地域に関わる仕事を探していると、地域おこし協力隊という名前が真っ先に出てくる。令和7年度の隊員数は8,196人で、取り組んでいる自治体は1,187団体ある。ただ、総務省の地域力創造グループが所管する地域人材の制度は協力隊だけではない。集落支援員は専任で3,270人、特定地域づくり事業協同組合が雇って派遣している職員は833人いる。似た文脈で語られるのに、入口の条件も任期の考え方も違う。並べて見ないと選びようがないので、公表資料の数字で突き合わせてみる。
目的の書き分けが、そのまま募集の形に出ている
総務省が令和8年3月にまとめた集落対策の資料に、はっきりした一文がある。集落支援員は集落点検と集落のあり方に関する話し合いの促進に従事する人材の確保を目的とし、地域おこし協力隊は外部人材の定住促進による地域の担い手の確保を目的とする、という書き分けだ。どちらも集落を支えるが、前者は守りの機能、後者は攻めの機能として整理されている。
この違いは条件に跳ね返る。協力隊は都市地域から過疎地域などへ住民票を移すことが前提になっていて、移住が制度の中身に組み込まれている。集落支援員にそういう要件はない。むしろ資料が挙げている専任支援員の属性は、約9割がそれまで暮らしていた自治体で活動、約5割が50代以下、約5割が元会社員か元公務員か元教員というものだ。つまり集落支援員は、もともとその土地にいた人に自治体が委嘱する形が主流である。地元に戻った人や既に住んでいる人が地域の仕事に関わる入口としては、協力隊より当てはまりやすい。
委嘱の方法も決まっている。会計年度任用職員としての任用か、委託契約による任用が想定されていて、特別職としての任用は集落支援員にはなじまないと明記されている。自治会長などが兼務する場合は、委嘱状の交付によることも含まれる。
人数と実施団体数を並べる
令和7年度の数字で三つを並べると、規模の差と広がり方の差が同時に見える。協力隊は8,196人で前年度から286人増え、取組自治体は1,187団体になった。受入可能な自治体が1,461団体あるので、その約81パーセントが動いていることになる。集落支援員は専任3,270人と兼任3,145人で、専任の設置団体は6県458市町村である。全国の市町村は1,718あるから、専任を置いているのは4分の1強にとどまる。
| 制度 | 人数 | 実施団体 | 一人あたりの措置額の上限 |
|---|---|---|---|
| 地域おこし協力隊 | 8,196人 | 1,187団体 | 550万円(報償費等350万円+活動経費200万円) |
| 集落支援員(専任) | 3,270人 | 6県458市町村 | 500万円 |
| 集落支援員(兼任) | 3,145人 | 155団体 | 40万円 |
| 特定地域づくり事業協同組合の派遣職員 | 833人 | 141組合 | 人件費450万円(R8引き上げ後) |
兼任の3,145人は自治会長などとの兼務で、措置額の上限が一人40万円と専任の500万円から大きく下がる。ただし兼任であっても週あたり15時間30分以上活動する場合は専任と同じ扱いになるという注記が付いている。週15時間半という線が、兼務と本業の境目として引かれているわけだ。
組合に雇われて複数の職場を回るという形
三つめの特定地域づくり事業協同組合は、人の立場がいちばん違う。自治体が委嘱や委任するのではなく、組合が職員を直接雇い、組合員である地域の事業者へ派遣する。農業、林業、漁業、食品加工、建設、運送、飲食や宿泊といった仕事を季節ごとに組み合わせ、年間を通じた働き口を作る。全国141組合の組合員を合わせると843事業者で、認定するのは都道府県知事、10年の更新制である。
令和7年4月1日までに採用された派遣職員は833人だ。年代は20歳代が267人で32パーセント、30歳代が211人で25パーセント、40歳代が168人で20パーセント、50歳代が126人で15パーセント、60歳代以上が53人、10歳代が8人。10代から30代までで約6割を占める。居住の状況を見ると、他の都道府県から移住した人が424人で51パーセント、同じ都道府県内の他市町村から移住した人が103人、以前から市町村内に住んでいた人が219人、転居せず市町村外から通勤している人が87人である。
注目したいのは内訳の注記で、移住者のうち57人がUターン者、35人が地域おこし協力隊の経験者と書かれている。協力隊の任期が終わったあと組合の職員になるという移り方が、少数ではあるが実際に生じている。退職後の動きも追跡されていて、これまでの退職者のうち組合員企業に直接雇用された人が103人で29パーセント、市町村内の組合員以外の企業に就職や起業をした人が87人で25パーセント、市町村外に転居した人が116人、所在が分からない人が46人だった。約半数が組合のある市町村にそのまま残っている。
組合の数はまだ途中の段階にある
組合数の推移を見ると、この制度が立ち上がり途上であることがよく分かる。令和2年12月に2組合、令和3年12月に28、令和4年12月に66、令和5年12月に92、令和6年12月に106、令和7年12月に136と伸びてきた。令和8年4月1日の交付決定ベースでは141組合、41道府県144市町村である。
さらに令和7年12月1日時点で全国1,718市町村を対象にした活用意向の調査がある。認定済みが140市町村、令和7年度中に認定見込みが3、令和8年度中が33、令和9年度中が12で、活用意向ありが合計188市町村。加えて検討中が242市町村あり、両者を足すと430市町村になる。全市町村の4分の1が視野に入れている計算だ。令和7年3月には改正法が成立し、組合員以外への派遣について、員内利用の20パーセントまでという上限が、関係市町村などへの派遣に限って50パーセントまで緩められた。働き先の選択肢が広がる方向の改正である。
予算も動いている。令和8年度の当初予算額は6.2億円で、前年度の5.6億円から増えた。あわせて助成対象経費の上限が引き上げられ、派遣職員の人件費は一人年400万円から450万円へ、事務局運営費は年600万円から670万円へ変わった。
任期の切れ方と、次の制度への乗り換え
協力隊には原則1年から3年の任期がある。直近5年間に任期を終えた隊員は8,762人で、そのうち6,163人、70.3パーセントが同じ地域に定住した。令和7年3月末までに任期を終えた隊員は累計15,045人にのぼる。任期が切れたあとどうするかという問いは、毎年2千人規模で発生していることになる。
総務省の資料は、その先の受け皿として集落支援員を挙げている。任期終了後に当該地域に定住し、集落支援員として活動を継続するケースがあると明記されていて、集落支援員の委嘱先として行政経験者や元地域おこし協力隊員が例示されている。組合の側にも協力隊経験者が35人いる。制度のあいだを移る動線は、少なくとも紙の上では通っている。
協力隊の全体像や応募の条件は過疎化と若者のUターンに、任期後の定住の数字は地域コミュニティと移住に整理がある。応募の前に試す仕組みについてはZ世代が協力隊を選ぶ前に見る数字が参考になる。FLASPOでは地域で働く入口の募集情報も扱っている。
よくある質問
三つのうち、地元に住んだままで就ける制度はどれか。集落支援員が最も近い。専任支援員の約9割がそれまで暮らしていた自治体で活動しているという数字がある。組合の派遣職員でも、以前から市町村内に住んでいた人が219人、転居せず通勤している人が87人いるので、合わせて3割強は移住していない。協力隊だけは住民票の異動が前提になる。
公募はどこで見つかるのか。協力隊は自治体ごとの募集が全国の情報サイトに集まるが、集落支援員は自治体が委嘱する形なので、市町村の広報や募集ページに単発で出ることが多い。組合の職員採用は組合自体が行うため、組合のある市町村か組合の窓口に当たることになる。制度ごとに探し方が別だと考えたほうがよい。
どの制度がいちばん収入が安定するか。公表されているのは自治体に対する財政措置の上限額であって、本人の給与額ではない。ただし組合の職員は組合に直接雇用される形なので、雇用関係という点では分かりやすい。資料も、地域づくり人材の雇用によって所得の安定と社会保障の確保を図ると書いている。
集落支援員の必須業務は何か。集落点検の実施と、集落のあり方についての話し合いの促進の二つである。その結果を踏まえて必要と認められた維持や活性化の取り組みを担うことも想定されているが、こちらは必須ではない。
出典はどこか。協力隊の数字は総務省の令和7年度 地域おこし協力隊の隊員数等について(令和8年4月24日)、集落支援員は制度概要と今後の集落対策に向けて、組合は特定地域づくり事業協同組合についてに載っている。
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