自治体のハッシュタグは何点集まるか|874点と290点を分けた募集期間

タグを配るところから募集が始まる

岐阜県恵那市が公式Instagramで写真を募ったとき、応募の手順は三つだけだった。市のアカウントをフォローし、市内で撮った写真に「#私の好きな恵那」を付け、期間内に投稿する。審査の対象になるのは、このタグが付いた投稿に限られる(恵那市「第6回Instagramフォトコンテストの入賞作品が決定」)。

横浜市保土ケ谷区は「#フォトガヤ2025」、和歌山県海南市は「#海南市フォトコン2024夏」と部門別のタグをセットで付けるよう求めた。さいたま市が事務局を務める東日本連携・創生フォーラムの桜企画では、共通タグの「#つなぐ旅桜フォトコン」に加えて、撮影した連携都市の名前をタグにする決まりがあった。30都市のどこで撮った一枚かを、投稿者自身に分類させる仕組みである。

こうして見ると、地域が配るタグは「話題を広げるための合図」というより、応募を受け付ける窓口に近い。郵送もフォームもなく、投稿そのものが応募になる。集計する側は、タグで検索した結果をそのまま応募一覧として扱える。だからタグの文字列は重複しにくいものが選ばれ、年度や季節が入ることも多い。羽島市が「羽島の魅力2023」「羽島の魅力2024」と年を替えているのは、その年の応募だけを拾うためだ。

タグの文字列選びにも落とし穴がある。一般的な言葉を選ぶと、企画と関係のない投稿が同じタグで並び、応募分の抽出に手間がかかる。恵那市の「私の好きな」や保土ケ谷区の「フォトガヤ」のように、地名や造語と年号を組み合わせるのは、検索した結果を応募一覧として扱えるようにするための工夫といえる。

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48日で874点、321日で290点

点数そのものを並べると、募集のかたちの違いが見えてくる。恵那市の第6回は令和5年3月1日から4月17日までの48日間で874点、保土ケ谷区は2025年7月1日から10月26日までの118日間で1,220点だった。岐阜県羽島市は2023年4月1日から2024年2月15日までと321日にわたって募ったが、集まったのは290点である。

自治体・企画 応募タグ 募集期間 日数 応募点数 1日あたり
保土ケ谷区(横浜市) #フォトガヤ2025 2025年7月1日〜10月26日 118日 1,220点 約10.3点
恵那市(第6回) #私の好きな恵那 令和5年3月1日〜4月17日 48日 874点 約18.2点
つなぐ旅〜東日本〜桜(30都市) #つなぐ旅桜フォトコン 令和7年3月20日〜5月31日 73日 851件 約11.7件
羽島市(羽島の魅力2023) 羽島の魅力2023 2023年4月1日〜2024年2月15日 321日 290点 約0.9点

1日あたりに直すと、恵那市は羽島市の20倍になる。期間を長く取れば点数が積み上がるわけではない、という結果である。桜や紅葉のように撮れる時期が決まっているテーマは短い期間に集まり、通年で「まちの魅力」を募ると締切の実感が薄れる。恵那市は一人が何点でも応募できる一方、入賞は一人1点までとしており、常連の投稿が点数を押し上げる余地も残していた。

点数が出ていない企画もある。海南市の2024年夏の企画は7月5日から9月6日までの64日間で、結果ページには6件の受賞アカウントが並ぶが、応募点数は載っていない。応募の受け付け方は恵那市と同じくフォローとタグだが、何点集まったかを公表するかどうかは主催者の判断にゆだねられている。点数を比べるときは、公表している企画だけが並ぶという偏りを承知しておく必要がある。

タグのほかに並んでいる条件

応募のつもりで投稿しても、受け付けられないことがある。保土ケ谷区は、応募時にアカウントを非公開にしていた場合は応募も当選も無効とし、画素数やサイズが極端に小さい写真も当選を無効にすることがあると書いている。タグを付けても、区の側から投稿が見えなければ審査に乗らないという理屈だ。

公式アカウントのフォローを必須にする例は多い。恵那市、保土ケ谷区、つなぐ旅の桜企画はいずれもフォローを応募条件に置いた。さいたま市の企画は1投稿につき写真1枚までで、複数応募するなら投稿を分けるよう求め、同一人物が複数アカウントから応募して重複受賞した場合は受賞を取り消すとしている。海南市は投稿の説明文に撮影場所を書くよう指定し、過去に撮った写真でも応募できると明記した。

条件の書きぶりは、集計の手間と裏表になっている。撮影地を書かせるのは市内で撮られた確認のため、1投稿1枚に絞るのは審査対象を特定するため、公開アカウントを求めるのは確認できる状態を保つためである。応募する側から見れば、タグを付けただけで条件を読み飛ばすと、せっかくの一枚が審査の前で外れる。

権利の処理は応募する側に置かれている

写真には、撮った人以外の権利が写り込む。恵那市の募集要項は、作品の中に他人が著作権などを持つ著作物が含まれる場合、応募者の責任で権利者から複製などの利用許諾を得るものとし、人の肖像についても同じ扱いだと定めている。海南市も、個人が特定される被写体や第三者が権利を持つ著作物を含む場合は、許可を得てから応募するよう求めた。

自作で未公表であることを条件にする例もある。恵那市は他の作品の模倣や類似と認められた場合、受賞決定後でも賞を取り消すと書き添えた。さいたま市の企画も、過去に他のコンテストで入賞した作品は応募できないとしている。賞という形で公表する以上、あとから権利の問題が出ると取り消しが必要になるため、入口で線を引いているわけだ。

受け取った写真を自治体の広報物に使う場合は、さらに別の整理が必要になる。集まった投稿をどこまで二次利用できるかは要項の文面で決まるので、運用を引き継ぐときは募集時の文言まで遡って確かめることになる。地方PRの写真は誰に許可を取るかで扱った段取りと、考える順番は同じである。

点数は何の数字として読めるのか

応募点数は、公表される数字としては珍しく、投稿という行動の件数をそのまま数えたものだ。閲覧数やフォロワー数と違い、撮って選んで投稿するまで進んだ人の数に近い。ただし、来訪者が増えたかどうかを示す数字ではない。恵那市も保土ケ谷区も、点数の横に観光客数を並べてはいない。

規模の比較にも注意がいる。30都市が参加した桜の企画が851件、一つの区の企画が1,220点という並びは、広域で集めれば多く集まるという想像とは逆である。参加都市が増えると、撮影できる場所も、告知の経路も広がるが、応募者から見れば「どの都市のタグを付けるか」という手間が増える。入口の手続きが一つ増えるだけで点数は動く。

地域の発信を任された学生や職員がこの数字を使うなら、期間で割った値と、同じ企画の前年との差を見るのが現実的だ。届く範囲そのものはSNS発信で地域に人は来るのか、運用の体制は自治体のSNS発信に学生が入るときで整理している。学生が地域の企画に関わる入口を探しているなら、FLASPOのような窓口から現場の募集に当たるのが早い。

よくある質問

応募点数は毎回公表されるのか。公表の仕方は自治体ごとに違う。恵那市、羽島市、保土ケ谷区、さいたま市の企画は結果発表のページに点数を載せているが、海南市の2024年夏の結果ページは受賞アカウントを示すだけで、応募点数は出ていない。点数を知りたい場合は結果発表のページを探し、それでも出ていなければ公表していないと考えるのが早い。

タグを付け忘れた投稿は後から直せるのか。要項に救済の規定は見当たらない。審査の対象は期間内にタグ付きで投稿されたものと書かれているため、期間内に投稿を編集してタグを足せるかどうかは主催者の判断になる。確実なのは、投稿の時点でタグを付けておくことだ。

期間を長くすれば点数は増えるのか。今回の4件では逆の結果が出ている。321日の羽島市が290点、48日の恵那市が874点である。締切が遠いと投稿が先延ばしになりやすく、花や雪のように撮れる時期が限られるテーマは短期でも集まる。期間を決めるときは、撮れる季節と締切の近さを合わせて考えることになる。

賞品は点数に影響するのか。今回の資料からは判断できない。桜の企画は参加都市の特産品や地域通貨を賞品にしており、品目も金額も都市ごとに違う。応募点数との関係を確かめるには、同じ企画で賞品だけを変えた年の比較が必要になる。


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