自治体のネーミング募集|賞金と権利の扱いを募集要項から読む

応募に必要なのは語感より、要項を読み切る手間である

新しい条例や施設に名前をつける公募は、全国の自治体がくり返し出している。思いついた言葉を送るだけに見えるので、学生がはじめて応募する公募としては入りやすい。ただ、実際に要項を開くと、名前そのものの条件は数行しかなく、残りは権利の扱い、審査の段取り、公表される個人情報の範囲で埋まっている。落ちる理由の多くは語感ではなく、この後半を読まずに出したことにある。

具体例として、札幌市が2025年に出した共生のまちづくり条例のロゴマーク・愛称募集要項を通して見ていく。対象は2025年3月28日に制定され、同年4月1日に施行された条例で、市民や事業者に広く知ってもらうためのPRとして愛称とロゴマークを募ったものである。募集期間は2025年4月15日から6月13日必着、応募資格は市内・市外、プロ・アマを問わずどなたでもとされ、未成年は保護者の同意を得たうえで応募することになっていた。賞の構成は次のとおりである。

区分 賞 人数 賞金
ロゴマーク 最優秀賞 1名 5万円
ロゴマーク 優秀賞 2名 3万円×2名
愛称 最優秀賞 1名 3万円
愛称 優秀賞 2名 1万円×2名
募集中の地域コンテスト

読んだら、地域に行ってみよう

地域が出したお題に、オンラインでアイデアを応募できます。受賞すると、現地に無料で招待されます。

募集中の地域をすべて見る

同じ言葉を他の人も思いつく、という前提で書かれている

賞金の欄に続く注記に、読み飛ばせない一文がある。愛称について同一の作品が複数あった場合は、その人数で賞金を按分する、というものである。ロゴマークにはこの注記がなく、愛称にだけ付いている。図柄は偶然一致しないが、短い言葉は複数の応募者が同じものを出しうる、という前提が要項に組み込まれているわけである。語呂のよい組み合わせほど重なりやすいと考えたほうがよい。

渡され方にも条件がある。中学生以下が受賞した場合は、同額の図書カードまたはクオカードが進呈されると書かれている。さらに表彰の場についても、2025年10月12日と13日に札幌駅前地下歩行空間で開かれるイベントの中で行う予定とし、最優秀賞の受賞者は可能な限り参加してほしいとしたうえで、会場までの交通費は支給しないと明記している。遠方から応募して最優秀賞を取ると、賞金より旅費が上回る展開もありうる。応募の前に、表彰の日程と場所を確かめておきたい。

「市に帰属」と「行使しない」が並んで書かれる理由

権利の条項はほぼ定型で、札幌市の要項も、応募作品に係る諸権利および採用された愛称・ロゴマークの著作権に関する全ての権利は全て市に帰属するものとし、応募者は採用されたものについて著作者人格権を行使しないものとする、と書いている。帰属と不行使がわざわざ並んでいるのは、二つが別の権利だからである。

著作権法第2条第1項第1号は、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義する。そのうえで第59条が、著作者人格権は著作者の一身に専属し、譲渡することができないと定めている。つまり財産的な権利は契約で移せても、作者であることに結びついた権利は移せない。だから要項は、移せる部分は「帰属」と書き、移せない部分は「行使しない」という約束の形で書く。合わせて、応募者自身が商標や意匠の登録をしないことも条件に含まれている。採用後に自分で権利化する道は、応募した時点で閉じると考えておく必要がある。

採用された後に何が起きるかも、同じ条項の並びに書かれている。採用された愛称とロゴマークは、市が作成する各種印刷物やポスター、ホームページなどの各種媒体で使用され、特に必要がある場合にはデザイン等に必要な修正・加工を行うことがある、という内容である。提出した形のまま使われるとは限らず、配色や字詰めが変わって世に出ることもある。手を入れられたくないという気持ちがあるなら、応募の前にこの一行を読んでおくほうがよい。著作者人格権を行使しないという約束は、この修正・加工を成り立たせるためのものでもある。

賞金に税金はかかるのか、という現実的な問い

3万円や5万円という金額を見ると、確定申告が要るのかどうかが気になる。国税庁の案内では、懸賞や福引きの賞金品は一時所得の例として挙げられている。計算は、総収入金額から収入を得るために支出した金額を引き、さらに特別控除額(最高50万円)を引いて求める。差し引いた結果が残った場合も、そのうち2分の1だけを給与所得などと合算して総所得金額を出す仕組みになっている。

この特別控除の50万円という枠が効いてくる。名前の公募で用意される賞金は数万円から数十万円の幅に収まることが多く、その年に他の一時所得がなければ、控除の枠の内側に収まる計算になる。ただし枠は年単位で、受け取った賞金の合計に対して一度だけ働く。複数の公募で受賞した年や、ほかに満期の一時金を受け取った年は、合計してから判断することになる。なお事業に関して受けるものは一時所得から外れるため、同じ賞金でも立場によって扱いが変わる。金額が大きい場合や判断に迷う場合は、国税庁の案内か税務署で確かめるのが確実である。

落ちる作品は、審査の前の段階で外れている

札幌市の要項は、審査の対象外となるものを五つ挙げている。公序良俗に反するもの、法令に違反する又はそのおそれがあるもの、特定の主義・政治的主張・宗教の普及を目的とするもの、公共性に乏しいもの、営利を目的としたものである。さらに、国内外で未発表であること、第三者の著作権・特許権・商標権などを侵害するおそれがないことが前提に置かれている。作品の出来を競う前に、この門を通れるかどうかで振り分けられている。

未発表という条件は、学生がとくに踏みやすい。授業の課題で発表した案や、サークルのSNSに載せた言葉は、すでに公表された扱いになりうる。また第三者から権利侵害の損害賠償を提起された場合は応募者自らの責任と費用で解決し、市が損害を被った場合は賠償を求めることがあるとも書かれている。思いついた言葉が既存の商標やサービス名と重なっていないかは、出す前に検索して確かめておきたい。応募の下ごしらえの考え方は、分野は違っても学生コンテストの種類別攻略や学生が海外のコンテストに応募するまでと共通している。

よくある質問

その自治体に住んでいなくても応募できるのか。札幌市の例は市内・市外を問わないとしていたが、住民や在学者に限る募集もある。要項の応募資格の欄だけは必ず読み、在住・在学・在勤のどれが条件になっているかを確かめたい。市外から応募できる場合でも、受賞時に公表される住所の粒度が市内と市外で変わることがある。

受賞すると名前が公表されるのか。札幌市の要項では、優秀賞以上の受賞者について、作品とともに氏名、住所(市内は区まで、市外は市町村名まで)、年齢、学生の場合は所属、作品の説明などを、報道機関へのプレスリリース資料や市のホームページで公表するとされていた。就職活動で実績として語るつもりなら、この公表がむしろ裏づけになる。

落選したら連絡は来るのか。札幌市の要項は不採用通知を行わないと明記し、選考過程の問い合わせにも対応しかねるとしている。結果発表の時期を自分で控えておき、公式サイトを見に行く形になる。同じ要項には、選考が関係部局職員による一次選考と、インターネット上での市民投票による二次選考の二段構えだったことも書かれていた。

採用された後に取り消されることはあるのか。条件違反が判明した場合は採用が無効になり、受賞結果の発表後でも受賞を取り消すこと、取り消し後には賞金等相当額の返還を請求することがあると書かれている。応募用紙の記載内容に虚偽があった場合も同様である。地域に関わる活動の実績づくりとして公募を使うなら、要項の条件を満たしたうえで出すところまでが準備である。こうした地域と学生の接点を探している人は、FLASPOが自治体と進めているプロジェクトや、大学生の政策コンテストのような提案型の公募もあわせて見ておきたい。


アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

FLASPO

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。

FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。

賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。

コンテストを探す▶︎

FLASPOで募集中のコンテスト

自治体や企業が出したお題に、学生・若者がオンラインでアイデアを応募できます。募集中のものも、これまでのお題と結果も、一覧で見られます。