人間関係と職場|パワハラ19.3%、会社が知っても53.2%は動かない

人間関係と職場|パワハラ19.3%、会社が知っても53.2%は動かない

窓口はできた。それでも大半は何も起きていない

職場の人間関係の話をするとき、制度の整備状況と現場の実感がかみ合わないことがある。その落差を数で見られる調査がある。厚生労働省の委託事業としてまとめられた「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」で、企業7,780社と働く人の両方に尋ねたものである。

企業の側では、過去3年間にパワーハラスメントに関する相談があった企業が64.2%にのぼった。セクシュアルハラスメントは39.5%、顧客等からの著しい迷惑行為は27.9%である。2022年4月から中小事業主を含むすべての事業主がパワハラの防止措置義務の対象になっており、相談を受ける経路そのものは広く置かれている。

一方で働く人の側に過去3年間に受けた経験を尋ねると、パワハラが19.3%、顧客等からの著しい迷惑行為が10.8%、セクハラが6.3%だった。5人に1人がパワハラを受けていて、6割を超える企業に相談が届いている。それでいて困っている本人のところで話が止まっているのは、この後に見る数字のほうである。

ハラスメントの種類 過去3年間に相談があった企業 過去3年間に受けた労働者 受けた後に何もしなかった割合
パワーハラスメント 64.2% 19.3% 36.9%
セクシュアルハラスメント 39.5% 6.3% 51.7%
顧客等からの著しい迷惑行為 27.9% 10.8% 35.2%
妊娠・出産・育児休業等に関するもの 10.2% - -
介護休業等に関するもの 3.9% - -
就職活動中等のセクハラ 0.7% - -
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同じ国の同じ年で、業種によって1.3倍の開きがある

全体の19.3%という平均は、どの職場でも同じ確率で起きることを意味しない。パワハラを一度以上受けた割合を業種別に見ると、最も高いのは建設業の26.8%である。次に複合サービス業22.5%、教育・学習支援業20.6%、医療・福祉20.6%が続く。上と全体平均のあいだには7ポイント以上の差がある。

種類ごとに偏る方向も違う。セクハラは女性8.9%、男性3.9%で男女差が明確に出るのに対し、パワハラでは男女で大きな違いがなかった。顧客等からの著しい迷惑行為は男性10.4%、女性11.1%でほぼ並び、代わりに接客頻度が高いほど経験した割合が高くなるという形で差がついた。

業種で見ると、顧客等からの著しい迷惑行為は生活関連サービス業・娯楽業が16.6%で最も高く、卸売業・小売業と宿泊業・飲食サービス業がともに16.0%で並ぶ。セクハラは電気・ガス・熱供給・水道業12.3%、複合サービス業11.3%、宿泊業・飲食サービス業10.5%だった。誰が相手になるかは職種の構造でほぼ決まっていて、個人の相性の話に落とすと見えなくなる。立場や条件から見る整理は人間関係の悩みの原因でも追っている。

受けた後の行動で、最も多いのは何もしないこと

パワハラを受けたと答えた1,546人に、その後どうしたかを尋ねた結果が重い。最も多い回答は「何もしなかった」の36.9%である。次が「家族や社外の友人に相談した」19.3%、「社内の同僚に相談した」18.3%、「社内の上司に相談した」17.9%と続く。セクハラではこの傾向がさらに強く、「何もしなかった」が51.7%で半数を超えた。

企業が置いている相談窓口に行った人はどうか。「社内の相談窓口に相談した」はパワハラで4.5%、セクハラで2.8%である。人事部等の社内の担当部署が5.2%と3.8%、会社が設置している社外の相談窓口が2.8%と3.8%、公的な機関が3.1%と2.0%だった。窓口の存在と、そこに足を運ぶ確率は別の問題として動いている。

行動が外向きになるのは顧客等からの著しい迷惑行為のときだけである。こちらでは「社内の上司に相談した」が38.2%で最多、「社内の同僚に相談した」が26.8%となり、「何もしなかった」は35.2%で2番目に下がった。加害者が社外にいると、職場は味方の側に回れる。社内に相手がいるときに動けなくなるという非対称がはっきり出ている。

動かない理由は、我慢ではなく見通し

何もしなかったと答えた人に理由を尋ねると、答えは種類をまたいで一つに寄った。「何をしても解決にならないと思ったから」が最も多く、パワハラで65.6%、セクハラで52.7%、顧客等からの著しい迷惑行為で56.1%である。耐えようとしたのではなく、動いても結果が変わらないという予測が先に立っている。

この予測は根拠のないものではない。報告書では、勤務先の取組評価が高いほど「社内の同僚に相談した」や「社内の上司に相談した」の割合が高く、「何もしなかった」の割合が低いという関係も確認されている。つまり相談するかどうかは本人の性格より、過去にその職場で相談が機能した実績に左右される。

結果として、会社を離れる選択が相談より上に来ることがある。パワハラでは「会社を退職した」が14.9%、「しばらく会社を休んだ」が8.5%で、どちらも社内の相談窓口の4.5%を上回った。退職者のうち調査に答えているのは転職や再就職をした人だけなので、実際の離脱はこれより多いと考えられる。働く力の話として読む見方はコミュ力と仕事で扱った。

会社が気づいた後に、何が起きているのか

では相談が届いた場合には何が変わるのか。勤務先がハラスメントを認識していたかどうかを見ると、「認識していた」はパワハラで37.1%、セクハラで23.9%と半数を下回る。顧客等からの著しい迷惑行為だけが59.2%と半数を超えた。社内で起きていることのほうが会社に見えていない。

そして知った後の対応で最も多いのが「特に何もしなかった」である。パワハラで53.2%、セクハラで42.5%を占めた。何かした場合の内容は「あなたの要望を聞いたり、問題を解決するために相談にのってくれた」が24.4%と25.8%、「あなたに事実確認のためのヒアリングを行った」が18.0%と17.5%にとどまる。

さらに「相談したことを理由としてあなたに不利益な取扱いをした」がパワハラで6.1%、セクハラで10.0%ある。解雇や降格、減給、不利益な配置転換が含まれる。確率としては低いが、動かない人の見通しを裏づける材料にはなる。だからこそ、評価や配置の権限を持たない相手との接点を別に持っておく価値がある。関心でつながる場なら職場の力関係を持ち込まずに話せるので、FLASPOのような使い方が一つの逃げ道になる。負荷の全体像は人間関係とストレスで確かめられる。

よくある質問

パワハラを受けている人はどのくらいいますか。令和5年度の調査では、過去3年間に一度以上受けたと答えた人が19.3%でした。令和2年度の調査では31.4%だったので、数字としては下がっています。

社内の相談窓口は役に立たないのでしょうか。利用率はパワハラで4.5%と低いものの、取組評価が高い職場では相談行動そのものが増えるという関係が出ています。窓口の有無ではなく、過去に機能したかどうかで差がついていると読めます。

相談したら不利益な扱いを受けませんか。受けたと答えた人はパワハラで6.1%、セクハラで10.0%です。法律では相談を理由とする不利益な取扱いは禁じられているので、記録を残しておくことが後の交渉で効きます。

顧客からの迷惑行為も会社に言ってよいのですか。この類型では勤務先が認識していた割合が59.2%と高く、知った後に相談にのってくれたという回答も39.2%に達します。社外が相手のほうが会社は動きやすい傾向があります。

どの業種が危ないのか知りたいです。パワハラでは建設業26.8%が最も高く、複合サービス業22.5%、教育・学習支援業と医療・福祉がともに20.6%です。接客の多い仕事では顧客からの迷惑行為の側が上がります。

我慢して続けるしかないのでしょうか。退職が14.9%、休職が8.5%という数字は、実際にそこへ向かう人が相談窓口の利用者より多いことを示しています。辞める前に、社外の相談先と記録という二つを先に用意しておくほうが選択肢が残ります。


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