地域活性化起業人が使えない組み合わせ|同一道県・指定都市・3年の壁

相手の企業が同じ県にあると、その時点で対象外になる

地元で付き合いの長い会社に声をかけてみよう、という話から始まる自治体は多い。ところが制度の資料を開くと、最初に止まるのが派遣元企業の所在地の条件である。

総務省「「地域活性化起業人制度」推進要綱」(令和3年3月30日総行応第78号制定、令和8年3月23日総行応第68号一部改正)の第3(1)②は、受入自治体を三大都市圏外の市町村、または三大都市圏内のうち条件不利地域を有する市町村・定住自立圏に取り組む市町村・人口減少率が11パーセント以上の市町村と定めている。そのうえで、三大都市圏外の指定都市・中核市・県庁所在市に所在する企業等の本社と同一道県内にある市町村は、原則としてその企業から企業派遣型を受け入れることができないと書いている。指定都市等である市については、同じく指定都市等に所在する企業からの受入れもできない。

総務省「地域活性化起業人の活用に係るQ&A」のQ12は、これを札幌市が仙台市に所在する企業の社員を活用することはできないという例で示し、企業が受入自治体と同一道県内に所在する場合は活用できないと重ねている。県内の主要企業と組む案は、この二つの線でほぼ消える。地域で顔の見える相手ほど制度に乗らない、という順序になっている。

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人の側の条件は、月単位の数え方まで決まっている

候補者が見つかっても、その人が要件に当たるかどうかは別の話になる。要綱は型ごとに別の数え方を置いていて、どれも月を単位にしている。

企業派遣型は、入社後3月未満の者と、派遣の際に現に受入自治体の区域に勤務している者が除かれる。さらに派遣期間の各月で受入自治体の開庁日の半分以上、全期間では開庁日の半分を超えて区域内で業務に従事することが必要である。副業型は月4日以上かつ月20時間以上の勤務に相当する業務と、月1日以上の滞在が条件になる。シニア型は受入開始日が退職日からおおむね5年以内で、現に受入自治体の区域に居住している者は使えない。

月の半分を満たせない事情が出たときの扱いはQ&Aに書かれている。前月と後月のうちで不足分を超える日数を区域内で従事していれば、その月も満たしたものとみなす。やむを得ない事情として想定されているのは、出張やイベント出展、忌引き、航空便や船の欠航、病欠などである。逆に言えば、三月をまとめても足りなければその月は特別交付税の対象から外れる。

型 最低の従事量 外れる人 受入れの上限
企業派遣型 各月で開庁日の半分以上、全期間で半分超 入社後3月未満、現に区域内勤務 1名につき610万円
副業型 月4日以上かつ月20時間以上、滞在月1日以上 現に区域内勤務 報償費等100万円と旅費100万円
シニア型 月4日以上かつ月20時間以上、滞在月1日以上 現に区域内居住、退職から約5年超 報償費等100万円と旅費100万円

うまくいった関係ほど、3年で切らなければならない

成果が出て双方が続けたいと言い出したときに、制度が先に止まる。要綱第4(6)は、同一の派遣元企業から同一の受入自治体が連続して企業派遣型を受け入れる場合、対象は3年を上限とすると定めている。前回の対象終了から1年を経過すれば同じ企業からでも再び対象になるが、その1年は措置が付かない。

同一の人物を同一の受入自治体が受け入れる場合も、通算3年が上限である。抜け道になりそうなグループ会社については、Q10が別の企業には当たるとしながら、実質的に同一の派遣元から3年を超えて連続して派遣するようなことは適当ではないと書いている。判断は自治体に預けられていて、企業グループの実態を踏まえて適切に判断するよう求められる。

人を増やす方向にも制限がある。同一の人物が同時期に派遣される、または副業できる市町村は1つのみで、企業派遣型と副業型を兼ねることもできない。Q14はこの理由を、適切な就業時間の管理と労働者の安全への配慮の観点からだと説明している。相性の良い人を複数の自治体で分け合う形は取れない。

お金は企業に届かず、年度末に自治体へ入る

企業側が気にするのは、負担金が誰からいつ入るのかという点である。ここに制度の誤解が集まる。

Q6は、特別交付税は市町村に措置されるものなので総務省から派遣元企業に直接支払うことはないと明言している。起業人への給与は派遣元企業と受入自治体の協定書で定めるもので、自治体がいったん負担金を払い、後から特別交付税で措置される順番になる。別紙の算定対象にも条件が付く。同一の派遣元企業から複数名が派遣されている場合は受入自治体1団体あたり2名までで、受入自治体から従前より給与等を支払われている者と、派遣期間中の主たる勤務地が区域内にない者は算定対象から除かれる。

金額の上限は、企業派遣型が1名につき610万円、副業型とシニア型は報償費等と旅費がそれぞれ100万円である。年度の中途から始めた場合は月の初日を基準日とした月割になり、Q23によれば受入月は算入せず翌月分からの計算になる。要件を満たさない月があった場合も原則として月割の額が上限とされる。受入れ前の経費と起業人の発案・提案した事業の経費は、いずれも100万円に0.5を乗じた額が天井である。

公正さを守るための線引きが、仕事の幅を狭める

受け入れたあとにも制約が残る。民間の社員が自治体の中で働くという形そのものに、公正な職務執行の問題が付いてくるためである。

要綱第4(5)は、派遣元企業や副業型が勤務する企業等と請負契約を結ぶ蓋然性の高い業務に起業人を従事させないよう求めている。Q22はその中身を、派遣元企業の取り扱う事業分野に関する請負契約等の入札にあたって仕様書や計画の作成に当該起業人を参加させるなど、入札の公平性が疑われるような業務に従事させないことだと説明する。企業のノウハウを期待して呼んだ人を、その企業の得意分野の調達には関わらせられない。

同じ条文は、研修の実施と地域との交流の機会の確保を受入自治体の配慮事項として挙げている。副業型についてはQ15が、雇用契約でも業務委託契約でも、実態として労働者と判断されれば労働基準法や労働安全衛生法が適用されると注意し、副収入が20万円以上なら本人の確定申告が必要だと周知するよう求めている。労災保険等の負担はQ11で原則として協議により決定するとされ、制度側に答えはない。こうした条件を事前に読み合わせておく作業は、学生が地域の受入れ側に関わるときにも同じ形で出てくる。地域での関わり方を探す段階からこの種の決め事を知っておく意味は小さくない(FLASPO)。

よくある質問

受入れ可能な自治体かどうかは、どこで分かるか。要綱の受入自治体の定義に当てはまるかを条文で確かめるほか、総務省「地域活性化起業人」が「地域活性化起業人」受け入れ可能団体一覧を公表している。令和7年度の実績は企業派遣型904名、副業型299名、シニア型12名の合計1,215名で、過去最高と記載されている。

支店や支社から受け入れることはできるか。Q8がこの点を扱っており、所在地の要件は勤務地で判断される仕組みになっている。本社機能が三大都市圏にある企業であれば三大都市圏外に勤務する者も含まれるという読み方が要綱に書かれているため、本社と勤務地のどちらで条件に当たるかを先に整理しておく必要がある。

一般社団法人やNPO法人の職員は対象になるか。Q18がこの問いを立てている。要綱の別紙は「企業等」を株式会社その他総務大臣が認める法人とすると定めているため、法人の形と本人の従事状況の両方を確認することになる。

制度を使う前に総務省の許可は必要か。Q4によれば、事前の許可を取る必要はない。要綱第4(1)が、本制度は地方自治体が自主的・主体的に取り組むものであり、総務省は取組実績を事後的に調査のうえ財政上の措置を講じるものだと書いている。許可がない代わりに、要件を満たしていなかったと後で分かれば措置も付かない。

似た制度との違いを先に押さえたい場合は、協力隊と地域活性化起業人を分けるものと、派遣の決まり方をまとめた記事、人数の内訳を見た記事を合わせて読むと、制約の位置が見えやすくなる。


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