大学院の奨学金を月額から選ぶ|第一種・第二種と返還免除の条件

大学院の奨学金を月額から選ぶ|第一種・第二種と返還免除の条件

学部と同じ感覚で月額を決めると行き詰まる

学部で日本学生支援機構の奨学金を借りていた人は、進学後も同じ手続が続くと思いがちだ。ところが大学院に入ると、選べる月額の並び方そのものが変わる。学部の第一種奨学金は、国公立か私立か、自宅から通うか自宅外かで4通りに分かれ、そのうえで2万円から6万4,000円までの選択肢が置かれていた。自宅外の私立なら、2万円、3万円、4万円、5万円、6万4,000円の5段階である。

大学院の第一種は、この区分がすべて消える。設置者も住まいも問われず、課程の区分だけで額が決まる。修士課程相当は月額5万円か8万8,000円の2択、博士課程相当は月額8万円か12万2,000円の2択だ。修士課程相当には修士課程、博士前期課程、法科大学院を含む専門職大学院、一貫制博士課程の前期相当分が入る。博士課程相当には博士課程、博士後期課程、6年制学部を出た人が進む博士医・歯・薬・獣医学課程、一貫制博士課程の後期相当分が含まれる。

刻みがないという点は、額の調整がしにくいことを意味する。学部では1万円単位で下げて返還額を抑える手があったが、大学院では高い方か低い方かしかない。令和7年度の修士課程の在学者は17万4,961人、博士課程は7万9,560人で、その全員が同じ2択の前に立つことになる。

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第二種は幅が広く、法学の課程だけ上が開いている

利子の付く第二種奨学金は、大学院でも選択肢が多い。月額5万円、8万円、10万円、13万円、15万円の5つから選ぶ形で、こちらは修士と博士で額が分かれていない。学部の第二種が2万円から12万円までの1万円刻みだったのと比べると、下限が高く上限も高い。

例外が法学を履修する課程である。法科大学院に進む人は、15万円に4万円または7万円を増額できる。月額22万円まで届く設計で、修業年限が3年と長く、修了後に司法試験の準備期間が控えることを踏まえた枠だ。他の分野にこの増額はない。

第一種と第二種を同時に借りる併用貸与も用意されている。無利子の枠を取り切ったうえで足りない分を有利子で補う形になるが、返還の総額は当然その分だけ増える。借りる段階で月額の見栄えだけを比べるのではなく、返還が始まってからの負担まで並べて考えたい。奨学金の返済が始まる日と金額を先に確かめておくと、月額の判断がぶれにくくなる。

月額を貸与総額に直して見る

月額のままでは規模がつかめないので、修業年限をかけて総額にする。修士課程と博士前期課程、専門職学位課程の多くは2年で24か月、博士後期課程と法科大学院は3年で36か月が標準だ。

課程 種別 選べる月額 最少の総額 最多の総額
修士課程相当(24か月) 第一種(無利子) 50,000円/88,000円 1,200,000円 2,112,000円
修士課程相当(24か月) 第二種(有利子) 50,000円〜150,000円の5段階 1,200,000円 3,600,000円
博士課程相当(36か月) 第一種(無利子) 80,000円/122,000円 2,880,000円 4,392,000円
法科大学院(36か月) 第二種(増額あり) 最大220,000円 1,800,000円 7,920,000円

修士で第一種の高い方を選べば211万2,000円になる。私立の修士課程でかかる学費の総額に近い規模で、無利子の枠だけで学費を覆える計算が立つ。一方、法科大学院で増額まで取ると792万円に達する。同じ奨学金という言葉でも、背負う額は3倍以上に開く。

貸与型と給付型の違いを含めて制度の全体像を押さえたい場合は、奨学金の種類を一覧で比較した整理を先に読むと、どの枠に自分が当てはまるかが判断しやすい。

大学院にしかない、返還を免除する仕組み

借りた分を返すのが貸与型の原則だが、大学院には例外が置かれている。特に優れた業績による返還免除という制度だ。第一種奨学金を借りた大学院生のうち、貸与期間中の業績が機構に認定された人は、奨学金の全額または半額の返還を免除される。対象は修士課程、専門職学位課程、博士課程の第一種奨学生で、その年度中に貸与が終わる人である。海外大学院学位取得型の奨学生も含まれる。

業績として見られる範囲は、論文や学会発表だけではない。学問分野での顕著な成果や発明・発見のほか、専攻分野に関連する文化・芸術・スポーツでの活躍、ボランティアなどでの顕著な社会貢献も評価の対象に挙げられている。認定の流れは、貸与終了時に在籍する大学へ申請し、大学長の推薦を受けたうえで、機構の業績優秀者奨学金返還免除認定委員会の審議を経て決まる。推薦の枠が大学ごとに決まるため、申請した全員が免除されるわけではない。

落としやすいのが申請の時期である。申請は、貸与が終了した月が属する年度に行わなければならない。修了した年度と申請する年度が必ず一致するとは限らないので、休学や早期修了で貸与終了月がずれた人はとくに注意が必要だ。この1点を逃すと、業績があっても制度に乗れない。

前もって見通しを立てたい人には返還免除内定制度がある。修士課程と専門職学位課程は進学の前後、博士課程は1年次の段階で免除の内定を受けられる仕組みで、最終的な決定は貸与終了時に行われる。なお令和5年度以降に博士課程で採用され、科学技術振興機構の研究奨励費など生活費相当額の支援を受けている人は、業績による免除の対象から外れる。

修士段階には後払いという別の入口がある

貸与奨学金とは別に、修士段階だけに用意された授業料後払い制度がある。在学中は授業料を納めず、修了後の所得などに応じて納める仕組みだ。対象は修士課程、博士前期相当の課程、専門職学位課程に在学する人で、授業料相当額は機構が貸与して原則として学校へ直接振り込まれる。返還先は大学ではなく機構になる。

支援は2本立てだ。授業料相当額を支える授業料支援金と、在学中の生活費を支える生活費奨学金があり、どちらも無利子である。生活費奨学金は学校ではなく本人の口座へ振り込まれるため、学費と生活費を別々に管理できる。申込資格、学力基準、家計基準は第一種奨学金と同じ扱いになっている。

組み合わせには制限がある。第一種奨学金との併用はできず、第二種奨学金との併用は可能だ。つまり選択の形は、第一種を取るか後払い制度を取るかという二択が先に来て、そこへ第二種を足すかどうかを後から決める流れになる。無利子の枠をどちらで確保するかという判断なので、募集の時期が来る前に整理しておきたい。

借りる額を決めるときは、返還の局面まで想像しておく必要がある。連帯保証人や保証機関をどうするかは申込時に選ぶ項目で、後から変えるには手続がいる。奨学金の保証人は誰に頼めるのかを読んでおけば、申込書の前で止まらずに済む。進学後の住まいや働く場所まで含めて考える段階なら、FLASPOのような地域の情報にも目を通しておくと選択肢が広がる。

よくある質問

学部で借りていた奨学金は、大学院でもそのまま続きますか。続かない。学部での貸与は卒業で終了し、大学院では新たに申し込む必要がある。月額の区分も課程ごとの2択に変わるため、学部で選んでいた額を引き継ぐことはできない。

大学院に給付型の奨学金はありますか。機構の給付奨学金は学部段階が中心で、大学院向けには貸与型と授業料後払い制度が用意されている。大学や民間財団、自治体が独自に出す給付型の支援は別に存在するので、研究科の掲示や大学の奨学金窓口で募集を確認したい。

返還免除はどれくらいの人が受けられるのですか。免除の人数は大学ごとの推薦枠に左右されるため、全国一律の割合として示されていない。免除の額は全額か半額のいずれかで、申請すれば必ず通るものではないと考えておくのが安全だ。

社会人として働きながら大学院に通う場合も申し込めますか。申し込める。ただし選考には学力基準と家計基準があり、本人の収入の扱いは課程や貸与の種別によって見方が変わる。在籍予定の大学の奨学金窓口に、自分の収入でどう判定されるかを事前に確かめるのが確実だ。

第一種と第二種のどちらを選ぶべきですか。無利子の第一種を優先し、足りない分を第二種で補うのが基本の形になる。ただし修士段階では第一種の代わりに授業料後払い制度を選ぶ道もあるため、学費を先に軽くしたいのか、手元の生活費を厚くしたいのかで判断が分かれる。

出典

月額は日本学生支援機構「第一種奨学金の貸与月額(平成30年度以降入学者)」および「第二種奨学金の貸与月額」による。返還免除の条件は「特に優れた業績による返還免除の制度概要」、後払い制度は「授業料後払い制度」に拠った。在学者数は文部科学省「令和7年度学校基本調査の公表について」から引いた。


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