家族の介護でUターンするとき|働く365万人と離職10.6万人の内訳

戻る理由が家族のとき、求人より先に見るもの

実家から電話が来て、親の具合が思ったより悪いと知る。求人を調べ始めるのはそのあとだが、順番としては勤め先の制度を確かめるほうが先に来る。地元に戻ってから働き方を決めるのと、いまの職場で使える仕組みを確かめてから動くのとでは、残る選択肢の数が違う。

規模から押さえておきたい。総務省統計局の令和4年就業構造基本調査によれば、ふだん家族の介護をしている者は628.8万人で、このうち有業者が364.6万人である。介護をしている者に占める有業者の割合は58.0%で、5年前に比べ2.8ポイント上がっている。厚生労働省の資料も、家族の介護をしながら就業する人はこの10年間で73.6万人増え、約365万人に達したと書いている。

この調査は5年ごとに行われ、令和4年の結果は令和5年7月21日に公表された。調査でいう介護とは、入浴・着替え・トイレ・移動・食事などの際に何らかの手助けをする場合を指す。要介護認定を受けていない人の介護や、自宅外にいる家族の介護も含まれ、判断がつかないときは1年間に30日以上を目安にする。認定前の付き添いや、離れて暮らす親の世話も数のなかに入っているということである。

仕事を辞めて介護に入る形が標準ではない、という点がここから読める。働きながら介護している人が六割近くを占めるので、戻るかどうかの判断と、仕事を続けるかどうかの判断は切り離して考えられる。

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20代でも20.5万人が介護に関わっている

介護は中高年の話として語られやすいが、年齢階級別に見ると若い層も確かにいる。同じ調査で、介護をしている者のうち30歳未満は20.5万人、30から39歳は28.9万人だった。40から44歳が26.4万人、45から49歳が51.2万人と続き、55から59歳の110.4万人が最も厚い。

有業者の割合は若い層のほうが入り組んでいる。30歳未満は20.5万人中13.1万人が有業で63.6%、30から39歳は28.9万人中21.8万人で75.5%、45から49歳は77.2%に達する。男女で分けると全体で男性67.0%、女性52.7%と開き、50から54歳では男性88.5%、女性71.8%が働きながら介護している。

この年代の数字が意味するのは、学校を出て数年のうちに親や祖父母の世話が始まる人が二十万人規模でいるということである。Uターンを考える動機として家族を挙げる人の多くは、求人の条件より通える距離を優先する。帰る前に確かめる順番そのものはUターンで戻る前に確かめる移住の順番に整理した。

離職は減ってから、また増えた

辞めた人の数も同じ調査で把握できる。前職を離職した理由を介護・看護のためとした者は47万人で、5年前に比べ2万人減っている。ただし離職の時期を調査年の直近1年間に限ると10.6万人で、平成29年の9.9万人から0.7万人増えた。

介護・看護のため直近1年間に離職した者 令和4年 平成29年 増減
総数 10.6万人 9.9万人 0.7万人増
うち有業者 2.3万人 2.5万人 0.2万人減
うち無業者 8.3万人 7.5万人 0.9万人増
男 2.6万人 2.4万人 0.2万人増
女 8.0万人 7.5万人 0.5万人増

内訳を見ると、辞めたあと別の仕事に就いた人が2.3万人、無業のままの人が8.3万人である。離職した10.6万人のうち八割は職に戻っていない。性別では女性8.0万人に対し男性2.6万人で、三倍の差がついている。

推移の形も参考になる。平成19年から平成29年にかけては直近1年間の離職者が減り続けていたが、平成29年から令和4年にかけては増加に転じた。制度が整ってきた時期と重なっているので、制度の有無だけで説明できる数字ではない。地元に戻って福祉の仕事に就く選択については任期後のなりわいに福祉を選ぶ72人の側から見える。

制度は「93日」と「年5日」で組み立てる

使える仕組みは育児・介護休業法に並んでいる。中心になるのは介護休業で、要介護状態にある対象家族1人につき通算93日まで、3回に分割して取得できる。体制を作るためにまとまった期間休むことを想定した制度で、申出の期限は開始予定日の2週間前である。受給資格を満たせば原則として休業開始時の賃金の67%にあたる介護休業給付が出る。

日常的な用事に当てるのが介護休暇で、1年に5日、対象家族が2人以上なら10日まで取れる。介護保険の手続きや通院の付き添いのように、その日だけ抜ける必要がある場面に対応する。

働き方そのものを変える仕組みもある。所定外労働の制限、時間外労働を1月24時間・1年150時間までに抑える制限、午後10時から午前5時までの深夜業の制限、所定労働時間の短縮等の措置が並ぶ。どこまでが対象になるかの目安として、常時介護を必要とする状態の判断基準には介護保険の要介護2以上という線が置かれている。

93日という長さは、介護そのものを一人で抱える期間としては短い。制度の趣旨が体制づくりに置かれているためで、要介護認定を受け、サービスの組み合わせを決め、誰がどの曜日を担うかを固めるまでの時間と考えると筋が通る。

2025年4月から会社側の義務が増えた

令和6年の法改正で、勤め先がやるべきことが足された。令和7年4月1日から、介護に直面した旨を申し出た労働者に対して、個別の周知と意向確認が事業主の義務になっている。周知すべきは介護休業や両立支援制度の内容、申出先、介護休業給付に関することの三点で、方法は面談、書面交付、FAX、電子メール等のいずれかとされ、FAXと電子メールは労働者が希望した場合に限られる。

直面する前の段階にも手当てがある。労働者が40歳に達する年度の1年間、または40歳の誕生日からの1年間のいずれかで、制度に関する情報を提供することが義務づけられた。あわせて、両立支援制度を取得しやすい雇用環境整備の措置も求められる。

介護休暇の要件も緩んだ。労使協定によって対象から除外できる区分のうち、継続雇用期間が6か月未満の労働者という項目が撤廃された。転職して間もない人でも休暇を取れるようになったという意味で、戻る前提で職場を変える場合に効いてくる変更である。

介護のためのテレワーク等を選べるようにすることは、事業主の努力義務に位置づけられた。指針は、取得を控えさせるような周知は制度を実施したものと認められないとも書いている。申し出をしないよう促す、不利益をほのめかす、前例がないことをことさらに強調するといった言動がこれに当たる。離職の数を押し下げる方向に制度は動いているが、直近1年間の離職が10.6万人に増えた事実のほうが先に出ている。

よくある質問

介護を理由に地元へ戻るなら、仕事は辞めるしかないのでしょうか。介護をしている628.8万人のうち364.6万人が働いている。遠距離でも使える制度があるので、辞める前に勤め先の窓口で両立支援制度の説明を受けるほうが選択肢は残る。

内定先に介護の事情を伝えるべきですか。令和7年4月からは、申し出た労働者への個別周知と意向確認が会社の義務になっている。伝えなければ制度の案内は始まらないため、入社後に申し出る前提で、どの制度があるかを先に調べておくと話が早い。

Uターン就職の人数そのものは公表されているのですか。出身地に戻った就職者を直接数えた統計はない。関連する数字の読み方はUターン就職の人数は公表されていないにまとめてある。

遠くに住んだままでも制度は使えますか。介護休業は同居を条件にしていない。対象家族の要介護状態を証明できれば離れて暮らしていても申し出られるため、93日を3回に分けて、認定の申請、サービスの切り替え、施設への入所といった節目ごとに充てる組み立て方ができる。帰省の交通費までは制度の外にあるので、そこは自分で見込んでおく必要がある。

学生のうちにできることはありますか。親の年齢から逆算して、要介護認定の手順と勤め先の制度を一度調べておくだけでも判断は速くなる。地域との関わりを先に作っておきたい場合は、FLASPOのような募集から現地の活動に入る道もある。

出典は総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 結果の概要」(PDF)と、厚生労働省「育児・介護休業法 令和6年改正内容の解説」(PDF)、介護休業制度の法改正のポイントである。


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