農業体験で仕込んだ味噌はどこから許可が要るか|32業種と漬物製造業

仕込んだ樽を持ち帰るのか、誰かに渡すのか

味噌の仕込み体験に参加すると、自分で詰めた容器をそのまま持ち帰ることが多い。半年後に開けて食べる分には何の手続きもいらない。ところが同じ樽の中身を、翌年の直売所に並べようと考えた時点で話の種類が変わる。

分かれ目は食品衛生法の「営業」に当たるかどうかである。法第4条は、業として食品を採取し、製造し、加工し、調理し、または販売することを営業と定めている。ただし農業と水産業における食品の採取業はこれに含まれない。畑から収穫して出荷するまでは営業の外に置かれているが、発酵させて別の食品にする工程は加工や製造の側に入る。

体験の受け入れ側から見ると、作る過程を見せることと、できた物を渡して対価を得ることのあいだに線がある。農家が自分の大豆で仕込んだ味噌を参加者に試食させるのと、瓶に詰めて売るのとでは、必要な手続きがそろわない。発酵食品は仕込みから出荷までの期間が長いので、売ると決めた時点で許可が間に合わないという順序の事故が起きやすい。

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許可業種は34から32へ組み替えられた

手続きの枠組みは数年前に大きく動いている。平成30年6月13日に公布された食品衛生法等の一部を改正する法律で、政令が定める営業許可業種が34の製造業・販売業・飲食業等から32業種へ再編された。厚生労働省の資料は、区分が昭和47年以降見直されておらず実態に合っていなかったことを理由に挙げている。

発酵食品に関わる変化は二つある。ひとつは統合で、原材料や製造工程が共通する業種をまとめる考え方から、みそ製造業としょうゆ製造業が「みそ又はしょうゆ製造業」の一本になった。もうひとつは新設で、漬物の製造が新たに許可の対象となる漬物製造業として置かれた。あじの開きや明太子などを扱う水産製品製造業、液卵製造業、食品の小分け業も同じ回で加わっている。

逆の動きもある。食中毒のリスクが低いと整理された乳類販売業、氷雪販売業、容器包装に入れられたものの仕入れと販売だけを行う食肉販売業や魚介類販売業は、許可から届出へ移った。許可の数を増やしたのではなく、リスクの高さに合わせて並べ替えたという形である。

漬物は2024年5月31日で猶予が切れた

新しい区分が動き出したのは第3次施行日の令和3年6月1日である。制度が切り替わる際には事業を続けられるよう猶予が置かれ、営業者の立場ごとに五つの類型で整理された。

このうち、新しく許可業種になった営業の猶予がいちばん重い。漬物の製造、水産製品の製造、液卵の製造、食品の小分け業は、改正法本則第9条の経過措置で令和6年5月31日までに新しい許可を取るものとされた。都道府県の条例で届出や許可を受けていた漬物の製造も、この日までに切り替えが必要だった。

名称や区分が変わっただけの業種は扱いが違う。みそ製造業のように旧法の許可を持っている場合は、その許可の有効期間が満了するまで新規の取得を求められない。許可期間が5年なので、令和3年4月1日に更新した施設なら令和8年3月31日まで旧許可で続けられる。同一施設でみそ製造業としょうゆ製造業の両方を持ち、期限が揃っていない場合には、さらに別の経過措置が用意された。

猶予されないものもある。資料は、営業許可の取得が猶予される期間であっても、HACCPに沿った衛生管理は第3次施行日から本格施行されると明記している。衛生管理計画を作って記録する作業は、許可の有無とは別に始まっていたことになる。

許可、届出、どちらも不要の三段

許可の対象にならない営業が自由というわけでもない。令和3年6月1日からは営業届出制度が動いており、許可業種以外を営む者は、一部の例外を除いて保健所に届け出ることになっている。届け出る内容は届出者の氏名、施設の所在地、営業の形態、主として取り扱う食品等の情報、食品衛生責任者の氏名である。施設基準はなく、更新も不要で、既に営業していた事業者の期限は令和3年11月30日までとされた。

やろうとしていること 手続き 節目
味噌やしょうゆを作って売る みそ又はしょうゆ製造業の許可 旧許可は有効期間の満了まで
漬物を作って売る 漬物製造業の許可(新設) 令和6年5月31日で猶予終了
常温保存できる包装食品だけを売る 届出も不要 衛生管理計画も不要
収穫物の出荷前の調製だけを行う 届出不要(採取の一部とみなす) 令和3年6月1日から
冷凍・冷蔵倉庫業 届出が必要 既存は令和3年11月30日まで

届出さえ不要な営業も規定されている。食品や添加物の輸入業、貯蔵または運搬のみを行う営業、常温で長期間保存しても品質の劣化による危害のおそれがない包装食品の販売業などがこれに当たる。農家や漁家が行う出荷前の調製のように採取の一部とみなせる行為も、届出と衛生管理計画の作成が要らないとされている。1回の提供食数が20食程度未満の給食施設も同じ扱いである。

体験の受け入れを組み立てるときは、この三段のどこに自分が立つのかを先に決めると迷いが減る。農泊の現場が何を指標にしているかは農泊の地域交流の測り方の側から見える。

地域の発酵食は文化の枠でも数えられている

売る手続きとは別に、その食べ物を地域の資産として位置づける枠組みもある。文化庁の100年フードは、地域で世代を越えて受け継がれてきた食文化を認定する取り組みで、これまでに329件が認定されている。

認定の条件は三つで、地域の風土や歴史に根差した地域特有の食文化であること、地域の広がりのなかで二世代以上にわたって継承され現存していること、100年を超えて継承することを宣言する団体が存在することである。部門は江戸時代から続く郷土の料理を扱う伝統の部門、明治・大正に生み出された食文化の近代の部門、これからの継承を目指す未来の部門に分かれる。

令和8年2月27日の発表によれば、令和7年度は応募46件のうち29件が追加で認定された。応募できるのは地方自治体、協議会、食関連団体、観光協会やDMO、民間団体などの団体で、個人からの応募は受け付けていない。漬物や味噌のように家ごとに作り方が違う食べ物は、この種の枠組みで言葉にしておくと、体験の説明にも使える。

酒の場合は許可の系統が変わり、酒税法の製造免許が必要になる。蔵の見学や仕込みの手伝いが体験として成立している理由はそこにあり、参加者が自分で造る形にはできない。蔵のある地域との関わり方は地酒の町と関わる、体験の種類ごとの様子は人気の農業体験に整理した。

よくある質問

体験で作った味噌を参加者が持ち帰るのは問題ありませんか。自分が食べるために持ち帰る分には営業が成立しない。受け入れ側が作って渡し、その対価を受け取る形にすると製造や販売の側に寄るため、保健所に扱いを確かめるのが安全である。

農家が自分の畑の野菜で漬物を作って直売所に出す場合はどうなりますか。漬物の製造は改正後に許可業種となっており、令和6年5月31日で猶予期間が終わっている。野菜の出荷そのものは採取の一部とみなされるが、漬けた物を売るなら漬物製造業の許可が必要になる。

許可と届出の違いは何ですか。許可には施設基準があり有効期間の満了ごとに更新するが、届出には施設基準も更新もない。届出は食品衛生監視員が対象の事業者を把握できるようにするための仕組みとして、HACCPの制度化に合わせて作られた。

学生が関わる余地はありますか。発酵食品は仕込みから出荷まで時間がかかるので、体験の設計、記録、販路の下調べといった工程が残りやすい。地域側の募集に応じる形なら、FLASPOのような窓口から探せる。産地の作物との結び方は農業体験で伝統野菜に関わるも参考になる。

出典は厚生労働省の資料「営業届出制度の創設と営業許可制度の見直し」(PDF)および営業規制に関する情報、文化庁の100年フードの案内と令和8年2月27日の報道発表である。


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