協力隊の任期後に住む場所を変える人|近隣1,125人と転出後の228人

任期の終わりに、住む場所がもう一度問題になる

三年の任期を終えたら、その家にそのまま住み続ける。地域おこし協力隊を移住の入口として見るとき、思い描かれるのはたいていこの一本道だ。ところが総務省が令和8年4月24日に公表した令和7年度の活動状況等の調査は、別の分岐をはっきりした人数で示している。令和2年度から令和6年度までの5年間に任期を終えた隊員は8,762人、そのうち「同じ地域に定住」した人は6,163人で、割合にすると70.3パーセントだった。

この70.3パーセントは一枚ではない。活動していた市町村にそのまま住んでいる人が5,038人で57.5パーセント、活動地の近隣市町村へ移った人が1,125人で12.8パーセント。ここに他の地域への転出2,013人(23.0パーセント)、不明511人(5.8パーセント)、その他75人(0.9パーセント)が加わって8,762人になる。

定住した6,163人のうち、5人に1人近くは活動した市町村には住んでいない。残るか出るかの二択で任期後を考えていると、この層がまるごと視界から落ちる。任期の長さと進路の全体像は最長3年と5年特例を整理した記事にまとめてあるので、制度の枠から確かめたい人はそちらを先に読んでほしい。

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隣の市町村へ移った1,125人が選び直したもの

住所だけが動く。この1,125人に起きたのはそういうことで、地域から離れたわけではない。調査が彼らを「同じ地域に定住」の内側に数えているのは、通勤や取引、人の付き合いが活動地と切れていないからである。

住所が動く理由は、暮らしの側にある。隊員の受け入れ先は過疎地域などの条件不利地域に限られ、多くは集落の空き家や公営住宅を借りて三年を過ごす。任期が切れればその住居は次の隊員に回ることが多く、同じ集落で借りられる家が都合よく空いているとは限らない。子どもの通学先、配偶者の勤め先、病院までの距離といった条件も、三年のあいだに動く。

住む場所を十数キロずらすだけで条件がそろうなら、ずらすほうが続く。1,125人という厚みは、その判断が珍しい例ではないことを示している。移住先を一つの集落に固定せず、車で通える範囲を面として見ておくと、任期の終わりに選べる手が増える。

転出した2,013人のうち228人は、別の場所で同じ仕事を続けている

「同じ地域に定住」から外れた2,013人を、まとめて失敗と読むのは早い。同じ資料は、この2,013人のうち228人が活動地と関わりのある地域協力活動等に従事していると注記している。住む場所は変わったが、地域に関わる仕事そのものは手放していない人たちである。

228人は転出者の1割強にあたる。人数としては小さいが、示しているものは小さくない。空き家の掘り起こし、産品の販路づくり、移住相談の窓口。協力隊で身につくこうした仕事は、その市町村の中でしか通じない技能ではなく、別の自治体にも同じ需要がある。

逆にいえば、残る約1,800人の行き先は公表されていない。都市へ戻った人、別の分野へ移った人、記録が追えていない人が混ざっている。定住率という一語で制度を採点しようとすると、この空白ごと平均に溶ける。任期後の進路の広がりは卒業後の5つの道を数字で並べた記事で確かめられるが、そこでも数えられていない人がいることは忘れないでほしい。

定住率は県によって55.6パーセントから79.6パーセントまで開く

同じ制度を使っていても、任期後に残る人の割合は地域でそろわない。直近5年の任期終了者が100人を超える県にかぎって見ると、高いほうは広島県の79.6パーセント、低いほうは宮崎県の55.6パーセントで、24ポイントほどの幅が開いている。

都道府県 任期終了者(直近5年) 同じ地域に定住 定住率
広島県 108人 86人 79.6%
北海道 1,225人 959人 78.3%
長野県 656人 512人 78.0%
島根県 388人 234人 60.3%
秋田県 179人 100人 55.9%
宮崎県 223人 124人 55.6%
神奈川県 3人 3人 100.0%
大阪府 5人 3人 60.0%
全国 8,762人 6,163人 70.3%
総務省「令和7年度における地域おこし協力隊等の活動状況等」の都道府県別任期終了者数と定住率から抜粋。令和2年4月1日から令和7年3月31日までに任期を終えた隊員の累計で、調査時点は令和7年5月1日。

表の下二行は、読み方を変えなければならない数字である。神奈川県は3人のうち3人が残って100.0パーセント、大阪府は5人のうち3人で60.0パーセント。1人の進退が20ポイント以上動かす値を、地域の受け入れ力として並べて比べることはできない。都道府県を絞る材料に使うなら、任期終了者が三桁に届いている県から見ていくほうが安全だ。

幅の原因を、資料は断定していない。仕事を自分で作れたかどうか、任期中に住居の次の当てを立てられたかどうか、受け入れ側に任期後の枠があったかどうか。どれも効きそうだが、県別の表だけでは切り分けられない。応募先を見るときは、県の平均ではなく、その市町村が任期後の隊員をどう扱ってきたかを聞くほうが早い。

住み替えを織り込んで任期を組み立てる

受け皿の広さから確かめておきたい。令和7年度に活動した隊員は8,196人で、前年度から286人増えた。取り組んでいる自治体は1,187団体で、受け入れが可能な1,461団体の約81パーセントにあたる。裏返せば、制度上は受け入れられるのに隊員のいない自治体が270余り残っている。移住先を探す側から見れば、まだ埋まっていない枠がそれだけあるということだ。

隊員の年齢は20代が33.6パーセント、30代が30.1パーセントで、6割強が30代までに収まる。40代が20.1パーセント、50代が11.5パーセント、60歳以上が4.4パーセント。学生から社会人10年目あたりまでが中心の層になっている。

任期後に同一市町村へ残った5,038人のなりわいは、起業が2,296人で45.6パーセント、就業が1,753人で34.8パーセント、就農・就林が583人で11.6パーセント。就業先の最多は自治体職員や集落支援員などの行政関係で480人だった。住む場所を選び直せるかどうかは、この「仕事をどこで成り立たせるか」と直結している。車で通える範囲に行政の仕事と自分の商いの両方を置けるなら、住所は動かしやすい。

応募の前に現地で数日過ごしておくと、通える範囲の感覚がつかめる。学生のうちから地域と関わる枠を探すなら、募集をまとめているFLASPOのような場から入っても遅くはない。定住率70.3パーセントという数字そのものの読み方は内訳を分解した記事にも書いてある。

よくある質問

任期の途中でやめた人は、この定住率に入っていますか。
入っていない。調査の母数は令和2年4月1日から令和7年3月31日までに任期を終えた8,762人で、中途で退任した人の人数も行き先もこの資料には出てこない。70.3パーセントは、三年を走り切った人の中での割合として読む必要がある。

近隣市町村へ移ると、自治体の支援は受けられなくなりますか。
国の財政措置にもとづく報償費は任期の終わりで止まる。そこから先の支援は自治体ごとの定住促進補助金や起業支援の枠に移るため、住所がその市町村から外れると対象にならない制度もある。移る先を考える段階で、両方の自治体の要綱を読み比べておきたい。

これまでに何人が任期を終えていますか。
令和7年3月31日までで累計15,045人。前回の集計から2,363人増えている。平成21年度の89人から始まった制度なので、任期後の進路という層はこれから厚くなる。

移住を決める前に、短く関われる仕組みはありますか。
令和7年度は「おためし地域おこし協力隊」の参加者が1,450人、インターンが1,414人だった。どちらも住民票を動かさずに現地で過ごす枠で、インターンは令和3年度の106人から10倍以上に増えている。三年を決める前に、集落の距離感と車の要否を自分の足で確かめられる。

出典

総務省「令和7年度における地域おこし協力隊の活動状況等」(令和8年4月24日公表)報道資料/別紙「令和7年度における地域おこし協力隊等の活動状況等」


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