増えるのは時間ではなく、判断の材料
先週の自分が何に何時間を使ったか、手元の記録なしで言い当てられる人はほとんどいない。文部科学省と国立教育政策研究所は2024年10月から2025年3月にかけて全国の大学生に生活時間をたずね、その集計を2025年9月30日に公表した。参加したのは540大学と132短期大学、有効回答は13万8,020人、回答率は13.5%である(文部科学省「令和6年度『全国学生調査(第4回試行実施)』の結果について」)。
ここで浮かび上がった大学2年生の週の形は、かなりはっきりしている。授業への出席は週16時間以上が約3分の2を占め、週21時間以上という学生も約4割いた。いっぽうで予習・復習・課題といった授業に関する学習は、週5時間以下が約6割にとどまる。教室にいる時間は長いのに、その前後に積む時間が薄い。
この非対称は、制度が想定している形とは食い違う。大学設置基準の第21条第2項は、1単位の授業科目を「45時間の学修を必要とする内容」で構成することを標準と定め、授業そのものに充てるのはおおむね15時間から45時間の範囲としている(e-Gov法令検索・大学設置基準)。差の部分は、はじめから授業時間外の学修として織り込まれているわけだ。
時間管理を始めて最初に起こるのは、空き時間が湧いて出ることではない。この偏りが数字として目の前に並ぶことである。見えていない偏りは手を付けようがないが、見えた偏りは置き場所を変えるだけで薄くなる。週の総量は変わらなくても、どこに何を置くかは自分で決められる。
履修を決める前に入るかどうかを確かめられる
履修登録の画面を開いて、取れるだけ取ってしまった学期はないだろうか。文部科学省は先の調査結果の中で、出席時間に比べて学習時間が短い状態が前回から改善していないと指摘し、その背景として学期末の試験結果だけで単位認定が行われることや、学生が過剰に単位を登録していることを挙げている。履修科目の登録上限、いわゆるキャップ制が実質的に働いていないという見立てだ。
その上限には明確な根拠がある。大学設置基準の第27条の2は、各年次にわたって適切に授業科目を履修できるよう、1年間または1学期に登録できる単位数の上限を定めるよう努めなければならないと定める。卒業の要件は同じ基準の第32条で124単位以上(医学・歯学に関する学科は188単位以上、臨床に係る実践的な能力を主目的とする薬学の学科は186単位以上)とされ、4年で割れば年31単位前後が目安になる。
時間管理が効くのは、この登録の段階である。科目の数を数えるのではなく、科目ごとに必要な授業時間外の学修を週の枠へ実際に置いてみて、入り切るかどうかを先に確かめる。入らなければ科目を落とす。この順番を一度通すだけで、学期末に複数の課題が同じ週へ雪崩れ込む事故は目に見えて減る。登録そのものの制度的な制約は大学の履修登録の注意点に、週の枠の作り方は大学の時間割と学修時間に整理した。
下の表は、同じ調査が示した学年別の週の配分である。学年が変わると、守るべき場所も変わる。
| 1週間の活動 | 大学2年生 | 最終学年(4年生以上) |
|---|---|---|
| 授業への出席 | 16時間以上が約3分の2 | 5時間以下が64% |
| 予習・復習・課題 | 5時間以下が59% | 5時間以下が79% |
| 授業と直接関係しない自主的な学習 | 5時間以下が82% | 5時間以下が66% |
| 卒業論文・卒業研究・卒業制作 | 設問の対象外 | 16時間以上が32% |
| 部活動・サークル活動 | 0時間が52% | 0時間が73% |
| アルバイト等 | 11時間以上が約半数 | 11時間以上が約半数 |
最終学年の落差を前倒しで吸収する
4年生になると週の形は裏返る。授業への出席が週5時間以下の学生が64%に達し、それにつれて授業に関する学習も週5時間以下が79%を占める。教室に縛られる時間が一気に減るぶん、枠を自分で作らないかぎり週はただ平らになる。
代わりに重くなるのが卒業論文・卒業研究・卒業制作である。最終学年では約3割の学生が週16時間以上を充て、約2割は週31時間以上と答えた。ところが同じ最終学年で、これに週5時間以下しか使っていない学生も約4割いる。文部科学省はこの開きの背景に、就職活動などの影響と先述のキャップ制の課題があると述べている。平均値ではなく、二つの山に割れていると読むのが正しい。
前倒しの価値はここで決まる。研究に週16時間を充てる時期と、採用選考が集中する時期は、どちらも動かしにくい。動かせるのは着手の時期だけである。2年生や3年生のうちに授業時間外の学修を週へ固定しておけば、最終学年で空いた枠に研究を素直に差し込める。逆に下級生のうちから週5時間以下で回してきた習慣は、枠が空いた瞬間にそのまま薄い週へ横滑りする。卒業までの単位の積み方は大学の卒業要件と履修計画でも扱っている。
アルバイトとの境目を感覚ではなく数字で引く
学費や生活費のために働く時間は、多くの学生にとって削れない部分だ。同じ調査では、アルバイト等に週11時間以上を充てる学生が2年生でも最終学年でも約半数に上った。いっぽう部活動・サークル活動は0時間と答えた学生が2年生で52%、4年生で73%を占める。課外活動を手放して就労を残す、という選び方が全国規模で起きていることになる。
この構造を押さえると、削る順番の議論が変わる。週11時間の就労を5時間に縮めるのは収入に直結するので現実的でないことが多い。それより、同じ11時間をどの曜日に固めるかを決めるほうが効く。学習は細切れに強い作業と、まとまりが必要な作業に分かれる。課題の読み込みや論文の執筆は後者なので、就労を数日へ寄せて空いた日を丸ごと残すほうが、毎日2時間ずつ空けるより進む。
働く時間そのものの相場や条件を確かめたうえで配分を決めたい場合は、学生向けの情報を扱うFLASPOのような媒体で求人側の条件を見比べてから、週の枠に当てはめる順序がすすめやすい。先に枠を引き、あとから条件を合わせる。この向きを逆にすると、シフトが入るたびに計画が壊れる。
自分で決める時間が増えた分だけ効き方が大きい
時間管理の価値は、この10年で静かに上がっている。総務省統計局の令和3年社会生活基本調査によると、睡眠を除いて一人でいた時間は20〜24歳で週全体の1日あたり6時間14分となり、2016年の5時間5分から1時間9分増えた(総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」)。
同じ年齢層で、学校や職場の人と一緒にいた時間は5時間34分から4時間25分へ1時間9分減っており、これは全年齢階級の中で最も大きな減少幅だった。授業や職場の流れに乗っていれば一日が決まる、という前提が薄くなったということである。誰かの時間割に合わせる割合が下がれば、空いた分は自分の判断で埋めるしかない。
裏づけになる動きもある。クラブ活動なども含む「学習・自己啓発・訓練」を行った人の割合は、20〜24歳で2016年の52.8%から2021年には56.5%へ3.7ポイント上がった。学ぶ意欲が落ちたのではなく、学ぶ時間を自分で配置する必要が増えた。この条件のもとでは、週の形を決める手間をかけた人とかけなかった人の差が、そのまま成果の差として残る。
よくある質問
時間管理をすると自由な時間は減りますか
減りません。総量は固定されているので、動くのは配分だけです。むしろ予定を置いた時間と空けておく時間を分けると、何もしない時間に罪悪感が混ざらなくなるという副作用のほうが大きいでしょう。先の社会生活基本調査では、2016年と2021年の比較で休養・くつろぎの時間が全体で20分増えています。休む時間を守ることも配分の一部です。
分単位で予定を組まないと意味がないのでしょうか
必要ありません。全国学生調査が学生にたずねているのも、週あたり何時間かという粗い区分です。まずは週単位で、授業に関する学習が5時間以下に沈んでいないかどうかだけを確かめれば十分です。細かさを上げるのは、週の総量が安定してからで間に合います。
計画を立てても守れずに終わります
守れない計画は、たいてい入らない量を入れている計画です。履修を決める前に授業時間外の学修を枠へ置いてみる手順を飛ばすと、学期が始まった時点で破綻が確定します。立て直すときは、やることを足すのではなく登録を減らす方向から検討してください。
1年生のうちから意識する必要はありますか
あります。最終学年で授業の枠が外れたとき、下級生のうちに作った習慣がそのまま出ます。週5時間以下で回してきた形は、空いた枠を埋める力を持ちません。入学直後は授業が詰まっていて取り組みにくい時期ですが、だからこそ枠を引く練習には向いています。
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