地域メディアはSNSに置き換わったか|コミュニティ放送346社と能登の22.5%

町の名前が出てくる番組は、どこが作っているのか

地元の祭りや災害の様子を伝える媒体を数えようとすると、はじめに出てくるのは放送の側の数字である。総務省の令和7年版情報通信白書「事業者数」によれば、2024年度末の民間放送事業者数は、地上系民間基幹放送事業者が540社、衛星系民間放送事業者が39社である。注目したいのは540社の内訳で、そのうち346社はコミュニティ放送を行う事業者が占めている。

コミュニティ放送は、原則として一つの市町村の一部の区域を放送対象地域とする免許である。つまり放送局として数えられている事業者の6割以上が、県域にも届かない範囲を相手にしている。同じ白書の「放送サービスの提供状況」に進むと、種類別の社数が並ぶ。

区分 社数 時点
地上系民間基幹放送事業者(合計) 540社 2024年度末
 うちコミュニティ放送 346社 2024年度末
地上系民間テレビジョン放送 127社(うち兼営31社) 2024年度末
中波放送(AM) 47社 2024年度末
超短波放送(FM) 396社 2024年度末
短波放送 1社 2024年度末
V-Lowマルチメディア放送 0社 2024年度末
衛星系民間放送事業者 39社 2024年度末
ケーブルテレビ事業者 452者 2023年度末
総務省「令和7年版情報通信白書」の記載から作成

テレビとラジオを足すと127社、47社、396社、1社で571社になるが、テレビとラジオを兼営する31社が重複するため合計は540社に落ち着く。FMの396社から346社を引いた50社ほどが、県域をカバーするいわゆる県域FMにあたる。地上テレビジョン放送の127社という数も、47都道府県に系列局が並ぶ構造をそのまま映している。V-Lowマルチメディア放送は2024年度末時点で放送を行う事業者がいない状態で、制度としては残っているが実体が消えた枠である。

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加入世帯は増え、普及率は12年間ほとんど動かない

ケーブルテレビは、地上放送や衛星放送の再送信に加えて、自主放送チャンネルで市町村の議会中継や学校行事を流してきた媒体である。白書が載せている数字では、登録に係る自主放送を行う有線電気通信設備によりサービスを受ける加入世帯数は約3,184万世帯、世帯普及率は約52.4%となっている。いずれも2023年度末の値だ。

この普及率を時系列で見ると、話の様子が変わる。白書のデータ集に付いているCSVをたどると、2013年は2,864万世帯で51.5%、2023年は3,184万世帯で52.4%である。10年間で320万世帯ぶん増えているのに、普及率は0.9ポイントしか上がっていない。世帯数そのものが増えた分を追いかけただけで、普及の度合いは踊り場に入っている。

内訳も動いている。同軸ケーブルを使うRF方式は2013年の2,767万世帯から2023年の3,109万世帯へ増えた一方、IPマルチキャスト方式は97万世帯から74万世帯へ減った。ここでいう普及率は住民基本台帳の世帯数から算出した値で、加入世帯数には受信障害対策の世帯も含まれる。数え方の前提を踏まえても、おおよそ2世帯に1世帯は自主放送チャンネルを受け取れる場所にいる、という水準が10年以上続いていることになる。地域の情報を運ぶ回線は、新しく敷かれたのではなく、すでに敷かれたまま残っているという読み方のほうが実態に近い。

元日の夕方、被害が大きかった町ではテレビが開かれなかった

媒体の数と普及率がわかっても、肝心の場面で使われたかどうかは別の問題である。総務省は2024年11月から2025年3月にかけて、2024年1月の石川県能登地方の地震について被災地の住民へのアンケートと自治体等へのインタビューを実施した。その結果は白書のコラムにまとめられている。

発災から数時間のあいだに最初に使われた手段を2016年の熊本地震と比べると、携帯電話、携帯メール、AMラジオが減り、地上波放送が高い割合を示した。白書はその理由として、熊本地震の本震が午前1時半頃だったのに対し、能登の地震は元日の午後4時頃だったことを挙げている。発災直前にテレビを見ていた人、直後につけられた人の比率が違ったという見立てである。

ところが居住地域で分けると、様子は反転する。特に被害が大きかった地域(石川県穴水町、内灘町、志賀町、珠洲市、七尾市、能登町、輪島市、富山県氷見市。調査では「地域A」と呼ばれている)で、発災時にテレビ放送を最初に利用した人は22.5%にとどまった。それ以外の調査対象地域では46.1%と45.9%で、倍の開きがある。

さらに踏み込んだ図がある。「発災前に有用だと考えていた割合」と「発災時に利用した割合」を並べると、地域Aは66.4%に対して48.0%。他の二地域は66.0%に対して61.9%、67.5%に対して63.2%で、ほぼ重なっている。有用だと思っていたのに使えなかった差が、被害の大きい地域にだけ現れた。白書は停電や伝送路の断線による停波が起きたことに触れ、放送ネットワークの強靱化が必要だと書いている。

偽の情報が流れた経路は、Xだけではなかった

同じ調査には、SNSの側の数字も載っている。SNSを利用している人のうち、能登半島地震に関連する真偽の不確かな情報をSNS上で見かけた人は51.9%、見かけた情報を自分で拡散した人は全体の9.2%だった。全国を対象にした調査と比べると、被災地のほうが見かけた割合が高い。

媒体別では全国調査と同じくXが最も高いが、被災地では全体としてXで見かけた割合が低く、LINEで見かけた割合が高い傾向が出た。とくに治安に関する投稿について、LINEで見かけた割合が顕著に高かったと記されている。インタビュー調査では、LINEのオープンチャット機能を使った地域コミュニティのグループで偽情報や誤情報が流れていた事例も確認された。救助を求める真偽不明の投稿をきっかけに自治体へ問い合わせが入り、現場へ向かうと要救助者がいなかったという例も報告されている。

帰省や旅行で地域Aに滞在していた人の数字はもっと際立つ。真偽の不確かな情報を見かけた割合は、居住者が約半数だったのに対し、一時滞在者は約9割に達した。媒体別ではXとLINEがほぼ並ぶ。土地勘がなく、知り合いも少ない人のところへ、閉じた経路の情報が集まったという形である。地域の発信を設計するとき、誰に届くかという問いは地域のSNS発信は誰に届くか|利用率82.3%とステマ規制の線引きで扱ったが、非常時には「誰に誤りが届くか」という裏側まで含めて考える必要がある。

ニュースの入口が移っても、信頼度の順番は入れ替わっていない

平時の情報収集はどうか。白書の「情報収集手段」の節では、最も利用しているテキスト系ニュースサービスについて、ポータルサイトによるニュース配信、ソーシャルメディアによるニュース配信、キュレーションサービスの合計が、2014年の36.8%から2024年の73.0%へ上がったと書かれている。10年で倍である。新聞通信調査会が2024年に実施した調査では、50代までの世代は新聞やテレビよりインターネットを「情報源として欠かせない」と答えた割合が高かったとされる。

一方で、同じ節は各メディアの信頼度に触れ、インターネットはテレビや新聞と比べて全世代で低い信頼度にとどまっていると指摘する。入口の量と信頼の順番がねじれているわけだ。この二つを重ねると、コミュニティ放送346社やケーブルテレビ452者が置かれている位置が見えてくる。日常の接触回数ではSNSに勝てないが、間違っていないという前提で受け取られる余地は残っている。

地域の側にとって現実的な設計は、どちらかを選ぶことではない。普段の告知と人集めはSNSで回し、停電や停波を想定した連絡の筋道は放送や回線の側に確保しておく。能登の数字は、その二本立てがまだ用意されていない場所があることを示している。学生が地域の発信に関わる場合も、アカウント運用の話に入る前に、その町に放送局やケーブル局があるかどうかを確かめておくと提案の幅が変わる。地域と学生の関わりについてはFLASPOでも事例を集めている。発信の効果そのものを数字で押さえたいときはSNS発信で地域に人は来るのか|届く年代と訪問のきっかけの数字が参考になる。

よくある質問

自分の町にコミュニティ放送局があるか、どう調べればよいか。総務省の各総合通信局が管内の免許事業者を公表しており、市町村の広報紙やウェブサイトにも災害時の情報入手先として記載されていることが多い。全国で346社という規模は、1,700余りある市町村の数に対して5分の1程度にすぎないため、無い町のほうが多いという前提で探すほうが早い。

ケーブルテレビの普及率52.4%は、自分の家が加入しているかどうかとは別の話か。この数字は登録に係る自主放送を行う有線電気通信設備でサービスを受けられる世帯の割合で、受信障害対策の世帯も含めて数えられている。自主放送チャンネルを実際に見ているかどうかは、この統計からは読み取れない。

地域の投稿で災害情報も扱うべきか。能登の調査では、閉じた経路ほど真偽不明の情報が流れやすかったことが確認されている。平時の話題と非常時の連絡を一つのアカウントに背負わせると、どちらの役割も薄くなりやすい。発信元を明示する、転載しないと決めておく、といった運用の線を先に引いておくほうが安全である。

撮影や取材で地域に入るときに気をつけることはあるか。場所によって必要な手続きが変わる点は見落としやすい。国立公園や道路での撮影に要る許可は地方Vlogの撮影に要る許可|国立公園は1〜3か月、道路は7日で整理している。


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