地域経済の課題を四つに分ける|人口・所得・担い手・財政

地域経済の課題を四つに分ける|人口・所得・担い手・財政

「地域経済の課題」という言い方は便利すぎる。人が減ることも、賃金が上がらないことも、店の後継ぎがいないことも、財政が苦しいことも、全部この一語に収まってしまう。ところが打ち手を考える段になると、どれを指していたのかで必要な予算も担当部署もまるで変わる。まずは課題を分解し、それぞれに公的な統計で目盛りを当てるところから始めたい。

同じ言葉で呼ばれている、別々の問題

地域の現場で「うちは経済が厳しい」と言われたとき、その中身は四つくらいに分けられる。住む人が減るという量の問題、稼ぎが増えないという所得の問題、事業を継ぐ人がいないという担い手の問題、そして行政が支えきれなくなるという財政の問題である。

この四つは別々に進行するわけではない。人が減れば市場が縮み、市場が縮めば賃金が上がらず、賃金が上がらなければ若い人が出ていき、税収が細って行政サービスが薄くなる。因果が円を描いているので、どこを入口にしても他の三つに突き当たる。

だからこそ順番の設計が要る。すべてを同時に解こうとする総花的な計画は、結局どれも動かないまま終わりやすい。以下では四つのうち三つについて、公表されている数字で現在地を確かめていく。

前提として、課題の深刻さは地域によって桁違いだ。全国平均の話をそのまま自分の町に当てはめると、手当てが過剰にも過小にもなる。数字はあくまで比較の物差しとして使いたい。

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人口|2050年、いま人が住む土地の二割が無人になる

人口の見通しで最も踏み込んだ整理をしているのが、国土交通省の国土のグランドデザイン2050である。日本の総人口は2008年をピークに減少に転じており、2050年には約1億人になると見込まれている。

中身の変化のほうが厳しい。2015年から2050年にかけて、高齢人口が454万人増える一方、生産年齢人口は2,453万人、若年人口は518万人減るとされる。高齢化率は約27パーセントから約38パーセントへ上がる。働いて稼ぐ層が二千万人を超える規模で抜けていくという意味だ。

この数字を全国平均で受け取ると実態を見誤る。同じ資料は、国土を1平方キロメートルごとの地点に区切って将来人口を推計している。それによると、人口が半分以下になる地点が現在の居住地域の6割以上を占め、増える地点は約2パーセントにすぎない。増加地点は主に大都市圏に分布している。

さらに、2050年には現在の居住地域のうち2割で人が住まなくなると推計されている。地域経済の課題を人口から語るとき、想定すべきは「縮む」ではなく「消える」場所があるという水準の話になる。過疎の指定制度については過疎地域の基準をまとめた記事が参考になる。

所得|東京と沖縄で2.7倍、格差は再び開いている

稼ぎの側を見る指標が、内閣府の県民経済計算にある一人当たり県民所得だ。2021年度では、最も高い東京都が603万7千円、最も低い沖縄県が224万9千円で、その開きは約2.7倍にのぼる。

注意したいのは、この指標が個人の給与そのものではない点である。県民所得は雇用者報酬だけでなく企業所得や財産所得を含むため、本社が集まる都府県では実際の暮らし向き以上に高く出る。それでも、稼ぐ力の集中度を測る目盛りとしては有効に働く。

格差の推移も見ておきたい。一人当たり県民所得のばらつきを示す変動係数は、1990年度以降2001年度までは縮小し、2002年度から2006年度まで5年連続で拡大した。2016年度以降はふたたび縮小に向かったものの、2021年度から増加に転じ、2022年度は17.4となっている。

つまり地域間の所得差は、放っておけば縮むものではない。景気の局面によって開いたり閉じたりを繰り返してきた。若い世代の移動が賃金と結びつきやすいことを踏まえると、この指標の動きは人口の課題と直結している。

担い手|不在率は下がったが、小さい会社ほど残っている

事業を継ぐ人がいるかどうかは、帝国データバンクが毎年調べている。2025年の調査では、全国約27万社のうち後継者が不在または未定の企業は約13万8千社、不在率は50.1パーセントだった。前年から2.0ポイント下がり、7年連続の改善である。

改善は事実だが、内訳を開くと様子が違う。大企業の不在率が24.9パーセントなのに対し、中小企業は51.2パーセント、小規模企業では57.3パーセントに達する。規模が小さいほど後継ぎが決まっていない。地域経済を構成しているのはまさにその層である。

承継のやり方も変わった。2025年に代表者が交代した企業では、内部昇格による承継が36.1パーセントとなり、同族承継の32.3パーセントを初めて上回った。以下はM&Aなどが20.6パーセント、外部招聘が7.6パーセントと続く。家業を子が継ぐという前提は、すでに主流から外れている。

この変化は地域にとって悪い話ばかりではない。血縁の外から経営者を迎える道が開けば、移住してきた人や他業種から来た人が担い手になり得る。地方移住の支援制度と事業承継の支援を並べて設計する自治体が増えているのは、この文脈だ。

四つの課題を、一枚の表に置き直す

ここまでの数字を並べると、課題ごとに見るべき統計と、動かせる主体が違うことがわかる。人口の見通しは国の推計に委ねるしかないが、所得と担い手には地域の側で打てる手がある。

財政の課題については、単体で語るより他の三つの結果として現れると考えたほうが実態に近い。人が減り、稼ぎが増えず、事業所が閉じれば、税収も交付税の算定基礎も細る。財政を入口にした議論が削減の話にしかならないのは、原因ではなく結果を見ているからである。

地域で暮らす人や関わる人を増やしていく取り組みは、遠回りに見えて所得と担い手の両方に効く。FLASPOが若い世代と地域の接点づくりを続けているのも、人の流れが最後には経済の数字に返ってくるという見立てによる。

課題 確かめる統計 直近の数字 主に動かせる主体
人口 国土のグランドデザイン2050(国土交通省) 2050年に居住地域の6割超で人口半減、2割が無居住化 国・広域自治体
所得 県民経済計算(内閣府) 一人当たり県民所得は東京603万7千円、沖縄224万9千円で約2.7倍 企業・自治体
担い手 後継者不在率動向調査(帝国データバンク) 全国50.1%、小規模企業では57.3% 企業・支援機関
財政 上の三つの結果として表れる 単独の指標では測りにくい 自治体

よくある質問

四つの課題のうち、どれから手をつけるべきですか。地域の条件によりますが、比較的短い期間で数字が動くのは担い手の課題です。人口の趨勢を変えるには数十年かかり、所得構造の転換にも年単位の時間が要ります。事業承継の支援は一社ずつ結果が出るぶん、着手しやすい入口になります。

一人当たり県民所得が低い県は、暮らしにくいということですか。そうとは限りません。この指標には企業所得が含まれるうえ、住居費や通勤時間といった生活費用の差は反映されません。可処分所得から住居費を差し引いた比較では、順位がかなり入れ替わることが知られています。

無居住化が進む地域には、投資をしないほうがよいのでしょうか。推計は現在の傾向が続いた場合の姿であって、確定した未来ではありません。ただし限られた予算をどこに集中させるかという判断は避けられず、拠点となる区域に機能を集める方向が国の計画では示されています。

自分の町の課題を数字で確かめるには何を見ればよいですか。地域経済分析システムのRESASや、環境省が公開している地域経済循環分析の枠組みを使うと、市町村単位で人口と産業と所得の状況を並べて確認できます。いずれも無料で、自治体職員でなくても利用できます。


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