっている。

進学先を選ぶ側から見れば、新設や増員の背景に地域の人材需要分析があるかどうかは、卒業後の就職先の厚みにつながる手がかりになる。地元就職を視野に入れるなら、大学が自治体や企業とどんな枠組みを持っているかを調べておきたい。FLASPOのような地域の仕事を扱う場で求人の分野を眺めつつ、大学側の公表資料を突き合わせると、看板と実態の差が見えてくる。規模の大きな大学の例としては、大阪大学の産学連携108億円に自治体は1,690万円という配分や、九州大学の県内連携153件の内側が参考になる。

よくある質問

「地方国立大学」は制度上の区分なのか。学校基本調査のような統計の区分ではない。定員増の制度名として「魅力ある地方大学の実現に資する地方国立大学の定員増」という形で使われており、対象は国立大学法人である。東京23区については地方大学・産業創生法で収容定員の増加が抑制されているため、増やす側と抑える側が地域で分かれている。

定員増が認められた学部は入りやすくなるのか。入学定員が増えれば募集人員は増えるが、島根大学と広島大学の例では増加数の一部が学内措置、つまり他の学部からの振り替えである。大学全体の規模が同じ分だけ増えるわけではない。志望する学科の募集人員は、各大学が公表する入学者選抜要項で確認するのが確実である。

この特例はこれからも使えるのか。公表されている選定結果は令和4年度分と令和5年度分の2回で、前者は選定0件、後者は3件だった。新しい公募が行われるかどうかは文部科学省の発表を確認する必要がある。東京23区の収容定員抑制が令和10年3月末までの時限措置であることも、今後の議論に影響する。

国立大学の数は今後も減るのか。令和7年度の学校基本調査では国立の大学数は前年度から1校減と記録されている。統合や再編は2001年の構造改革の方針以降に続いてきた流れで、各都道府県に設置されてきた配置をどう保つかという論点とあわせて議論されている。

出典:文部科学省「令和7年度学校基本調査の公表について」、文部科学省「令和5年度 魅力ある地方大学の実現に資する地方国立大学の定員増の選定結果」(令和4年6月10日)、文部科学省「令和4年度 魅力ある地方大学の実現に資する地方国立大学の定員増の選定結果」(令和3年10月22日)、文部科学省「地方大学・産業創生法に基づく東京23区の収容定員増抑制について」


アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

FLASPO

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。

FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。

賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。

コンテストを探す▶︎

FLASPOで募集中のコンテスト

自治体や企業が出したお題に、学生・若者がオンラインでアイデアを応募できます。募集中のものも、これまでのお題と結果も、一覧で見られます。