ストレスの内訳で、対人関係は何番目に来るか
人づきあいが苦手だと感じている人は、その感覚が働く人全体のどのあたりに位置するのかを知らないまま抱え込みやすい。厚生労働省の「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」の個人調査では、いまの仕事や職業生活に強い不安、悩み、ストレスとなっている事柄がある労働者は68.3%だった。その人たちに内容を三つ以内で選ばせると、最も多いのは「仕事の量」の43.2%で、次に「仕事の失敗、責任の発生等」36.2%、「仕事の質」26.4%が続く。「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」は26.1%で、順位にすると四番目にあたる。
この並びは、職場のつらさの中心が人づきあいとは限らないことを示している。量と責任のほうが先に来る。一方で四人に一人が対人関係を挙げているのだから、片づけてよい項目でもない。なお同調査は令和6年に設問の形式が変わっており、前年の数値との単純な比較には注意が必要だと注記されている。下の表は第17表から、強いストレスを感じる事柄がある労働者を100としたときの割合を並べたものだ。
裏側の数字も見ておきたい。強いストレスと感じる事柄が「ない」と答えた労働者は令和6年で31.1%、令和5年では16.7%だった。設問の形式が変わって「強い」という条件が強調されたぶん、該当者そのものが絞られている。だから前年より対人関係の割合が3.5ポイント下がったことを、職場が和やかになった証拠として読むのは早い。
| 強いストレスの内容(主なもの3つ以内) | 令和6年 | 令和5年 |
|---|---|---|
| 仕事の量 | 43.2% | 39.4% |
| 仕事の失敗、責任の発生等 | 36.2% | 39.7% |
| 仕事の質 | 26.4% | 27.3% |
| 対人関係(セクハラ・パワハラを含む。) | 26.1% | 29.6% |
| 会社の将来性 | 22.2% | 22.2% |
| 顧客、取引先等からのクレーム | 20.7% | 26.6% |
| 役割・地位の変化等(昇進・昇格、配置転換等) | 19.8% | 15.8% |
辞めるという形で表に出てくるとき
社内で何が起きていたかは、人が辞めたあとの集計にも残る。厚生労働省の「令和6年 雇用動向調査」は、転職して入職した人に前の職場を辞めた理由を尋ねている。「職場の人間関係が好ましくなかった」を挙げたのは男性9.0%、女性11.7%だった。内容の分からない「その他の個人的理由」を除くと、男性では「定年・契約期間の満了」14.1%、女性では「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」12.8%が最も多く、人間関係は女性ではその次に並ぶ位置にある。
年齢で区切ると、この理由には二つの山が出る。女性の19歳以下が34.0%で突出し、男性は40〜44歳の16.0%が最も高い。入ったばかりで立場の弱い時期と、後輩や取引先との板挟みが増える中堅の時期で、同じ言葉が別の中身を指していると読める。自分がどの山に近いかで、備えるべきことも変わってくる。
| 年齢 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 19歳以下 | 9.1% | 34.0% |
| 20〜24歳 | 7.6% | 9.8% |
| 25〜29歳 | 11.5% | 14.0% |
| 30〜34歳 | 9.6% | 11.8% |
| 35〜39歳 | 8.7% | 12.7% |
| 40〜44歳 | 16.0% | 8.4% |
| 45〜49歳 | 10.0% | 10.0% |
| 55〜59歳 | 5.9% | 13.0% |
同じ職場でも、立場で当たる場所がずれる
対人関係のストレスは、全員に均等にかかるわけではない。先の労働安全衛生調査を就業形態で割ると、対人関係を挙げた割合は派遣労働者が36.9%で最も高く、正社員26.7%、パートタイム労働者23.4%、契約社員19.6%と続く。指示を出す側と受ける側が組織をまたいで分かれている働き方で、数字が一段上がっている。
年齢階級で割ると、また別の形が見える。60歳以上が36.2%で最も高く、20〜29歳が30.8%、30〜39歳26.1%、50〜59歳24.2%、40〜49歳22.5%、20歳未満15.8%となっている。入ってまもない時期と、役割が変わって後進に回る時期の両端が高い。性別では男性23.4%に対し女性29.2%で、女性のほうが5.8ポイント高かった。
もっとも、非正規の働き方で重いのは人づきあいだけではない。同じ表で派遣労働者は「雇用の安定性」を54.7%、契約社員は32.1%、会社の将来性を38.8%挙げている。正社員の雇用の安定性は8.6%だから、桁が違う。対人関係の数字だけを取り出して、そこを直せば働きやすくなると考えるのは乱暴だということでもある。
こうして見ると、話し方の巧拙より先に、自分がどの立場で誰と接しているかが効いている。立場の説明はコミュ力のメリットの側からも整理できる。
相談できる相手がいるかどうかで分かれる
同じ調査には、抱えたあとの行き先を尋ねた項目もある。仕事上のストレスについて相談できる人がいる労働者は94.6%に達する。ただし、相談できる人がいると答えた人のうち、実際に相談したことがある人は74.7%にとどまる。相手がいることと、口に出すことのあいだに約20ポイントの段差があるわけだ。
相談できる相手を複数回答で見ると「家族・友人」が68.6%、「上司」が65.7%で並ぶ。男女で順番が入れ替わるのが面白いところで、男性は「上司」70.6%が最多で「家族・友人」66.2%が続き、女性は「家族・友人」71.1%、「同僚」63.2%の順になる。実際に相談した相手でも「家族・友人」62.1%、「上司」58.9%と、同じ二つが上に来る。
職場の外に相談先があるかどうかは、意識して作らないと増えない。FLASPOのように仕事と直接の利害がない場でつながりを持っておくと、社内の人間関係に行き詰まったときの逃げ道が一本増える。
仕事で使う力を六つに割って練習する
では何を鍛えるのか。経済産業省が示す「社会人基礎力」は、職場で必要な力を三つの能力と十二の要素に分けている。そのうち「チームで働く力」にあたるのは、発信力、傾聴力、柔軟性、情況把握力、規律性、ストレスコントロール力の六つだ。一語でまとめられていたものが六つに割れるだけで、練習の順番が決まる。
残る二つの能力群は「前に踏み出す力」と「考え抜く力」で、主体性や課題発見力がここに入る。人づきあいの悩みを抱えているときは、六つのうちどれが足りないのかを先に決めたほうがよい。全部を一度に上げようとすると、どこから手をつけたかも分からなくなる。
たとえば派遣や契約で指示を受ける立場なら、効くのは情況把握力と傾聴力だろう。誰が何を決める権限を持っているかを早く掴めれば、頼み先を間違えずに済む。中堅で板挟みに回る時期は、発信力と柔軟性の比重が上がる。言わないままで持ちこたえる段階を越えているからだ。要素の分け方そのものはコミュ力の種類でさらに細かく追っている。
順番を決めたら、記録を残すところまでやる。何を言って相手がどう動いたかを書き留めておけば、面接や査定の場で裏づけのある話ができる。選考で問われる形はコミュ力と就活の側で扱っている。
よくある質問
人間関係のストレスが理由で辞めるのは甘えでしょうか。雇用動向調査では男性9.0%、女性11.7%が前職を辞めた理由として挙げている項目で、年齢によっては三割を超える。制度の集計に載るほど一般的な理由であり、個人の弱さに還元できる話ではない。
話すのが苦手でも職場でやっていけますか。労働安全衛生調査でストレスの内容として対人関係を挙げた人は26.1%で、量や責任のほうが上に来ていた。会話の得手不得手より、誰が何を決めるかを掴む情況把握力のほうが先に効く場面は多い。
上司に相談するのは気が重いのですが。相談できる相手として「上司」を挙げた人は65.7%で、男性では70.6%と最多だった。選ばれている相手ではある。それでも相談しづらいなら、まず家族・友人の68.6%側から口に出して、話の形を整えてから持っていく手もある。
相談できる人がいないときはどうすればよいですか。いきなり深い相談相手を探すのではなく、利害のない場に顔を出す回数を増やすほうが早い。同じ関心でつながる場なら、話題を探す手間がかからず、関わりが続きやすい。
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。
