来場者を増やしたいという相談は、たいてい「どのSNSを使えばいいか」という形で来る。けれど手段を先に決めると、届けたい相手に届かないまま投稿数だけが積み上がる。順番は逆で、誰を何人増やしたいのかを決めてから、その層が実際に使っている経路を選ぶことになる。
増やしたいのは誰なのかを決める
学園祭の来場者は、性質の違う集団の寄せ集めである。在校生とその友人、保護者と家族、受験を考えている中学生や高校生、卒業生、近隣の住民。どの集団を増やしたいかで、打つ手も、増えたときに必要な受け入れ体制も変わる。
目標を人数の総計だけで置くと、評価ができない。前年より200人増えたとして、それが在校生の友人だったのか近隣の家族だったのかで、翌年の打ち手は正反対になる。入口で簡単に層を数える仕組みを用意しておくと、翌年の判断材料が残る。
層を決めると、目的も具体化する。受験生を増やしたいなら校内の見学動線が主役になり、近隣の住民を増やしたいなら騒音と駐車の扱いが先に来る。行事の性格そのものの変遷は学園祭の歴史をたどった記事で整理した。
年代で、届く経路が入れ替わる
同じ告知を同じ場所に出しても、相手の年代によって届き方がまったく違う。総務省情報通信政策研究所の令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査は、主なサービスの利用率を年代別に出している。13歳から79歳までの男女1,800人を対象に、全国125地点で訪問留置法により行われた調査で、調査対象期間は令和7年12月1日から7日までである。
| サービス | 全年代 | 10代 | 20代 | 60代 | 70代 |
|---|---|---|---|---|---|
| LINE | 92.9% | 96.4% | 97.7% | 92.0% | 77.8% |
| YouTube | 81.5% | 95.0% | 96.3% | 72.6% | 48.5% |
| 54.8% | 69.3% | 82.6% | 36.1% | 15.8% | |
| X(旧Twitter) | 44.7% | 56.4% | 73.4% | 24.8% | 10.8% |
| TikTok | 36.7% | 67.9% | 61.5% | 21.2% | 11.1% |
| 27.0% | 14.3% | 23.4% | 22.6% | 12.5% |
表を縦に読むと、10代と20代にはどの経路でもおおむね届くことが分かる。利用率が最も高いのはLINEで、10代が96.4パーセント、20代が97.7パーセントである。TikTokは10代の67.9パーセントが最も高く、Instagramは20代の82.6パーセントが最も高い。在校生とその友人を増やしたいだけなら、ここを押さえれば足りる。
横に読むと事情が変わる。Instagramは60代で36.1パーセント、70代で15.8パーセントまで下がり、Xは60代24.8パーセント、70代10.8パーセントである。近隣の高齢の住民に来てほしい場合、SNSの投稿だけでは構造的に届かない。一方でLINEは70代でも77.8パーセントが使っており、保護者や地域の連絡網に乗せる形なら経路が残る。
何を知るための情報かで、使うメディアが変わる
同じ人でも、探している情報の種類によって開くものが違う。同じ調査では、目的別に最も利用するメディアを聞いている。「趣味・娯楽に関する情報を得る」ために最も利用するメディアは、全年代でインターネットが70.8パーセントと最も高く、10代から60代までインターネットが首位だった。学園祭の告知はこの類型に近い。
一方で「いち早く世の中のできごとや動きを知る」ためのメディアは、全年代ではインターネットが55.4パーセントで最も高いものの、60代と70代ではテレビが最上位になる。情報源としての重要度では、全年代でテレビが80.6パーセントと最も高く、10代から40代ではインターネットが最も高い。年代と目的の二つが重なって経路が決まっている。
ここから出てくる手は単純である。在校生向けの告知と、地域向けの告知を同じ文面で出さない。前者は開催日と出店の中身を短く出せば足り、後者は何の行事で何時から何時までか、どこに入れて何に注意が要るのかを先に書く。数値は総務省が公表した令和7年度の調査報告書と、経年の推移を示した令和7年版情報通信白書で確認できる。
校外に届けるには、学校の外の経路が要る
校内の掲示と在校生の投稿だけで回していると、来場者の構成は毎年同じになる。外に出すには、学校と関係のない場所に情報が置かれている必要がある。近隣の掲示板、商店会の店先、公共施設のラックといった物理的な置き場は、年代による取りこぼしが起きにくい。
自治体の広報紙やイベント情報の欄も使える。ただし締切が月単位で早く、掲載の申込が開催の二か月前という例もある。企画が固まる前に枠の取り方だけ確認しておくと、間に合う。学校の公式サイトに開催概要の固定ページを置いておくのも効く。検索から入った人が最初に当たるのは、SNSの投稿ではなく学校のドメインである。
映像を使う場合は、長さを分けて作る。校内向けには短い縦の動画が合うが、地域向けや記録用には会場の様子が分かる横の映像が要る。撮り方と使い分けはイベントの記録動画とPR動画の作り方を扱った記事にまとまっている。学生の企画を地域の事業につなぐ場としてはFLASPOのような取り組みもある。
増やす前に、受け入れられる上限を見る
広報が当たった年に起きる問題は、人が来ないことではなく、来すぎることである。通路が詰まって動けない、模擬店の行列が退路をふさぐ、トイレの待ち時間が長くなる。どれも集客の成功の裏側で起きるため、事前に上限を見ていないと当日まで気づかない。
確かめるべきは三つに整理できる。最も混む時間帯に何人が同じ場所に集まるか、退路の幅がその人数で確保されるか、受付と会計の処理能力が足りるか。ここに不足があるなら、人を増やす前に時間帯を分散させる手を打つ。入場の時間指定、人気企画の回数を増やす、公開時間を延ばす、といった具合である。
規模が大きくなると、必要な届出や手続きの範囲も変わる。火器を使う出店の数や会場の形によって求められるものが違い、条例の運用は自治体ごとに異なるため、見込みの来場者数を示して所轄の消防署に相談しておくのが早い。当日の体制の組み方は学園祭の運営方法を扱った記事で詳しく触れている。
よくある疑問
告知はいつ始めるのが適切か。層によって違う。在校生とその友人は一、二週間前でも動くが、自治体の広報紙や地域の掲示は締切の都合で二か月前に動き出す必要がある。
アカウントは何個つくればよいか。更新できる人数で決める。複数に分散させて放置されたものが残ると、古い開催日が検索で上に出てくる事故につながる。
保護者にはどう知らせるか。学校から配る文書と、連絡網に流す短い案内を使い分ける。利用率で見ればLINEは高齢層まで届くが、学校の公式な連絡経路と混ぜない。
近隣の住民に何を伝えるべきか。開催日と時間、音が出る時間帯、車と自転車の扱い、問い合わせ先。来てほしいという誘いよりも、迷惑の予告と窓口の提示が先に立つ。
来場者数はどう数えるのか。入口で配布物を渡す数、受付の押印、時間帯ごとの手計数のいずれかで取る。方法を毎年変えると前年との比較ができなくなる。
投稿が伸びないのはなぜか。見てもらう段ではなく、来られるかどうかの情報が足りないことが多い。日付、時間、場所、入れるかどうかの四点が一枚に入っていない投稿は動機にならない。
受験生を増やしたい場合はどうするか。校内の見学の経路と、在校生に質問できる場所を用意する。行事の賑わいそのものより、学校の様子が見えることが判断の材料になる。
雨天時の告知はどうするか。中止や縮小の判断時刻と、告知する場所を事前に公表しておく。当日になって探させる形にすると、問い合わせが受付に集中する。
去年の投稿を使い回してよいか。日付の入った画像の再利用は誤解を生む。構図や文面の型は引き継ぎつつ、日時に関わる部分は毎年つくり直す。
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