見落とされるのは科目の中身ではなく、数え方の制約
時間割を組み終えた段階で起きる取り違えは、たいてい科目選びの失敗ではない。数えた単位が「卒業要件として数えられる単位」と一致していなかった、という形で表に出る。気づくのは二年目か三年目で、そこから巻き返すには学期をもう一つ使うことになる。
大学設置基準は、登録できる量と、外から持ち込める量の両方に線を引いている。前者は第二十七条の二第一項で、学生が各年次にわたって適切に授業科目を履修するため、一年間または一学期に履修科目として登録することができる単位数の上限を定めるよう努めなければならないと大学に求める規定だ。数値は各大学の学則に落ちている。
後者は複数の条文に散っていて、一覧になった形で学生に示されることが少ない。外部で修得した単位や遠隔で受けた授業は、卒業要件に算入できる量が条文の側で決まっている。確かめる順番は、上限の数値、算入できる区分、成績評価の基準、支援制度の条件の四つで足りる。
単位数に上限が置かれている五つの制度
まとめて並べると、どれも六十単位か三十単位という水準に収まっていることが分かる。卒業要件が百二十四単位以上であることを思い出すと、持ち込みだけで要件の半分を越える設計はできない仕組みになっている。
| 制度 | 算入できる上限 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 多様なメディアを高度に利用して行う授業で修得する単位 | 60単位まで | 第32条第5項 |
| 他の大学・専門職大学・短期大学で履修した授業科目の単位 | 60単位まで | 第28条第1項 |
| 大学以外の教育施設等における学修(短大・高専の専攻科など) | 第28条の分と合わせて60単位まで | 第29条第2項 |
| 入学前に修得した単位・入学前に行った学修 | 第28条・第29条の分と合わせて60単位まで(編入学・転学等を除く) | 第30条第4項 |
| 連携開設科目として修得したとみなす単位 | 30単位まで | 第32条第6項 |
表の一行目は遠隔授業に関わる。第三十二条第五項は、卒業要件として修得すべき単位数のうち、第二十五条第二項の授業の方法により修得する単位数は六十単位を超えないものとすると定めている。第二十五条第二項は、多様なメディアを高度に利用して、当該授業を行う教室等以外の場所で履修させる方法のことだ。オンラインで完結する科目ばかりを選ぶと、途中で算入できなくなる。
二行目から四行目は、外から持ち込む単位がひとつの枠を分け合う構造になっている。第二十九条第二項は、与えることができる単位数を第二十八条の分と合わせて六十単位を超えないものとし、第三十条第四項はさらに第二十八条と第二十九条の分も含めて六十単位という上限を置いている。留学と資格関連の学修と入学前の既修得単位を全部当てにすると、どこかで頭を打つ。
五行目の連携開設科目は、他大学と連携して開設し自校の科目とみなす仕組みで、第二十七条の三が根拠になる。算入は三十単位までで、ここだけ水準が違う。どの科目が連携開設科目に当たるかは科目表に注記されていることが多い。
卒業要件は総数ではなく、区分で満たす
第三十二条第一項の書き方は、読み飛ばしやすいところに肝がある。卒業の要件は「百二十四単位以上を修得することのほか、大学が定めることとする」と書かれていて、後半の「大学が定めること」が科目区分ごとの必要単位数にあたる。数だけ揃えても要件は満たされない。
区分の立て方は大学ごとに違うが、おおむね共通科目と専門科目、必修と選択必修と選択、そして演習や卒業研究の履修条件という形で層になっている。多いのは、選択科目を取り過ぎて必修の区分が空いているという型の不足だ。超過した選択科目は、不足している必修の代わりにはならない。
医学・歯学に関する学科は百八十八単位以上、薬学のうち臨床に係る実践的な能力を培うことを主たる目的とする学科は百八十六単位以上で薬学実務実習に係る二十単位以上を含み、獣医学に関する学科は百八十二単位以上とされている。区分の数も多くなるため、年次ごとの進級要件を先に確認したい。
区分の情報は公表が求められている。学校教育法施行規則の第百七十二条の二第一項第七号は、学修の成果に係る評価及び卒業又は修了の認定に当たっての基準に関することを公表の対象に挙げている。履修要項が手元になくても、大学のサイトから基準をたどれる場合が多い。
就業しながら計画的に学ぶ道も制度として用意されている。第三十条の二は、職業を有している等の事情により、修業年限を超えて一定の期間にわたり計画的に教育課程を履修し卒業することを希望する旨を申し出たときに、その計画的な履修を認めることができると定めている。働く時間が長くなりそうな年度は、無理に詰めるより先に相談する選択肢がある。
成績評価の基準は、登録する前に示されている
どう評価されるかを学期末に知るのでは遅い。大学設置基準の第二十五条の二第二項は、学修の成果に係る評価及び卒業の認定に当たっては、客観性及び厳格性を確保するため、学生に対してその基準をあらかじめ明示するとともに、当該基準にしたがって適切に行うものとすると定めている。基準は登録前に読める状態にある。
実態も調査で裏づけられている。文部科学省の「大学における教育内容等の改革状況について(平成二十九年度)」では、全科目の成績評価基準をシラバスで明示している大学が七百二十八大学(93%)と報告されている。対象は国公私立七百七十七大学で、七百六十七大学が回答している。
同じ調査で、成績の指標となる制度を導入している大学は六百八十八大学(93%)だった。翌年度の「大学における教育内容等の改革状況について(平成三十年度)」では七百二大学(95%)に増えており、こちらの対象は七百八十二大学で七百六十一大学が回答している。指標が付く前提で登録する時代になっている。
指標は履修の自由度にも効く。平成二十九年度の調査では、成績に応じて履修上限単位数を設定している大学が二百四十五大学(33%)、退学勧告の基準として用いている大学が百五十四大学(21%)と報告されている。一学期の結果が、次の学期に取れる量と在籍の判断の両方につながる。
逆向きの規定もある。第二十七条の二第二項は、所定の単位を優れた成績をもって修得した学生について、上限を超えて履修科目の登録を認めることができるとしている。多めに取りたいなら、まず前の学期の評価を上げる順番になる。
授業料減免や給付の支援を受けているときの条件
支援を受けている場合、登録する単位数は学業の問題にとどまらない。大学等における修学の支援に関する法律施行規則の別表第二が、適格認定における学業成績の基準を定めていて、数値がはっきり書かれている。
警告の区分に当たるのは、修得した単位数の合計数が標準単位数の七割以下であること、成績の指標が学部等における下位四分の一の範囲に属して一定の例外にも当たらないこと、履修科目の授業への出席率が八割以下であることその他の学修意欲が低い状況にあると認められること、のいずれかである。
廃止の区分はさらに厳しい。修業年限で卒業または修了できないことが確定したこと、修得した単位数の合計数が標準単位数の六割以下であること、履修科目の授業への出席率が六割以下であることその他の学修意欲が著しく低い状況にあると認められること、警告に連続して該当すること、のいずれかが該当する。災害や傷病その他のやむを得ない事由による場合は除かれる。
ここでいう標準単位数の定義が、登録の設計に直接響く。別表第二の備考第一号は、卒業要件として修得することを定める単位数を修業年限の年数で除した数に在学した期間の年数を乗じた数と、履修科目として登録することができる単位数の上限として大学が定めた数を合計した数の、いずれか少ない数としている。上限が低い大学では、母数も低いほうに合わせて判定される。
数字に置き換えると見通しが立つ。卒業要件が百二十四単位で修業年限四年なら、一年あたりの標準単位数は三十一単位になる。二年目の終わりで標準が六十二単位なら、警告の線は約四十三単位、廃止の線は約三十七単位である。学期ごとに何単位を確実に積むかを決めておくほうが、後から取り返すより軽い。
よくある疑問
オンライン中心の時間割にしてよいかという問いには、六十単位という線が答えになる。第三十二条第五項の範囲内なら算入され、超えた分は卒業要件として数えられない。対面科目をどの年次に置くかを、学部の開講時期と合わせて配分したい。
留学を予定している場合は、第二十八条第二項が、外国の大学または外国の短期大学に留学する場合に第一項を準用すると定めている。六十単位の枠を留学分でどこまで使うかを、入学前の既修得単位の認定と合わせて先に見積もる必要がある。
資格課程を並行して取る場合は、課程の必要科目が卒業要件の区分に入るかどうかで負担が変わる。区分外の科目が多いと、登録上限の中で卒業要件に使える枠が削られる。免許や資格の取得を狙うなら、選び方そのものを資格取得の勉強法のように時間の配分から考えたほうが現実的だ。
アルバイトの時間と衝突しそうなときは、登録上限と標準単位数の二つを見て、落とせる科目と落とせない科目を分ける。収入側の調整幅については大学生の節約とはに生活費の内訳から整理してある。地域の活動を学びに接続したい人はFLASPOのような窓口から探す道もある。
条文と調査結果の出典は次のとおり。単位と卒業要件は大学設置基準(e-Gov法令検索)、情報公表は学校教育法施行規則(e-Gov法令検索)、適格認定の基準は大学等における修学の支援に関する法律施行規則(e-Gov法令検索)、調査は文部科学省の改革状況調査(平成29年度)を参照した。
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