教師不足3,827人の町に外から人が入る|起業人55人と特別免許状591件

学校に人が足りないのは、定数が足りないからではない

ある町の小学校で四月に担任が決まらない。こういう話を聞くと、国が決めた教員の数が足りていないのだと受け取りたくなる。ところが文部科学省の令和7年度「教師不足」に関する実態調査(令和8年3月5日公表)を読むと、そうではないことがわかる。義務標準法に基づく公立小中学校の教員定数は充足しており、充足率は全国平均で100.9%ある。それでも令和7年5月1日時点で、学校に配当されている数に対して3,827人の欠員が出ている。不足率は0.45%である。

校種別では小学校1,699人(0.44%)、中学校1,031人(0.47%)、高等学校508人(0.33%)、特別支援学校589人(0.71%)。小中学校を合わせると2,730人になる。令和3年度の同じ時点は2,065人・0.25%だったので、四年で人数も率も上がった。調査対象は67の都道府県・指定都市教育委員会と大阪府豊能地区教職員人事協議会の計68で、不足がまったく出ていないのは8にとどまる。

ここで言う「配当数」は、法律が算定する定数ではなく、各教育委員会が学校に置くことにしている数を指す。つまり不足は、採用計画と実際の欠員のあいだで生じる運用上のずれである。産育休や病休の代替が見込みより必要になった、臨時的任用の名簿が薄くなった、といった事情が重なる。欠員を埋める手は、正規採用の枠を広げることだけではない。

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教育の枠に入っている起業人は55人

外から人を入れる仕組みのひとつが、総務省の地域活性化起業人である。自治体が企業の社員を受け入れ、地域の課題に当たらせる制度で、かつては地域おこし企業人と呼ばれていた。令和7年度 地域活性化起業人の状況等(令和8年4月24日公表)によれば、令和7年度の人数は合計1,215人。企業派遣型904人、副業型299人、シニア型12人という構成で、前年度から344人増えた。受け入れた自治体は538団体、企業派遣型の送り出し企業は475社で、こちらも85社増えている。

担当する分野の内訳を見ると、教育は55人で全体の5%にあたる。首位のDXは293人・24%、次が観光振興やDMO設立などで253人・21%だから、教育は上位から数えて六番目の枠になる。数としては大きくないが、農林水産の34人よりは多い。年齢は40代が26.5%、30代が24.6%、50代が23.4%と中堅が中心で、20代は14.6%、60歳以上は10.9%である。

分野 人数 割合
DX(自治体DX・地域社会DX) 293人 24%
観光振興・観光誘客・DMO設立等 253人 21%
地域経済活性化・雇用・人材育成等 135人 11%
移住促進・都市農村交流等 86人 7%
地域産品の開発・販路開拓等 85人 7%
教育 55人 5%
広報業務 50人 4%
農林水産 34人 3%
総務省「令和7年度 地域活性化起業人の状況等」より主な分野を抜粋(合計1,215人)

町営塾がひとつ立ち上がるまでの順番

55人が実際に何をしているのか。報告書が挙げる山口県阿武町の例は、仕事の運び方がそのまま残っている。受け入れ先の企業はFoundingBaseで、分野は教育。最初にやったのは小中学校での授業見学と、教育委員会・教員・住民への聞き取りだった。ここで児童生徒の学習実態をつかみ、「適切な学習方法の定着」が足りていないという仮説を立てている。

次が検証である。一か月だけ町営塾を試しに動かし、学力が上がることを確かめた。それから保護者や住民への説明会でねらいを伝え、令和8年4月に町営塾を正式に開いた。見学と聞き取り、仮説、短期の試行、合意形成、常設という五段である。教員の欠員を直接埋める仕事ではないが、放課後の学習をどこが引き受けるかという設計を担っている。

学校の中の業務に近い例もある。愛媛県伊予市はソフトバンクを受け入れ、園児の登降園管理や個人記録を扱う保育業務支援システムを令和8年2月に動かし始めた。あわせて、体育の専門教員がいない学校で跳び箱などの指導を支えるAIスマートコーチの導入を進めている。人を足す代わりに、人がいなくても回る形をつくるという向きだ。どちらの制度を使うかは自治体側の設計次第で、地域活性化起業人の全体像を押さえておくと比べやすい。

教壇に立つ側に回るには別の免許が要る

ここまでの話は、企画や仕組みづくりの側である。授業を担当する立場に回るには、教育職員免許状が必要になる。社会人がその壁を越える道として用意されているのが特別免許状で、昭和63年の教育職員免許法改正でできた。文部科学省の教員免許状授与件数等調査によれば、令和6年度の授与は591件、制度ができてからの累計は3,976件である。

校種別の内訳は小学校60件、中学校181件、高等学校336件、特別支援学校14件。高校に偏っているのは、専門教科で外部の経験が評価されやすいためだ。令和5年度は611件だったので、直近はわずかに減っている。それでも600件前後という水準は、年に200件台だった令和2年度までと比べれば倍以上になった。

授与件数の少なさは、教壇の人手不足を特別免許状だけで埋められないことを意味する。同じ年度の臨時免許状は9,898件、特別非常勤講師の届出は20,126件あり、中学校では免許外教科担任の許可が6,767件、高等学校では2,785件出ている。数の桁が違う。外部人材を学校に入れる主役は、いまも非常勤と免許外の運用のほうである。

副業型という細い入口と、その使われ方

常勤で地域へ移ることが難しい人のために、副業型とシニア型がある。令和7年度は副業型が299人・148団体、シニア型が12人・10団体だった。全体の四分の一近くが副業型という比率は、三年前には考えられなかった広がり方である。

北海道中富良野町の副業型の例は、教育の分類でありながら授業の外側に出ている。町にゆかりはなかった人が、学園を通じた教育の実践に触れたことをきっかけに関わり始めた。小学校の総合的な学習の時間で、子どもたちが地域の魅力を色で表した万年筆インクをつくり、それを実際に商品化してふるさと納税の返礼品や販売イベントに回している。親子ワークショップやアントレプレナーシップ教育も手がけた。

この型が効くのは、学校に足りないものが人数ではなく企画である場合だ。欠員の穴埋めは任用の話であって、外部人材の制度では解けない。一方で、授業の素材をつくる、放課後の受け皿を設計する、校務の記録を電子に移す、といった仕事は外から来た人のほうが速い。自分がどちらを担えるのかを先に決めておくと、受け入れ先との話が噛み合う。地域と仕事のつなぎ方を広く見たい人はFLASPOの情報も合わせて使ってほしい。

よくある質問

教師不足の3,827人は、教員が足りない地域だけの数字ですか。いいえ。68の調査対象のうち不足が出ていないのは8だけで、ほとんどの都道府県・指定都市で生じている。ただし不足数の多い自治体が全体を押し上げる傾向があり、令和3年度と比べて23自治体は改善し、43自治体は悪化した。地域差は大きい。

地域活性化起業人として教育に関わると、授業を受け持てますか。原則として受け持てない。免許状を持たない人が教科の指導を担当することはできないため、阿武町の例のように町営塾や社会教育の側、あるいは伊予市の例のように校務の仕組みの側に入るのが通常である。教壇に立つことが目的なら、特別免許状や特別非常勤講師の制度を調べる順番になる。

特別免許状はどこに申し込むのですか。授与権者は都道府県の教育委員会で、教育職員検定を経て授与される。多くの場合は学校や教育委員会側の推薦が前提になるため、まず受け入れ先を見つけるほうが現実的である。令和6年度の591件という規模から見て、誰でも通る道ではない。

協力隊から教育の仕事に進む道との違いは何ですか。地域おこし協力隊は住民票を移して自治体の委嘱を受ける立場で、任期の後に教育業へ進む人が78名いる。起業人は所属企業に籍を置いたまま派遣される形なので、移住を伴わない選択がしやすい。進路としての比べ方は任期後に教育の仕事へ進む協力隊員の内訳が参考になる。

自治体が受け入れを決めるときに見るのはどこですか。分野の偏りが手がかりになる。DXと観光で全体の45%を占める一方、教育は5%、民生は9人にとどまる。受け入れの実績が薄い分野では、自治体側に仕様を書く経験が少ない。阿武町のように最初の数か月を実態把握に充てる前提で提案するほうが、話が進みやすい。


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