ジェンダー平等とは|第6次基本計画の数値目標で測る現在地

ジェンダー平等とは|第6次基本計画の数値目標で測る現在地

揃えようとしているのは結果ではなく入口

採用面接で「男女半々にしたら、能力で選べなくなるのでは」と返されることがある。この問いは、平等という語を「結果を同じにすること」と取ったところから出てくる。政策の文脈で使われるジェンダー平等は、そこを目指していない。

1999年6月23日に公布・施行された男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)の第二条は、目指す社会の形を、男女が社会の対等な構成員として自らの意思で社会のあらゆる分野の活動に参画する機会が確保され、共に責任を担う社会、と定義している。確保されるのは機会であって、結果ではない。

同じ条文には積極的改善措置も置かれている。男女間に生じている機会の格差を改善するため、必要な範囲で男女のいずれか一方に機会を積極的に提供すること。入口に段差があるときに、段差のある側へ踏み台を出す措置だと考えるとわかりやすい。踏み台は結果を配る道具ではなく、同じ入口に立たせる道具である。この区別を落とすと、冒頭の問いに答えられなくなる。

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日本では「男女共同参画」という言葉で動いてきた

国際的にはSDGsの17の目標のうち5番目がジェンダー平等の達成を掲げているが、日本の行政文書でこの語をそのまま見かける場面はまだ多くない。基本法が置かれたのが男女共同参画という語で、以来、基本計画も推進体制もこの名前で積み上げられてきたからである。

言葉が違えば射程も少しずれる。男女共同参画は男女という二つの区分を前提に参画の度合いを測るのに対し、ジェンダー平等は性別に関する社会的な扱いの不均衡そのものを指す。性的指向や性自認の多様性を扱う枠組みとは別立てで走ってきた経緯もあり、計画の数値目標にも性的少数者に関する項目は入っていない。語の成り立ちについてはセックスとジェンダーの違いを整理した記事のほうが詳しい。

それでも、政策の実体を知りたいときに見る資料は決まっている。五年ごとに閣議決定される男女共同参画基本計画と、その別表に並ぶ成果目標である。精神論ではなく、期限と数字が入っている。

2026年3月に決まった第6次計画の目標

最新のものは2026年3月13日に閣議決定された第6次男女共同参画基本計画で、別表の成果目標等一覧に現状値と2030年の目標値が並ぶ。主なものを抜き出すと次のようになる。

項目 現状 2030年の目標
民間企業の係長相当職に占める女性 24.4%(2024年) 33%
民間企業の課長相当職に占める女性 15.9%(2024年) 24%
民間企業の部長相当職に占める女性 9.8%(2024年) 15%
東証プライム市場上場企業の役員に占める女性 17.7%(2025年) 30%
民間企業における男性の育児休業取得率 40.5%(2024年度) 85%
第一子出産前後の女性の継続就業率 69.5%(2021年) 80%
衆議院議員の候補者に占める女性 24.4%(2026年) 35%

注意しておきたいのは、議員候補者の目標に付された但し書きである。計画はこれを、政府が政党に働きかける際に念頭に置く努力目標であり、政党の自律的行動を制約するものではないと明記している。政治分野の数字は、行政が直接動かせる種類の数字ではない。

公的部門の目標も同じ別表に並んでいる。国家公務員の本省課室長相当職に占める女性は8.9%(2025年7月)を17%へ、指定職相当は5.6%を8%へ。都道府県の審議会等委員は34.9%(2024年)を40%以上60%以下の幅に収める、という置き方になっている。民間より高い水準を公的部門に課す形で、国が先に動いて見せるという設計思想が読み取れる。行政職の内側がどう動いているかは地方公務員のジェンダーバランスを扱った記事が具体的である。

2026年4月から、101人以上の企業に義務が増えた

計画より先に実務へ効いてくるのが法改正のほうである。2025年6月に公布された改正女性活躍推進法により、法律の有効期限は2036年3月31日まで十年延長された。あわせて2026年4月1日から、常時雇用する労働者が101人以上の事業主に、男女間賃金差異と女性管理職比率の情報公表が義務づけられた。

それまで賃金差異の公表義務は301人以上の企業に限られていた。対象が三分の一の規模まで下りたことで、中堅企業も自社の数字を外に出すことになる。採用の場面で学生が比較できる材料が増えるという意味では、計画の目標値より直接的な変化かもしれない。

公表が義務になると、まず自社の数字を測らざるを得なくなる。測ると、正社員の男女比なのか勤続年数の差なのか、どこで差が生まれているのかが見える。義務の本体は開示だが、効き目が出るのは測定のほうである。地域で若い世代の進路に関わるFLASPOの現場でも、企業選びの話題に賃金差異の数字が出てくる場面は確実に増えている。

動いた数字と、動かないままの数字

厚生労働省の令和7年度雇用均等基本調査を開くと、進み方の差がはっきり出る。男性の育児休業取得率は50.9%で、前回調査の40.5%から10.4ポイント上がった。一年で二桁ポイント動く指標は珍しい。女性の取得率は88.3%である。

一方、役職のほうは重い。課長相当職以上の管理職に占める女性の割合は13.8%、前回から0.7ポイントの上昇にとどまった。役職別に見ると役員21.0%、部長相当職9.2%、課長相当職13.2%、係長相当職20.9%で、上の役職ほど割合が落ちる形は変わっていない。正社員・正職員に占める女性の割合が28.6%であることを思えば、入口の比率すら管理職には反映されていない。

育休が短期間で動いて管理職が動かないのは、前者が制度と運用で変えられるのに対し、後者が十年単位の在職と登用の積み重ねでしか変わらないからである。第6次計画が2030年という期限を置いたのも、その時間差を織り込んでのことだろう。なお男性育休の目標値85%は現状値を40.5%として設定されているため、計画が閣議決定された時点で基準はすでに古くなっていた。行政の目標設定が統計の更新に追いつかない例として覚えておくとよい。

上場企業の役員も同じ重さを持つ。東証プライム市場で17.7%、上場企業全体では14.0%(いずれも2025年)という現状値に対し、目標は30%と20%。さらに、女性役員登用の目標を設定して行動計画まで策定している上場企業は5.9%しかなく、ここを30%へ引き上げる目標も別に立てられた。数字を掲げる企業自体がまだ二十社に一社という段階にある。

よくある質問

ジェンダー平等と男女平等は同じ意味ですか

重なりますが同じではありません。男女平等は男女という二つの区分の間の扱いを指すのに対し、ジェンダー平等は社会がつくった性別役割そのものの不均衡を含みます。家事や育児の分担のように、法制度ではなく慣習に根を持つ部分まで射程に入ります。

男女共同参画基本計画はどこで読めますか

内閣府男女共同参画局のサイトで全文が公開されています。分野ごとのPDFに分かれており、数値目標だけを見たい場合は別表の成果目標等一覧が最も早く読めます。

積極的改善措置は逆差別にあたりませんか

基本法は、男女間の機会の格差を改善するため必要な範囲で行うものと定めています。格差があることが前提で、必要な範囲という限定が付いている点が要点です。格差が解消すれば措置の根拠も消えます。

自社が公表義務の対象かどうかはどう判断しますか

常時雇用する労働者の数が基準です。2026年4月1日以降、101人以上であれば男女間賃金差異と女性管理職比率の公表が必要になります。判断に迷う場合は所在地の都道府県労働局の雇用環境・均等部へ確認するのが確実です。

学生が企業を選ぶとき、どの数字を見ればよいですか

女性管理職比率だけを見ると、母数の小さい企業で数字が振れます。男女間賃金差異、育児休業取得率、平均勤続年数の男女差を並べて見ると、制度があるのか運用されているのかが分かれて見えてきます。


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