徳島県名西郡神山町は、サテライトオフィスや神山まるごと高専の話題で名前が挙がることが多い。では、この町に関わっている外の人は何人いるのか。調べ始めるとすぐに行き止まりになる。国の調査は都道府県までしか数えておらず、町も関係人口の人数を公表していない。数えられていないものを数字で語ると推測になるので、ここでは「どこまでなら確かめられるか」と「町が代わりに置いている目標は何か」を順に見ていく。
町の単位では公表されていない
関係人口の全国値は国土交通省が推計している。令和5年度の調査では、18歳以上の居住者のうち訪問系が約1,884万人で18.3パーセント、非訪問系が約379万人で4.3パーセント、合わせて約2,263万人で22.0パーセントという結果だった。特定の地域と関わりのない人は約8,012万人で78.0パーセントである。調査は全国18歳以上を対象としたインターネット調査で、一次調査が12万サンプル、二次調査が4万サンプル。この設計で市区町村まで割ると1地域あたりの回答数が極端に少なくなるため、報告資料は都道府県別の推計を参考値として示すところで止めている。
同じことは町の側にも言える。神山町が公表している統計は人口・人口動態・年齢構成が中心で、関係人口という区分は置かれていない。関係人口の調査がいくつあり、それぞれ母数がどう違うのかは関係人口の調査データは三つあるで整理した。町別の人数を示す資料は、少なくとも現時点で国にも町にも存在しない。神山町の関係人口は「わからない」のではなく「まだ数えられていない」と言うのが正確である。
徳島県を関わり先とする人は17万人
都道府県までなら数字がある。関わり先の都道府県別に見た関係人口は、徳島県が17万人。令和2年国勢調査の居住人口59万人で割った「居住人口当たり関係人口」は0.29である。全国計は関係人口2,263万人、居住人口10,275万人で0.22なので、徳島県は全国平均より高い。最も高いのは山形県の0.54、次が秋田県の0.50で、岩手県と山梨県が0.43と続く。低いのは埼玉県の0.11、神奈川県の0.12、愛知県の0.13。住む人が多い県ほど分母が大きく、値は下がる。
| 関わり先 | 関係人口 | 居住人口 | 居住人口当たり |
|---|---|---|---|
| 山形県 | 48万人 | 90万人 | 0.54 |
| 秋田県 | 42万人 | 83万人 | 0.50 |
| 岩手県 | 44万人 | 102万人 | 0.43 |
| 徳島県 | 17万人 | 59万人 | 0.29 |
| 香川県 | 23万人 | 78万人 | 0.29 |
| 高知県 | 17万人 | 58万人 | 0.29 |
| 愛媛県 | 22万人 | 110万人 | 0.20 |
| 全国計 | 2,263万人 | 10,275万人 | 0.22 |
見る角度を変えると順位も変わる。訪問系の回答者に「関わりのある地域」を都道府県で答えてもらった集計では、東京都が9.9パーセントで最も多く、大阪府5.6パーセント、神奈川県4.6パーセントが続く。徳島県は0.8パーセントで、宮崎県や福井県と同じ水準である。関わり先として選ばれる回数で見れば小さく、県の人口で割れば平均より大きい。どちらも同じ調査の数字なので、神山町の話をするときにどちらを引くかで印象が逆になる点は押さえておきたい。
町が数えているのは移住の側の数字
町が自分で出している数字は、関係人口ではなく人の出入りに向いている。人口から見る神山町によれば、人口は2026年4月1日で4,529人。1955年の合併時は20,916人、2010年は6,465人だった。2025年度の人口動態は出生9人・死亡116人で自然動態が107人の減、転入169人・転出128人で社会動態が41人の増。合計では65人の減少である。高齢化率は52.06パーセントで、全国の29.4パーセントの2倍近い。年少人口は292人で、1学年あたり約19人にあたる。
このページに一つだけ、関わりの入口に近い数字がある。移住交流支援センターを経由した転入者が、前年の16人から2025年度は32人へ倍増した、という記載である。しかもこの32人には住民票の異動がない人も含まれている。住民票を動かさずに町と行き来する人がこの窓口を通っていることになり、関係人口と移住の境目に立つ数字と言える。町の人口推移そのものの読み方は人口4,529人の神山町で詳しく追った。
第3期つなプロが置いた目標
神山町の創生戦略は「まちを将来世代につなぐプロジェクト」と呼ばれ、略称はつなプロ。第1期が2016年度から2020年度、第2期が2021年度から2025年度で、2026年度から2030年度の第3期が始まっている。第3期では施策領域に「自然環境づくり」が加わり、すまいづくり・ひとづくり・しごとづくりなどを含む7つになった。基本方針は3つで、数字だけで進捗を見ないよう質的な目標としても置かれている。第1期・第2期の成果としては、官民協働の推進母体である一般社団法人神山つなぐ公社の設立が挙げられている。
数値目標は社会動態に集約されている。国立社会保障・人口問題研究所の推計では2060年に1,379人まで減り、子どもは1学年あたり約4人になる。これに対し町は、毎年40人の新しい転入が生まれ続ければ2060年に3,190人が残ると試算し、2060年に3,000人を維持するという長期目標を立てた。45年間で548人の転入超過が必要になる計算で、年に換算すると12人。短期の目標は直近5年の平均プラス11人からプラス12人(2025年から2029年)へ、わずかに上積みする形で置かれている。あわせて0歳から14歳を301人から309人へ、15歳から24歳を279人から286人へ、25歳から44歳は660人から598人の減少にとどめる、という年代別の数字も示されている。
学生が通れる入口は三つある
関係人口の人数を数えない代わりに、第3期は関わりの入口を具体の事業名で並べている。一つめは「小学校留学」で、県外の小学生を2週間から1か月程度、広野小学校と神領小学校で受け入れる新規事業。滞在中は子どもが学校で学び、一緒に滞在する保護者が暮らしを体験する。計画書はこれを関係・交流人口の拡大と位置づけ、将来の移住につなげる筋道として書いている。二つめは「助っ人大学生」で、地元出身の学生が長期休業中に子どもの学習支援や多世代の交流づくりに入る仕組み。学生側から見れば、出身地と縁を切らずに関わり続けられる枠である。
三つめは起業の側で、町民と関係人口が一緒に挑戦する仕組みづくりと、新規事業と関係人口を育てる2日間の起業イベントがプロジェクト部門に挙がっている。これらに加えて、2023年に開校した神山まるごと高専が町の学びの選択肢を増やし、中学生が進路を考える材料になっている。ただし高専生は町に住むため、関係人口ではなく居住者として数えられる点は区別が必要だ。学生のうちに地域と関わる入口を探すなら、FLASPOのような学生向けの場も含め、住まずに続けられる関わり方から当たっていくのが現実的である。町の協力隊の規模は神山町の協力隊は3人だけで確かめられる。
よくある質問
神山町の関係人口は何人か。公表された数字はない。国の調査は都道府県別までが参考値で、町も人数を出していない。徳島県を関わり先とする関係人口17万人という値から町の分を割り出す方法もないため、人数として示せる数字は存在しない。
サテライトオフィスの社数はわかるか。企業の進出状況は徳島県が一覧を出しているが、町ごとに分けた公表値は国にも県にもない。町に何社あるかを一つの数字で答えられる資料は見つからない。第3期の計画書も、サテライトオフィスの撤退を今後起こり得る変化の一つとして挙げるにとどめている。
移住を考える前に関われる方法はあるか。移住交流支援センターが窓口になっており、2025年度はここを経由した転入者が32人。住民票の異動がない人も含む数字なので、まず行き来する段階から相談先として使える。小学校留学のように滞在から入る事業も第3期で立ち上がっている。
町の人口はこれからどう動くのか。計画書は、神山まるごと高専の卒業生が社会に出る2027年度以降、ここ数年の大きな転入超過が落ち着くと見込んでいる。社会動態がプラスだったのは直近5年のうち3年で、5年平均はプラス14人。目標の年12人は、この水準を維持し続けることを意味する。
徳島県の0.29という数字は高いのか低いのか。居住人口当たりでは全国平均の0.22を上回り、四国では香川県と並ぶ。一方で関わり先として選ばれる割合は0.8パーセントで、47都道府県の下位に入る。分母を住民数に取るか回答数に取るかで評価が変わるので、どちらの集計かを明記して使う必要がある。
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