少子高齢化の問題点とは?働き手・社会保障・地域に表れる負荷

少子高齢化の問題点とは?働き手・社会保障・地域に表れる負荷

人口が減ることより、かたちが変わることが効く

少子高齢化を語るとき、総人口の減少だけが取り上げられることが多い。だが暮らしに直接効いてくるのは、人数そのものよりも年齢の構成が変わることのほうだ。総務省の人口推計によれば、2025年10月1日時点の総人口は概算で1億2,321万人、前年同月から59万人減っている。このうち15歳から64歳の生産年齢人口は7,352万2千人で、総人口に占める割合はおよそ59.7パーセント、すでに6割を下回った。入口の側はさらに細くなっている。厚生労働省の人口動態統計では、2024年の出生数は68万6,061人となり、統計が始まって以来はじめて70万人を割り込んだ。合計特殊出生率は1.15で、こちらも過去最低である。生まれる人が減り、支えられる側が増え、その間にいる年代が薄くなる。問題点として語られる事柄は、ほぼすべてこの三つの動きの組み合わせから生じている。

出典:総務省統計局「人口推計」、厚生労働省「令和6年人口動態統計の概況」。

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働き手が足りない、という言い方では足りない

人手不足という言葉は求人倍率の話として受け取られやすいが、いま起きているのは景気による需給の揺れではなく、母数そのものの縮小である。生産年齢人口は1995年前後を頂点に減り続けており、景気が悪化しても以前のように働き手が余る状態には戻りにくい。影響の出方は業種によって大きく異なる。医療や介護、建設、運輸、農林水産業のように、働く人の数がそのままサービスの量に直結する分野では、需要が増えているのに供給が細るという逆方向の圧力がかかる。介護を必要とする人が増える一方で介護職員の確保が追いつかない構図は、その典型だ。地方ではさらに事情が重なる。進学や就職で若い世代が都市部に出たまま戻らない地域では、残った働き手の高齢化が同時に進む。事業を続けたくても後を継ぐ人が見つからず、黒字のまま廃業する事業所が出てくる。働き手の不足は、賃金や採用の問題である前に、地域にどんな仕事が残るかという問題に変わりつつある。

社会保障は、現役世代の負担として積み上がる

高齢化がまず数字に表れるのは社会保障の領域だ。国立社会保障・人口問題研究所の社会保障費用統計によると、令和5年度の社会保障給付費は135兆4,928億円だった。前年度より2兆6,809億円減っているが、これは新型コロナウイルス対策の関係費が縮小したことによるもので、高齢化に伴う基調的な増加が止まったわけではない。内訳を見ると、年金と医療だけで全体のおよそ四分の三を占める。給付の原資は保険料と公費であり、その多くを働いている世代が負担している。支えられる人が増え、支える人が減れば、一人あたりの負担が重くなるのは避けられない。保険料率の引き上げ、窓口負担の見直し、給付開始年齢の調整といった対応が繰り返し議論されるのはこのためだ。負担と給付のどちらを動かしても痛みが伴うため、合意に時間がかかる。その間も人口構成は動き続けるので、判断が遅れるほど選択肢は狭まっていく。

部門 令和5年度の給付費 全体に占める割合
年金 56兆3,936億円 約41.6パーセント
医療 45兆5,799億円 約33.6パーセント
福祉その他 33兆5,192億円 約24.7パーセント
合計 135兆4,928億円 100パーセント

割合は金額から算出した。出典:国立社会保障・人口問題研究所「令和5年度 社会保障費用統計」。

地域の機能は、人口が尽きる前に止まる

人口の減少がある一線を越えると、暮らしを支えていた仕組みが順番に維持できなくなる。最初に影響が出やすいのは、利用者の数がそのまま採算を左右するものだ。路線バスの本数が減り、最寄りの停留所がなくなる。商店が閉じ、日用品を買うのに車で30分かかるようになる。診療所の医師が引退しても後任が来ず、通院先が隣の市になる。小学校が統合されて通学距離が伸びれば、子育て世帯はさらに流出しやすくなる。行政の側も無傷ではいられない。税収が細る一方で、高齢化によって福祉や医療の支出は増える。職員数を絞り込んだ結果、災害対応や施設の維持にあてる余力が乏しくなる自治体も出ている。消防団や自治会、祭りの担い手が確保できず、地域の互助が先に弱っていくことも多い。ここで見落とされがちなのは、人がゼロになるずっと手前でこうした機能が失われるという点である。統計上はまだ住民が暮らしていても、生活を続けるための条件が先に欠け始める。

打ち手は「増やす」だけではない

対策というと出生数を増やす話に寄りがちだが、仮に出生率がいま上向いたとしても、その世代が働き手になるまでには20年前後かかる。当面の数十年は、少ない人数で社会を回す前提で仕組みを組み替えるしかない。方向はいくつかある。育児と仕事を両立できる環境を整えて、働きたい人が働けない状態を減らすこと。高齢者や女性、外国人材が参加しやすい労働市場をつくること。自動化や情報技術で一人あたりの生産性を上げること。そして、住んでいなくても地域を支える人を増やすことだ。移住や定住だけを解決策に据えると、限られた人口の奪い合いにしかならない。そこで注目されているのが、副業や二拠点生活、継続的な訪問といったかたちで地域と関わる関係人口という考え方である。地域の現場で若い世代の関わりをつくってきたFLASPOの実感としても、いきなり移り住むより、まず関わる入口があるほうが人は動きやすい。地方側で何が起きているかは地方の人口減少はどのくらい深刻?データ・成功事例・若者の関係に、減少そのものの背景は日本の人口減少はなぜ起きる?若者世代への影響と対策を徹底解説に、関わり方の類型は関係人口とは?総務省の定義と大学生が関わる5つの方法を解説にまとめている。

よくある質問

少子化と高齢化は別々の問題ですか。
原因は分けて考えられるが、影響は重なって表れる。生まれる人が減れば将来の働き手が減り、平均寿命が延びれば支えられる人が増える。両方が同時に進むことで、支える側と支えられる側の比率が急速に変わる。

出生率が回復すれば解決しますか。
すぐには解決しない。いま生まれた世代が働き始めるまでに20年ほどかかるうえ、親になる年代の人数自体がすでに減っている。出生率が上がっても出生数がしばらく減り続ける可能性がある。

社会保障給付費が前年度より減ったのはなぜですか。
新型コロナウイルス対策に関する費用が縮小したことが主な要因である。高齢化による年金や医療の増加傾向が反転したわけではない。

都市部なら影響は小さいですか。
時間差があるだけで無関係ではない。地方から流入していた若い世代が減れば都市部の人口も頭打ちになり、高齢者の絶対数は都市部のほうが多い。介護施設や医療機関の不足は大都市圏でも課題になっている。

外国人材を増やせば働き手の問題は解決しますか。
不足を和らげる効果はあるが、それだけでは足りない。受け入れる側に住まいや日本語学習、生活相談の体制が必要で、整わないまま人数だけ増やすと定着しない。

個人にできることはありますか。
関心のある地域に継続して関わることが、結果として担い手不足を和らげる。ふるさと納税で応援する、休暇に現地で手伝う、副業として地域の仕事を請けるなど、生活を変えずに始められる形が増えている。

「2040年問題」とは何を指しますか。
団塊ジュニア世代が高齢者になり、高齢者数がほぼ頂点に達する一方で、支える現役世代が大きく減ると見込まれる時期を指す言い方である。医療や介護の需要が集中し、自治体の運営そのものが難しくなる地域が出ると予測されている。


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