高齢化率46.5%の尾鷲市に協力隊28人|三重県で最も多く受け入れる港町

人口1万5千人の市に、隊員が28人いる

熊野灘に向かって開いた入り江が、そのまま市街地になっている。三重県尾鷲市の地域おこし協力隊は、令和7年度に28人。総務省が令和8年4月24日に公表した令和7年度 地域おこし協力隊の隊員数等についての市町村別の表に、その数が載っている。

同じ表で三重県全体を見ると、隊員は124人、受け入れている自治体は20団体。県内の隊員の22.6%が尾鷲市ひとつに集まっていることになる。県内で次に多いのは南伊勢町の11人、いなべ市の10人、名張市の9人で、尾鷲市との開きは大きい。

全国の隊員は8,196人、取り組んでいる自治体は1,187団体。単純に割れば1団体あたり6.9人で、尾鷲市はその4倍を抱えている。前の年度の令和6年度は24人だったので、1年で4人増えた。人口14万人台や11万人台の市が1桁の隊員しか置いていない例もあるなかで、この規模は意図して作られたものだと見るほうが自然である。

規模の読み方そのものは、地域おこし協力隊の地域別ガイドで都道府県の単位から整理している。人口に対する隊員の比率が極端に違う例としては、人口11万人の唐津市に協力隊は2人という対照も合わせて見ておきたい。

募集中の地域コンテスト

読んだら、地域に行ってみよう

地域が出したお題に、オンラインでアイデアを応募できます。受賞すると、現地に無料で招待されます。

募集中の地域をすべて見る

配属先の集落は、2人に1人以上が65歳を超えている

28人がどこに入るのかを考えるには、市の中の濃淡を見たほうが早い。尾鷲市統計書の令和7年度版には、町ごとの高齢化率が載っている。基準日は令和7年10月1日で、資料は市民サービス課のものだ。

地区 総数(人) 65歳以上(人) 高齢化率
尾鷲市 総数 15,139 7,035 46.5%
旧尾鷲町内 12,756 5,376 42.1%
須賀利町 160 143 89.4%
古江町 298 233 78.2%
早田町 89 66 74.2%
賀田町 368 247 67.1%
九鬼町 334 223 66.8%
三木里町 429 282 65.7%
尾鷲市統計書 令和7年度版「市内各地区における高齢化率」(令和7年10月1日現在)より抜粋

市全体の46.5%でも高いが、中心部を離れた漁村集落は様相が違う。須賀利町は160人のうち143人が65歳以上で、89.4%。早田町は89人、古江町は298人という規模である。行政区としては残っているが、集落の機能を住民の手だけで回すのは難しい段階に入っている。

市が過去に出した尾鷲市地域おこし協力隊募集のページ(令和5年8月29日公開)では、遊休農地の活用に1人、水産振興に1人、自然体験の学習プログラム「尾鷲育」の推進に1人を募り、さらにLocalCoopの推進で2人を予定と書かれていた。水産振興の枠には九鬼定置漁業株式会社の支援が付く。高齢化率66.8%の九鬼町で漁業の高付加価値化を担う、という組み立てになる。

世帯は増えたのに、人は半分以下になった

尾鷲市統計書の住民基本台帳の表は、昭和29年から令和7年までを1本の列で並べている。昭和29年は7,330世帯・33,188人。令和7年は8,679世帯・15,139人(男7,022人、女8,117人)である。

世帯の数は70年で1,349増えているのに、人口は45.6%まで落ちた。1世帯あたりの人員が4.53人から1.74人に変わったからで、同じ数の玄関が並んでいても、その奥にいる人の数が違う。空き家の発生が集落の単位で進むのは、この差が積み上がった結果である。

動きの内訳も同じ統計書に載っている。令和6年度の転入は536人(県内218人、県外263人、出生50人、その他5人)、転出は954人(県内254人、県外314人、死亡381人、その他5人)で、差引は418人の減。転入のうち半数近くが県外からで、人が来ていないわけではない。来る人より出る人と亡くなる人が多い、という形である。

婚姻の届出は令和6年度に27件、離婚は22件だった。年度ごとの数字は小さく、1件の増減で比率が大きく動くため、傾向として読むには数年分を並べる必要がある。

報償費は月20万8千円、活動費は年150万円まで

条件の話に移る。令和5年8月の募集では、報償費が月額208,000円(月20日以上の活動)、活動経費が最大年150万円と示されていた。活動経費は予算の範囲内での補助という扱いで、住居に要する費用もここに含まれると明記されている。現地見学会が6月23日から25日、応募の締切が7月中旬、着任は10月1日を希望という日程だった。

この金額が自治体の裁量だけで決まっているわけではない。総務省の令和8年度の地方財政措置の見通し等を踏まえた留意事項では、隊員1人の活動に要する経費として550万円が特別交付税措置の上限とされている。内訳は報償費等が350万円、その他の活動経費が200万円。募集等に要する経費は1団体あたり350万円、隊員の日々のサポートに要する経費は1団体あたり200万円が上限である。

月208,000円を12か月で見ると約250万円で、報償費等の350万円の枠には収まる。活動経費の年150万円も、措置の200万円の内側にある。つまり尾鷲市の条件は国の枠を使い切る形ではなく、余地を残して設計されている。28人という人数を同時に抱えるには、1人あたりの単価だけでなく、受け入れ側の手間の総量が効いてくる。

なお活動期間は概ね1年以上3年以下が原則で、令和8年度から、地場産業等に従事して任期後にその分野で起業や事業承継を行う場合には最大5年に延ばせる特例が入った。漁業や林業のように技術の習得に時間がかかる分野を想定した拡充である。

三重県で残る人は10人のうち6人

受け入れた人数と、残った人数は別の数字である。同じ総務省の資料には都道府県別の任期終了者数と定住率が載っている。対象は令和2年4月1日から令和7年3月31日までの直近5年間に任期を終えた隊員で、調査時点は令和7年5月1日。

三重県は任期終了者が142人、そのうち同じ地域に定住したのが87人で、定住率は61.3%。全国は8,762人のうち6,163人が定住して70.3%なので、三重県は9ポイントほど低い。都道府県によって40%台から80%台まで散らばる指標なので、低いほうの側にいることは確かである。

全国の内訳を見ると、活動地と同じ市町村に定住したのが5,038人(57.5%)、近隣の市町村が1,125人(12.8%)、他の地域へ転出したのが2,013人(23.0%)。同じ市町村に残った人のなりわいは、起業が2,296人(45.6%)、就業が1,753人(34.8%)、就農・就林が583人(11.6%)、事業承継が70人(1.4%)という構成だ。

定住率を押し上げる要素のひとつは、中間支援の有無だと言われている。三重県には令和3年2月に設立された一般社団法人三重県地域おこし協力隊サポートデスクがあり、同種のネットワークは全国で41団体。県単位の比較は島根県の協力隊386人と定住率60.3%でも扱っている。学生のうちから地域との関わりを試す道筋については、FLASPOでも地域と若者をつなぐ企画を扱っている。

よくある質問

「尾鷲市の募集はどこで確認できますか」。市の公式サイトの募集ページが一次情報になる。令和5年8月の回では3枠の募集とLocalCoop推進2枠の予定が示されていた。年度によって担当課と枠が変わるため、過去のページの条件がそのまま次の回に当てはまるとは限らない。

「報償費のほかに受け取れるものはありますか」。活動経費が年最大150万円の枠で用意され、住居に要する費用もその中に含まれる。国の措置としては1人550万円が上限で、報償費等350万円と活動経費200万円に分かれている。

「28人もいると、同じような仕事が重なりませんか」。令和5年の募集を見るかぎり、遊休農地、水産、子どもの自然体験、LocalCoopと担当領域が分かれている。市域が南北に長く、集落ごとに課題が違うことも、枠を分けやすい事情になっている。

「高齢化率が9割に近い集落に、1人で入るのですか」。須賀利町の89.4%という数字はそれ自体が特異値だが、配属は集落単独ではなく市の課に委嘱される形が基本である。日々のサポートに要する経費として1団体200万円の措置があり、受け入れ側に相談先を置くことが前提になっている。

「任期のあと、市内に仕事はありますか」。全国の数字では定住した人の45.6%が起業を選んでいる。尾鷲市は水産と林業が基幹で、令和8年度からは地場産業に限った最大5年の特例も使える。残るかどうかを任期の終わりに考えるのではなく、2年目から準備できる制度設計になっている。


アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

FLASPO

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。

FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。

賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。

コンテストを探す▶︎

FLASPOで募集中のコンテスト

自治体や企業が出したお題に、学生・若者がオンラインでアイデアを応募できます。募集中のものも、これまでのお題と結果も、一覧で見られます。