自治体の計画書には「関係人口の創出により地域に活力が生まれる」といった文が並ぶ。では、その活力は何で測られているのか。国の調査を一通り当たってみても、関係人口の社会的効果という項目の数字は出てこない。代わりに見つかるのは、住んでいる地域の活動にすら8割が参加したことがないという一次調査の結果である。効果を語る前に、比べる相手の水準がどこにあるのかを押さえておきたい。
社会的効果という公表値は置かれていない
国土交通省が令和5年度に行った調査は、全国18歳以上を対象としたインターネット調査で、一次調査が12万サンプル、二次調査が4万サンプル。報告資料の構成を見ると、推計結果・流動・都道府県別・関わり方・訪問頻度・滞在期間・交通手段・所要時間・滞在場所・過ごし方・関わる理由・移住意向という順に並ぶ。地域側に何が起きたかを測る設問は入っていない。調査の設計が関わる人の側から組まれているため、受け入れた地域の変化は対象外になっている。
金額に置き換える試みは別にある。消費額から換算する考え方は関係人口の経済効果はどう測るかで扱った。担い手の不足を埋められるかという問いも、組織への加入という形で部分的には数えられる。社会的効果という言葉が指す範囲は広く、公表資料の側にそれと一対一で対応する指標がない。だから「効果があった」と書かれた文を見たときは、何を代わりに測った数字なのかを先に確かめる必要がある。
住む地域の活動は81.1パーセントが未参加
同じ調査の一次調査には、居住地における地域活動への参加状況を尋ねた設問がある。結果は、活動の主体として実施している人が3.8パーセント、定期的または継続的に参加している人が13.5パーセント、参加したことがある人が1.6パーセントで、「参加したことはない」が81.1パーセント。住んでいる土地の活動でこの水準である。関係人口の議論は外から関わる人の話として進むが、内側の参加率がこの数字だと知っておくと、外の人に期待されている役割の大きさが見えてくる。
| 地域活動の種類 | 参加したことはない |
|---|---|
| 農林漁業等の産業支援に関する活動 | 91.9% |
| 多文化共生に関連した活動 | 89.5% |
| その他の活動 | 88.5% |
| 障がい者を対象とした活動 | 88.4% |
| 高齢者を対象とした活動 | 83.1% |
| 安全な生活のための活動 | 80.9% |
| 健康や医療サービスに関係した活動 | 79.9% |
| 災害に関係した活動 | 77.0% |
| まちづくりのための活動 | 76.0% |
| 子どもを対象とした活動 | 70.2% |
| スポーツ・文化・芸術・学術に関係した活動 | 69.3% |
| 地域活動計 | 81.1% |
活動別に見ると幅がある。未参加が最も少ないのはスポーツ・文化・芸術・学術に関係した活動の69.3パーセントと、子どもを対象とした活動の70.2パーセント。どちらも約3割が関わった経験を持つ。逆に最も高いのは農林漁業等の産業支援に関する活動の91.9パーセントで、9割を超える。自分の趣味や子どもの用事と重なる活動には人が入り、産業を支える活動には入らない。外から関わる人に一次産業の現場を期待する施策が多い一方で、住民の側でも最も参加されていない領域だという対応関係がここに出ている。
入る理由と入らない理由は別々に効く
参加している人に理由を尋ねた結果では、最も多いのが「職場、自治会、PTA等の取組みの一環として参加している」で、次が「自分や家族に関係のある問題として認識している」だった。所属していることや当事者であることがきっかけになっており、地域をよくしたいという動機が先に立つ構図にはなっていない。年代で割ると入口が入れ替わる。18歳から34歳では「知人等に誘われた」が最も多く、35歳から64歳では職場や自治会の一環が最多、65歳以上では「いざという時や困った時に助け合える関係性を構築したい」が首位になる。
参加していない人の理由は、最も多いのが「時間的な負担が大きい」で、次が「地域社会とのつながりが煩わしい」である。年代別では18歳から64歳までが時間の負担を挙げ、65歳以上では煩わしさが上に来る。注目したいのは、この二つが性質の違う壁だという点だ。時間は制度の側で調整できるが、煩わしさは関わり方の設計に関わる。外から関わる関係人口は、住んでいる人ほど濃い人間関係を背負わずに済むため、二つめの壁が低い位置にある。関わりの深さごとの分布は関係人口の地域事例とはで型に分けて整理した。
2,263万人は52.5パーセントの内側にある
関係人口の規模をもう一度置いておく。令和5年度の推計では、訪問系が約1,884万人で18.3パーセント、非訪問系が約379万人で4.3パーセント、合わせて約2,263万人で22.0パーセント。特定の地域と関わりのない人は約8,012万人で78.0パーセントである。一方、一次調査で「関わりのある地域の有無」を尋ねた結果は、地域ありが52.5パーセント、地域なしが47.5パーセントだった。半数には関わりのある地域があるのに、関係人口として数えられるのは22.0パーセントにとどまる。
差が生まれるのは定義の絞り方による。出張で定期的に訪れているだけの回答や、あてはまる地域がないという回答を単独で選んだ人は、関わりのある地域なしに振り替えられている。関係人口は「関わりがある」という自己申告をそのまま採った数ではなく、関わり方の中身で選り分けた後の数である。複数回答で型を見ると趣味・消費型が1,098万人で最も多く、次いで参加・交流型が681万人、直接寄与型が437万人。母数の大きい部分は買い物や趣味を通じた関わりで、地域の運営に直接入る層はその半分以下になる。
効果を測るならどの数字を見るか
社会的効果そのものの公表値がないなかで、使える代理の指標はいくつかある。一つは居住人口当たりの関係人口で、全国は関係人口2,263万人を令和2年国勢調査の居住人口10,275万人で割った0.22。都道府県別では山形県の0.54が最も高く、秋田県が0.50、岩手県と山梨県が0.43と続き、低い側は埼玉県の0.11、神奈川県の0.12である。人口の少ない県で値が高くなる傾向があり、住民一人あたりで何人の外の関わりを抱えているかという読み方になる。ただし都道府県別はサンプル数の制約から参考値として示されている。
もう一つは組織への加入のように、地域の運営に実際に入ったかどうかを見る数字である。担い手としての位置づけは関係人口は担い手不足を埋めるのかで確かめられる。学生が地域に関わる段階で言えば、関わった回数や滞在日数を自分で記録しておくと、後から効果を説明する材料になる。公表統計が追いつかない領域なので、FLASPOのような学生向けの活動でも、関わった事実を残す作業が結果として評価の土台になる。
よくある質問
関係人口が増えると地域の活動参加も増えるのか。この調査では、関係人口であることと居住地の活動参加を結び付けた集計は行われていない。二つの数字は同じ一次調査から取れるものの、因果を示す形では公表されていないため、増えると言い切れる根拠はない。
81.1パーセントという数字はいつの調査か。令和5年9月19日から10月3日に実施された調査の結果である。令和7年6月27日に国土交通省が報道発表した全国の「関係人口」は18歳以上の2割強と同じ調査にもとづく。
活動別の数字を足すと100パーセントを超えるのはなぜか。活動別は種類ごとに参加状況を尋ねた単一回答の集計で、種類をまたいだ合計ではない。表の最後にある地域活動計は各活動の合計値として算出された区分であり、種類別の数字と並べて読むためのものである。
自治体が関係人口の効果を示すときは何を使っているのか。多くは登録者数やイベントの参加者数、ふるさと納税の件数といった自前の集計である。国の調査と定義が揃っていないため、他の自治体と並べて比べることは難しい。数字を見るときは、母数と集計期間が書かれているかを先に確認したい。
参加しない理由に時間が挙がるなら、短い関わりなら増えるのか。調査は不参加理由までを示しており、関わり方を短くした場合の変化は測っていない。一方で65歳以上はつながりの煩わしさを最上位に挙げており、時間を短くしても解けない壁がある層が存在する点は読み取れる。
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