地方Vlogの撮影に要る許可|国立公園は1〜3か月、道路は7日

同じ棚田でも、三脚を置いた場所で段取りが変わる

三脚を立てたのが国立公園の遊歩道なのか、集落の生活道路なのか、それとも借りた畑の畦なのか。地方を撮るVlogでは、構図を決める前にこの区別がついているかどうかで、公開までに必要な日数が一週間と三か月のあいだで動く。目の前の風景は地続きでも、そこにかかる法律は場所ごとに切り替わるからである。

国の窓口は大きく三つに分かれている。国立公園の区域内で何かを置いたり形を変えたりする行為は環境省、道路を通行以外の目的で使う行為は所轄の警察署長、上空を飛ばす機体は国土交通省が見る。やりにくいのは、どの制度にも「Vlog撮影」という一本の枠が用意されていない点だ。撮りたい絵が工作物の設置に当たるのか、人を集める行為に当たるのか、自分で振り分けて窓口を選ぶことになる。

撮る場所 根拠 窓口 答えが出るまでの目安
国立公園の特別地域・特別保護地区・海域公園地区 自然公園法20条3項・21条3項・22条3項 環境省 許可は概ね1〜3か月
国立公園の普通地域 自然公園法33条1項 環境省 届出(期間の定めは公表なし)
道路の上 道路交通法77条1項 所轄警察署長 京都府は標準処理期間7日
上空(無人航空機) 航空法132条の85・132条の86 国土交通省 飛行の10営業日前までに申請
8空港と重要施設の周囲おおむね1,000m 小型無人機等飛行禁止法 施設管理者・警察 そもそも飛ばせない

表の右端は、申請を出してから答えが返るまでの時間である。撮影日を先に押さえてから手続きを調べ始めると、ここが足りなくなる。

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国立公園は「機材を置くか」で線が引かれている

自然公園法に、撮影を名指しした条文はない。かわりに区域ごとに禁止・制限される行為が並んでいて、三脚やレフ板、小屋のような仮設物を置けば工作物の新築として読まれる余地が出てくる。環境省は許可が必要な区域として特別地域(第1種から第3種)、特別保護地区、海域公園地区を挙げ、根拠を自然公園法20条3項、21条3項、22条3項としている。届出で足りる行為は20条6項から8項、21条6項・7項、22条6項・7項、そして普通地域の33条1項に置かれている。

判断の細部は施行規則にある。許可基準は施行規則11条の1項から38項まで、普通地域の届出基準は14条1号から3号まで。逆に許可も届出も要らない行為は法20条9項・21条8項・22条8項を受けて、施行規則12条、13条、13条の3、15条で区域別に個別に書かれている。読み替えが多層になっているため、環境省は出先機関か都道府県の担当部局への事前相談を案内している。

提出先は令和4年4月1日に変わった。都道府県を経由する法定受託事務の地域でも、申請書と届出書は環境省へ直接出す形になっている。標準処理期間は行為の内容によって異なり、概ね1か月から3か月。撮影の日程を動かせない企画なら、ロケハンの段階で相談を入れておきたい。重なる法律も多く、同じページでは鳥獣保護管理法の捕獲、種の保存法の希少種、文化財保護法の現状変更、森林法の保安林伐採が併記されている。

道路では、撮影が条文の例に名指しされている

意外に明快なのは道路である。警視庁は道路交通法77条1項4号の対象として「ロケーション、撮影会」を例示に挙げている。4号は一般交通に著しい影響を及ぼす行為の枠で、祭礼行事や道路競走、仮装行列、著しく人目をひく装飾車、拡声器を使った放送、道路に人を集める行為、訓練、募金や物品の販売、自動運転の実証実験と並んで撮影が置かれている。1号は工事や作業、2号は石碑や広告板などの工作物の設置、3号は露店や屋台である。

申請は道路の所在地を管轄する警察署の交通規制係へ。受付は平日の8時30分から16時30分、原則として1行為につき1件、二つの署にまたがる現場はどちらに出してもよく、高速道路は高速道路交通警察隊が窓口になる。祭礼行事とロケーションで求められる添付は、行事の概要または計画書、現場付近の図面、そして進行経路と誘導員の配置、機材の置き方を示した道路使用の方法図である。

手数料は審査料で、原則として返らない。東京は工事2,700円、工事以外の行為2,100円、年間を通じた祭礼の露店1,100円、許可証の再交付700円。京都府は2,400円で、標準処理期間を7日と明記している。一方通行のような交通規制を解いてもらう必要がある場合、京都府警は1か月以上前の相談を求めている。電子申請はe-Govから出せるが、手数料の納付は警察署の窓口で行い、その場で許可証は出ない。2号の工作物を置くなら道路管理者の道路占用許可も別に要る。許可の取り方はまちを会場にするイベントの進め方と共通で、標準処理期間から逆算する日程の組み方がそのまま使える。

空から撮るなら、機体の重さと空域を先に確かめる

上空は航空法の世界になる。国土交通省の手続案内は、屋外を飛ばす100g以上の無人航空機を対象としている。飛行が原則として禁じられる空域は、地表面または水面から150m以上、空港等の周辺、そして人口集中地区。承認が必要な飛行方法は、人や物件から30m以上の距離を保てない飛行、夜間、目視外、イベント上空、危険物の輸送、物件の投下である。

区分はカテゴリーで整理されている。カテゴリーIは特定飛行に当たらないので許可も承認も要らない。カテゴリーIIは立入管理措置を講じた特定飛行で、一部は許可・承認が必要、一部は技能証明と飛行マニュアルの備えで不要になる。第三者の上空を立入管理措置なしで飛ばすカテゴリーIIIは、一等無人航空機操縦士の技能証明、第一種機体認証、国土交通大臣の承認がそろって初めて成り立つ。総重量25kg以上の機体は、2025年10月1日以降の新規申請で第三者賠償責任保険への加入が条件に加わった。カテゴリーIIの審査要領は令和7年12月18日の改正が効いている。

日程はここが一番きつい。申請は飛行予定日の10営業日前までで、土日祝は数に入らない。国土交通省自身が3週間から4週間の余裕を見るよう案内している。空港周辺、緊急用務空域、150m以上の飛行は空港事務所への申請になる。別の法律も重なる。小型無人機等飛行禁止法で、新千歳・成田・東京国際・中部国際・大阪国際・関西国際・福岡・那覇の8空港とその周囲おおむね1,000mは飛行が禁じられている。違反すれば拘禁刑または罰金が科される。

撮影日から逆算すると、動き出す順番が決まる

三つの制度は締切の長さが違うので、同じ日に全部そろえようとすると必ずどれかが遅れる。長いものから押さえるのが唯一の解き方になる。

撮影日から やること 根拠になる期間
90日前 国立公園内の行為について環境省の出先機関へ事前相談 許可は概ね1〜3か月
30日前 交通規制の解除が要るなら警察へ相談 京都府警は1か月以上前
10営業日前 無人航空機の許可・承認を申請 航空法の手続案内
7日前 道路使用許可の申請を出し終える 京都府の標準処理期間7日
当日 許可証を現場に持つ。記載事項の軽微な変更は変更届で足りる 警視庁の案内

変更の扱いにも差がある。警視庁の説明では、申請者の名称変更や現場責任者の交代、期間の短縮、同じ路線で現場を数メートル動かす程度なら変更届と許可証で済む。一方で申請者そのものの変更、始まってからの期間延長、別の路線への移動は新しい申請になる。撮り直しが前提の企画では、この境目を知っているだけで日程の組み方が変わる。

場所の手続きが済んでも、映っている人や作品の扱いは別の話として残る。誰に声をかけ、どこまで記録を残すかは写真の許可とアカウントの引き継ぎの整理が参考になる。地域の案件を学生として引き受けるときの関わり方は、FLASPOでも相談が集まりやすい領域である。

よくある質問

スマートフォン1台で手持ち撮影するだけなら、道路使用許可は要らないのか。警視庁の枠組みでは、4号は一般交通に著しい影響を及ぼす場合の許可である。歩きながら撮るだけで通行の妨げにならないなら枠の外に置かれるが、三脚を据える、人を集める、通行を止めるといった要素が入れば4号に近づく。迷ったら所轄署の交通規制係に現場の図面を見せて聞くのが早い。

国立公園の中で手持ち撮影するのはどうか。環境省のページは許可と届出が不要な行為を施行規則12条などで区域別に定めていると説明しており、何が外れるかは条文を追う必要がある。機材を地面に固定する、植物を抜く、立入禁止の区域に入るといった行為が絡むと話が変わるため、公園名を伝えて自然保護官事務所に確かめるのが確実である。

100g未満の機体なら航空法の手続きは不要か。国土交通省の手続案内は100g以上を対象としている。ただし小型無人機等飛行禁止法の8空港と重要施設の周囲おおむね1,000mは別の法律で、重さで外れる話ではない。条例や施設の管理規則で飛行を禁じている公園も多い。

許可の費用はどれくらい見ておけばよいか。道路使用許可は東京の工事以外が2,100円、京都府が2,400円で、どちらも審査料として戻らない。自然公園法の許可と航空法の許可・承認に申請手数料の記載はないが、25kg以上の機体では保険料が実質的な費用として乗る。金額よりも、相談と書類作成に取られる時間を見積もっておくほうが実務では効く。

出典は環境省の国立公園内での各種行為の許可・届出、警視庁の道路使用許可の案内、京都府警の道路使用許可の手続き、国土交通省の無人航空機の飛行許可・承認の手続である。


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