島根県の関係人口を4本のKPIで読む|サポーター642人とマッチング512人

県の計画では、関係人口が4本の指標になっている

関係人口という言葉は、使う人によって範囲が揺れる。島根県の場合は、県の計画の中に施策として位置づけられ、達成を測る指標まで決められているので、何を数えているのかがはっきり読み取れる。県が公表している令和7年度の施策評価シートを開くと、「Ⅳ-2-(4) 関係人口の拡大」という番号が振られた一枚がある。幹事部局は地域振興部で、第2期島根創生計画に連なる施策である。

施策の目的には、都市部にいながら何らかの形で島根と関わりたいと希望する人々を掘り起こし、県内での活動の場を提供して、地域への貢献や将来の移住につなげると書かれている。この一文が、指標の組み立てにそのまま反映されている。掘り起こす段階、場を提供する段階、関わりが続いた結果という三つの層に、4本の指標が配置されているかたちだ。

指標 令和6年度の実績 令和7年度の目標 令和11年度の目標
ふるさと島根寄附金の寄附件数 1,806件 1,600件 2,000件
移住支援東京拠点等での関係人口拡大セミナー受講者数 343人 400人 400人
「しまっち!」サポーター新規登録者数 642人 500人 500人
「しまっち!」によるマッチング人数 512人 385人 525人
島根県「令和7年度 施策評価シート Ⅳ-2-(4)」から作成。いずれも当該年度4月から3月の単年度値

4本とも単年度の値で数えられている点は見落とせない。累計で積み上げる指標なら前年の成果が残るが、単年度値は毎年ゼロから数え直す。関わりを持った人の総数ではなく、その年に新しく動いた人数を追う設計になっている。

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超えた指標と、届かなかった指標が分かれている

令和6年度の実績を目標と並べると、様子が二つに分かれる。サポーターの新規登録は642人で、以後の目標として置かれている500人を上回った。マッチング人数は512人で、令和7年度の目標385人を大きく超え、計画の最終年度である令和11年度の525人にもすでに迫っている。寄附件数も1,806件で、令和7年度の目標1,600件を上回る。

一方で届いていないのがセミナーの受講者数である。343人に対して目標は400人で、57人足りない。目標値は令和7年度から令和11年度まで400人で固定されているので、県としては増やす計画ではなく、この水準を保つ計画だと読める。それでも実績が下回っているところに、都市部で人を集めることの難しさが出ている。

注目したいのは、この並びが「入口が細く、奥が太い」形になっていることだ。セミナーに来る人は目標に届かないのに、サイトに登録して実際に地域の活動へ結びつく人は目標を超えている。計画を立てた時点の想定と、実際に人が動いた経路がずれたと考えるほうが自然である。マッチング人数の目標が令和7年度の385人から令和11年度の525人へ段階的に上がる設計も、実績が追い越してしまった。関係人口そのものの定義や分類を確かめたいときは関係人口とは?総務省・国交省の定義の違いと5つの分類、ふるさと住民登録制度までが手がかりになる。

「しまっち!」は募集の掲示板ではなく、二つの登録で成り立っている

指標に二度登場する「しまっち!」は、しまね関係人口マッチング・交流サイトという名前で、令和3年10月に開設された。県の令和5年度の施策評価シートにその時期が記されている。同じ資料には、掲載されたプログラムが97件に達したことも書かれていた。

この仕組みは、登録する側が二種類に分かれているところに特徴がある。地域の側は活動プログラムを出す「オーナー」として登録し、関わりたい人は「サポーター」として登録する。県の令和6年度の施策評価シートは、前年度比でオーナー数が2.5倍、サポーター数が3倍に増え、マッチング件数は2倍になったと記している。令和7年度のシートでも、マッチング件数が前年度比で約1.5倍になったと報告されている。

受け入れる側を増やす作業にも手当てがされている。県内では研修会の開催やアドバイザーの派遣を通じて、関係人口を受け入れる機運の醸成と理解を進めてきたと書かれている。都市部で人を募るだけでは、来た人の行き先がない。オーナーが2.5倍になったという数字は、募る前に受け皿を作った結果として読める。島根県が人を受け入れてきた実績は協力隊の側にも表れていて、県内の状況は島根県の協力隊386人と定住率60.3%|19市町村の受け入れ地図に整理している。

寄附という関わり方が、同じ施策の中に置かれている

4本の指標のうち1本が寄附件数であることは、この施策の考え方をよく表している。現地に来ることだけを関係人口と数えていない。ふるさと島根寄附金の寄附件数は令和6年度に1,806件で、目標は令和7年度の1,600件から令和11年度の2,000件まで、毎年100件ずつ上がる階段になっている。

令和7年度のシートでは、島根への感謝や貢献したいという考えを持つ人へのアプローチを強めるため、寄附メニューの見直しを行い、制度の活用が進んだと書かれている。課題として挙げられているのは、寄附に関する効果的な周知である。集まった寄附がどの事業に使われたかを伝えきれていないという自己評価で、今後の方向性には寄附者に対する定期的な情報発信が置かれている。

このほかに、県公式LINEへの登録を促すキャンペーンと、ふるさと親善大使「遣島使」同士の交流も同じ施策の中に並んでいる。県の認知度を上げる取組と、すでに島根を知っている人のつながりを保つ取組が、ひとつの施策として束ねられている構造だ。関わり方を一本道で考えず、寄附、情報の受け取り、現地での活動を並列に置いているところは、他県の計画を読むときの比較軸にもなる。テレワークのような働き方を通じた関わりについては関係人口のうちテレワーク型は182万人|1割という比率と9.8%の実施率で数字を押さえている。

予算は増え、課題は「次の一歩」に移っている

施策評価シートには、ぶら下がっている事務事業の一覧も付いている。金額は前年度が令和6年度の実績額、今年度が令和7年度の当初予算額である。中心となる「しまね関係人口・移住促進事業」は70,764千円から103,699千円へ増え、所管はしまね暮らし推進課。「ふるさと島根寄附金」は52,379千円から62,415千円へ、「島根県の認知度向上対策事業」は23,242千円から19,834千円へ、「島根を創る人づくりプロジェクト」は10,290千円で据え置きとなっている。

マッチングが目標を超えている事業の予算が1.5倍近くに増え、認知度向上の予算が減っているという配分は、評価の文章と整合している。人を知ってもらう段階より、関わり始めた人を地域につなぐ段階に重心が移っているということだ。

そのうえで県が課題として書いているのは、関わりの深さである。島根とのつながりが生まれた関係人口を、地域づくりの担い手や将来的な移住につなげるため、プログラムへの継続的な参加を通じて関心と関わりを深めていく必要があるとされている。令和6年度のシートでは、セミナーの参加者にサポーター登録と地域での活動を呼びかけられておらず、直接島根に関わる機会を作れていないことが課題だと、より具体的に書かれていた。一度の参加で終わらせないための仕組みづくりが、令和7年度の方向性に挙がっている。学生が地域と関わる入口を探している場合も、こうした県や市町村の評価シートは実際の受け皿を知る手がかりになる。地域と学生の接点についてはFLASPOでも情報を扱っている。

よくある質問

「しまっち!」には県外の学生でも登録できるのか。サポーターは島根と関わりたい人を対象にした登録で、居住地を島根県内に限る仕組みではない。登録したうえで、オーナーである地域側が出しているプログラムに応募する流れになる。プログラムの内容と時期はその都度変わるため、サイトで直接確かめるのが確実である。

指標が単年度値だと、関係人口の総数はわからないのか。公表されている4本からは、その年に新しく動いた人数しか読み取れない。累計で何人が島根と関わっているかは、この施策評価シートの範囲では出てこない。県が累計値を使っていたKPIもあるので、年度をまたいで比べるときは単年度値か累計値かを先に確かめる必要がある。

セミナーの受講者数が目標に届かないのは失敗なのか。シートの書き方はそうなっていない。課題として挙げられているのは人数そのものではなく、参加した人を次の段階へ運べていないことである。入口の人数を増やすより、来た人が登録と活動へ進む率を上げるという整理になっている。

他県の関係人口施策と比べたいときはどこを見ればよいか。都道府県はたいてい施策評価や行政評価の資料を公開しており、指標の名前と実績値が同じ形式で並んでいる。島根県の場合は寄附件数とマッチング人数が同じ施策に入っているが、県によって何を数えるかは違う。数えている対象をそろえてから比べないと、規模の差を取り違えることになる。


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