地方副業の謝礼は平均3.4万円|Skill Shiftと自治体制度91人の差

月に3万円台で、よその土地の仕事を受ける

住む場所を変えずに地方企業の仕事を手伝う働き方は、報酬の桁がふつうの転職とは違う。独立行政法人労働政策研究・研修機構が出しているビジネス・レーバー・トレンド2022年5月号は、地方副業マッチングの「Skill Shift」を取材し、副業者1人あたりの月額謝礼の基準を3万円から5万円、実際の平均を3.4万円と記している。交通費を別に支払う場合もある。

月3.4万円は、生活を支える額ではない。だからこそ案件の中身は、常勤の採用では埋めにくい部分に寄る。記事が挙げているのは業務の効率化やそれに適したツールの導入といった領域で、週に何時間かの関与で成立する仕事が切り出されている。

このサービスを運営しているのはみらいワークスで、開始は2017年12月。公的統計に載る制度ではなく民間のプラットフォームなので、規模は運営会社の発表と、取材した第三者の記録から追うことになる。以下では、その民間側の数字と、総務省が持っている自治体側の制度の数字を並べて見ていく。

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登録者は5年で1万人に届いた

同じ取材記事には、登録人材の推移が記されている。2021年4月時点で約6,000人、2022年4月時点で約8,400人。みらいワークス全体のマッチングサービスでは約3万8,000人という規模だった。

その後、同社は2022年10月6日のリリースで、登録プロ人材数が2022年9月末に1万人を突破したと発表した。前年対比の伸び率は2019年が105%、2020年が185%、2021年が119%、2022年は115%の予測値とされている。2020年の185%という跳ね方は、在宅での勤務が一気に広がった年に重なる。

時点 登録人材 出典
2021年4月 約6,000人 JILPT 2022年5月号
2022年4月 約8,400人 JILPT 2022年5月号
2022年9月末 1万人を突破 みらいワークス 2022年10月6日
いずれも「Skill Shift」の登録人材数。みらいワークス全体の登録者数とは別の数字

受け入れ側の広がりも記録されている。取材時点でクライアント企業の掲載案件は約1,100件、連携先は7県1府と29市町村。都道府県の単位で入っているところと、市町村が個別に使っているところが混ざっている構造だ。登録者が1万人で案件が1,100件なら、人の側が9倍ほど多い。応募すれば必ず入れる仕組みではない。

企業が払うのは掲載料だけという値付け

費用の置き方も、人材紹介とは違っている。求人の掲載料は1か月9万8,000円(税別)で、仲介手数料や月額料金は発生しない。登録する側は無料である。

成約時に年収の何割かを受け取る紹介の形だと、1人あたりの単価が低い副業では成り立たない。掲載課金に寄せているのは、月3万円台の謝礼という相場と釣り合いを取るためだと読める。企業からすると、9万8,000円は副業者の謝礼3か月分に近い。

集まり方についても数字が出ている。通常は2週間で10人以上が応募し、平均の応募数は18人。地方の中小企業が単独で求人を出して18人の応募を得るのは難しいので、ここはプラットフォームの効き目が出ている部分だろう。ただし記事の中に、成約後の成果を測った定量的な指標はない。効率化の進み方といった定性的な紹介にとどまっている。

公的な窓口と民間サービスの住み分けは、副業のマッチングはどこで起きているかでも整理している。

自治体の側の制度は、91人しか数えていない

同じ「地方副業」を、総務省は別の枠で数えている。地域活性化起業人の副業型である。自治体と、三大都市圏等に所在する企業に所属する社員個人が契約を結ぶ形で、令和6年度から始まった類型だ。

令和6年度の実績は91人。男性78人、女性13人で、年齢は30歳から39歳が31人(34.1%)、40歳から49歳が25人(27.5%)と、30代と40代で6割を占める。活用分野は観光が19人、DXが17人(19%)、地域経済活性化が15人(17%)の順。同じ年度の企業派遣型は780人で、両方を合わせた871人のうち副業型は1割ほどにすぎない。

項目 Skill Shift(民間) 地域活性化起業人 副業型(制度)
規模 登録1万人・案件約1,100件 令和6年度 91人
報酬 月額謝礼の平均3.4万円 報償費等の措置上限100万円/人・年
関与量 案件ごとに設定 月4日以上かつ月20時間以上
現地滞在 案件ごとに設定 月1日以上
費用の負担 企業が掲載料9万8,000円/月 特別交付税で自治体を支援
民間プラットフォームと特別交付税措置は数え方が違うため、人数を直接足し引きはできない

措置の内訳は、受入れの期間中に要する経費として報償費等が1人100万円、旅費が1人100万円で、合計の上限は200万円。受入れの期間前に要する経費は1団体100万円で措置率0.5、副業者が発案・提案した事業に要する経費は1人100万円で同じ措置率である。報酬の天井の仕組みは地域に関わる副業の収入の天井で詳しく扱っている。

数が少ないほうに、事例の記録が残る

91人という規模は小さいが、総務省は令和6年度の活用事例集(副業型)を作って8件を載せている。北海道訓子府町ではまちづくり会社の設立準備、岐阜県山県市では同じ企業の社員2人がDXと教育の分野でそれぞれ活動、沖縄県北中城村では農林水産の分野という内容だ。

山県市の例は、副業型の募集に応募した社員の動きを見た同じ会社の社員が続いて応募した、という経緯が書かれている。1人が入ることで次の人が入りやすくなる流れは、求人票の数では見えない部分である。

民間のプラットフォームには1万人が登録していて、制度の枠には91人が入っている。この差は制度が失敗しているという意味ではなく、カウントの対象が違うということだ。民間側は登録した人の数で、制度側は自治体が契約して特別交付税を申請した人の数である。実際に地方の仕事を受けている人の総数は、どちらの数字よりも多いはずだが、それを一本で数えた公的な統計は見当たらない。

制度の側は要件が細かく、使えない組み合わせもある。地域活性化起業人が使えない組み合わせで条件を確かめてから動くほうが早い。学生のうちに地域の課題に触れておきたい人は、FLASPOのような若者向けの企画から入る道もある。

よくある質問

「Skill Shiftの登録は有料ですか」。取材記事では、登録する側は費用がかからず無料で登録・応募できると紹介されている。費用を負担するのは案件を掲載する企業の側で、1か月9万8,000円(税別)という設定だった。

「月3.4万円で割に合いますか」。生活費を稼ぐ手段としては成り立たない。経営層と直接やりとりする経験や、自分の専門が別の業種でどこまで通じるかを試す場として見るほうが実態に近い。関与量が月に数十時間なら、時間単価として極端に低いわけでもない。

「自治体の副業型は誰でも応募できますか」。対象は三大都市圏等に所在する企業に所属する社員、または令和7年4月から加わったシニア型では企業を退職した個人である。勤務日数が月4日以上かつ月20時間以上、受入自治体での滞在が月1日以上という条件が付く。

「どちらを先に見ればよいですか」。案件の数が多いのは民間のプラットフォームで、1,100件規模の掲載がある。一方で自治体が直接契約する副業型は、担当課と組んで動くため裁量が大きい。自分の専門が行政の課題に近いなら後者、企業の実務に近いなら前者から探すのが素直な順番になる。

「数字はいつの時点のものですか」。民間側の登録1万人は2022年9月末、案件約1,100件と連携7県1府29市町村は2022年4月前後の取材時点である。制度側の91人は令和6年度の実績で、令和8年4月に次の年度分が公表される見込みだ。古い数字を現在値として扱わないよう、時点を添えて読む必要がある。


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